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夏。とりあえず夏なわけで、ほかに形容できる単語は数多あるだろうけどそんなことはお構いなしでの夏。
朝昼それに夕暮れ時の蝉の大合唱といったらきっと蝉が人間扱いだったら捕まるんだろうなくらいの勢いだったが、今はそうでもない。深夜になればそれもそうだろう。
それでも根性ある蝉は鳴いている、そのやる気を少しばかし今の自分に分けてほしい。
その気だるさを存分に周りに撒き散らしている自分は変哲のない近くの公園のど真ん中に突っ立っている。
今自分が感じていることは蝉の鳴き声と滝のようにでる汗の不快さと生ぬるい風と昔の思い出。
この暑いなか公園に出てまで思い出に浸るとは自分も歳をとったのかなと感じざるをえない。まだまだ現役のキャンパスライフを満喫中なのだが。
キャンパスライフは思ってた通り気だるかったが、思った以上に楽しくもあった。だがしかし。
蝉の休憩時間どきにこの公園で何の他愛もない話を、あいつとしていたことが懐かしくて、それを鮮明に思い出すためなのか、気づけばこの公園に決められたように来ている。
どんなに素晴らしい思い出を作っても、この思い出以上になることはあるだろうか?それはないと思う。



「だからそれであるがゆえにだね」

この女であるのに変わった口調で話し続けるあいつに、もういい加減に話題を変えないか?
そうお願いすると、あいつは何故?といった表情でこう続ける。

「少しばかり君の人生が有意義になるような話をしていたつもりだったんだけどね」

それはとってもありがたい。できることなら聞いててやりたい、が。

「そろそろこの暑さとも、自分自身のもどかしさとにもおさらばしたいんだ」

そうあいつに言う。無論否定が返ってくるわけだ。

「最初になんでもいいから話をしようといったのは君だ。それに君自身のもどかしさは君しか感じていない。だから私には関係ないわけで」

「わかった。謝る。すまなかった」

あいつはまだまだ物足りなそうに口を歪ませるが、わかったよと言うだけで済ましてくれた。

「それで?君との会話から察するに本題にはいりたいみたいだけど?」

「その通りだ。頭の回転が速くて助かるよ」

ああそうかいとなんの感情も込めずに呟いた。なら本題は?と言わんばかりに顔で訴えてくる。

「もしおいどんが」

「ちょっとまった。割かしまじめな話をしようとしているのがわかるのに、どうして君自らふざけようとするの?それは紳士がとる行為じゃないんじゃない?」

「ちょっとしたジョークだ。紳士ならいつでもそれくらいの余裕がなきゃだめだろう?」

「呆れたものだ。それでそんなゆとりある紳士は次に何をしてくれるかな?」

少し間をおいて、こう言った。

「もし俺が、殺人鬼だったらどうする?」

「・・・」

沈黙。何があってもそれほど動じないあいつも動揺を隠し切れないでいる。

「・・・そして次のターゲットは私、とか?」

「察しが早くて本当に助かる」

あいつの目が軽蔑から畏怖へと変わるのが手に取るようにわかる。今にも逃げ出さんばかりだ。

「っと、これも冗談だ。さっきの会話の殺人鬼の部分をサンタクロースに変えてもいいんだ」

そう言うとみるみるうちに畏怖は安堵に変わり、当然のごとく怒りに変わる。
というか、それくらいは嘘だと見抜いてほしいところだったんだが。

「ふざけるのもいいかげんにしなさい。やっていいことと悪いことがあるわ」

「すまん。だが久々にお前の女口調が聞きたくてな」

ものすごく怒られたわけだ、だがしかし。
こいつは怒ったときにときのみ普通の女口調になるわけだ。お目にかかるのに結構な苦労強いられる。希少価値とはこのことだろう。

「・・・で?君がサンタクロースや殺人鬼だったらどうすると?」

「そうだ」

「それに答える義務はないね。それに意味があるとは思えない」

「この質問自体に意味はないが、後々あるかもしれんぞ?」

「そう言われても信用できないが・・・これ以上なにかされても困る。大人しく答えるとするよ」

それはありがたい、ぶっちゃけた話別に答えてくれなくてもいいんだがなというのはここだけの秘密だ。

「そうだな、君が殺人鬼だとしたらとりあえず逃げるとするよ」

「俺がサンタクロースだとしたら?」

「それだとしたら、プレゼントをもらうさ」

まぁそんなに面白い回答でもなく一般回答だろう。そうやって答えるのが普通だろうな。

「まさか、これが本題なんていわないだろうね?そうだとしたらくだらなさぎて逆に腹を抱えて笑ってしまうよ?」

既に少し笑ってるじゃないか。まるで俺が頭が足りてない哀れな子みたいじゃないか。いやこの考えはそういった人たちに失礼だな。じゃ変更だ。まるで馬鹿な子みたいじゃないか。

「君が今何を考えているのか、一つずつ言い当ててみようか?それほどまでにわかりやすいよ、今の君は」

「遠慮しておく。俺は人に考えを言い当てられて喜ぶような性癖は持ち合わせてない」

「それはそれは残念だ。・・・それじゃ今度こそ本題を聞いてもいいかな?」

返事はしない。自分の中で覚悟を決める。心拍数?既にメーターを振り切ってるぜ。

「もし、俺がお前のことを好きだとしたら?」

「・・・」

またしても沈黙、それも先ほどとは比べ物にならないほどに長い。
この時ほど時間が長いと感じたことはない。くだらない授業の何倍も長い。
聞こえるのは孤軍奮闘しているであろう蝉の鳴き声だけ。暑さは変わらぬまま。
だが今まで以上に熱い。脳が、体が、全身全霊で熱さを感じている。

「・・・そうきた。驚きだわ」

「俺もまさかこんな洒落たことをしようとは思ってなかったが、どうやら恋は本当に病気らしい」

なにより驚いたのは、こいつがあまりに驚いたときにも女口調になるんだということだ。

「それで私に?世間一般的に考えて、こんなときの返答のしかたを今しろと?」

「・・・いや、そこはさっきのくだりと同じでいい」

「・・・君の言ってることは理解に苦しむのだが」

「そうだろうな。でもそういった答えが欲しいわけじゃないんだ。ただこの気持ちを伝えたかっただけでそんな関係になりたいと強く思ってるわけじゃない。我が侭なことで不可解なことだと思うだろうがきっと病気だから仕方ないと諦めてくれ」

「・・・要約すると、気持ちは伝えたいがそれ以上のステップまで進まなくていいと?」

俺は無言でうなずく。

「呆れた。ついでに軽く怒鳴りたいわ。このドへたれ」

軽くではなく多分大いに怒り狂いたいのだろう。なにか応戦できるものでも持ってくればよかったな。

「・・・わかった。ならこれは君の問いに対する私のアンサー」

「別に答えなくてもいいが」

「うるさい。君に負けてるようで私がいやなの。黙って聞いて」

負けず嫌いここに極まる、甘酸っぱい最中に発動させるとは大したものだ。

「君が私を好きだとしたら、私は小一時間説教をする。以上」

「・・・問いに対する答えにはあまりに相応しくないと思うが」

「君が言ったんでしょ?答えはなくともいいって。ならこんな適当な答えでもいいはず」

「仰るとおりだ」

もう俺は何も云えなかった。へたれここに極まる、か?

「さて、私はそろそろ帰らなきゃいけないから」

「あぁ変なことで呼び出して悪かったな」

そう云うとこれから悪戯をするような少女を彷彿とさせる表情でこう告げる。

「いつかお返しをさせていただこうかな。とりあえず今は今度何かおごってくれたいいよ」

「それだと俺のほうが割りにあわない気がするんだが」

「つべこべいう権利が君にあるのかな?」

「はいわかりました先生」

「よろしい。ではまた会おう。ハイスクールで」

そう云って走っていき、やがて闇のなかに消え、見えなくなった。

「高校でか。それももうすぐ終わるんだな」

不思議と蝉の鳴き声が止んでいた。



懐かしい思い出に浸るのにも最後はつきものだ。いつまでも続きはしない。
よくもまあ、あんなことが云えたなーと思う。今の俺じゃできそうにない。
良くも悪くも若かったってことなのか。今でも若いと思ってるのは間違いなのかもしれない。

「さて、帰るとしますか」

誰に言うでもなく自分に言い聞かせるでもない、そんな独り言を呟いて俺は公園を後にする。
このときも不思議と蝉の鳴き声は止んでいた。
2008.08.05 Tue l 自作小説 l COM(0) TB(0) l top ▲

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