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2009/05/26 (Tue) 真夜中の行い。

「はあ」

「…」

「どうしようか」

真っ暗な闇に包まれ静寂さえも飲み込もうとしている公園。
その公園に人と人がいる。でも片方は動かない。
誰も人は通らない。今だけこの世界には二人しかいない。

「蝉も、鳴くのをやめないな。いっそ一緒に」

そう呟いて男は歩き出す。そこに事切れた人を置いて蝉の元へと向かう。
季節は九月末、少し長生きしすぎた蝉。でも結局死んでしまうかも知れない。
死期はそう遠くはないだろう。泣き声も弱弱しい。泣きたくなるほどに。

「…なんだ、もう飛べないのか」

男がたどり着いた所で見たものは、地べたに落ちている蝉だった。
実に哀れで情けない、それでもまだ鳴いている。

「…もういいだろう。泣き声は散々だ」

得体の知れない、棒状のものが儚い月夜の光に照らされた。
材質は木。元の色は銀。今の色は赤。
本来それは白球を打ち返すために使う道具。
それを彼は何に使ったのか。言うまでもない。

―ミンッ…ミーン…ミー…―

「今、お前も楽にしてやるから」

振りかざされる赤い棒。果たして蝉にそれは見えているのだろうか。
ただわかるのは、あの赤い棒が振り下ろされれば一つ命がまた消える、それだけ。
それでも蝉はなく。自分に近づく脅威などに目をもくれず鳴き続ける。

「…なんでだよ」

言葉が、漏れる。

「俺だって、俺だって…!」
「理解されたかっただけで、認めてもらいたかっただけでただそれだけで!」
「それだけなのに!泣き止んでくれなくて!」

言葉が、気持ちが止まらない。止まってくれない。暴走機関車とはまさにこのこと。
ブレーキなどもう折れた、理性などとうに振り切れていた。
自分など、既に見失っていた。

「俺はただ、今だけは、」
「ただ、」

―「ううう、うえええん、うぐぅ」―

「…泣くのをやめて欲しかっただけなのに」

いつの間にか蝉は死んでいて、無き命が二つになった。

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流ぬこ

Author:流ぬこ
自個偽無、候。
書いたり書いたりしている流ぬこです。
ピクシブなんかでも同じく流ぬこで書いています。
はじめの一歩を見るとオズマ戦でも小橋戦でもどの戦いでも泣けます。はい。

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