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うだるように暑い7月。今日は10日。
その8日前のことだ。

P「今日は千早記念日だー!」

千早「刺しますよ?」

P「すいません…ついノリで…」

千早「これだからプロデューサーは、そもそもですね」

P「ああ!ごめんなさい!この暑さの中で説教は勘弁!」

千早「…次はありませんからね」

プロデューサーの顔が夏の太陽のように輝く。
本当に子供のような人だ、と千早は思った。

千早「…(私は、本当にこの人が好きなんだろうか)」

そんな疑問も何度も頭に浮上した。結論はいつも一緒なのだが。
子供っぽくて、大雑把で、デリカシーがなくて、一般人でもなくて。

千早「…(どうして私もあの子もこの人なんだろう)」

P「ああ、そうだ千早」

千早「はい、なんでしょう?」

P「次の仕事、7月10日だから」

千早「ああ、グラビアですね。わかりました」

正直、グラビアにはまだ抵抗がある千早。
確かにアイドルとして、人として成長した彼女は大抵のことは許せるようになった。
だがグラビアだけは未だに納得してはいなかった。
ファンの方が喜んでくれるのは確かに好ましい。
だが、こういった肌の露出で喜ばせるではなく、できるなら歌で喜ばせたいと思っている。
彼女は成長したが、成長の過程で己の信念・プライドまでは捨てていなかった。
だから、まだグラビアやそれに類似する仕事はあまり好きではなかった。

P「水着は、まあ、なんでもいいか」

千早「はい」

P「ん~」

千早「どうしました?」

P「いや、こういった仕事も大切なんだが、あまり受けたくないなと思ってな」

千早「プロデューサーは何もしないじゃないですか」

P「いやーそうなんだけど、千早はあまり好きじゃないだろう?」

千早「確かに、好き好んでやりたくはないですね」

P「そうだよな、そんな仕事をさせるんだから、俺もなにか」

千早「あの、別に大丈夫ですけd」

P「よし!決めた!」

千早「なっ、なにをですか?」

鼓動が早くなるのがわかる。勿論、ドキドキもあるがそれ以上にいきなりの大きな声に驚いたのだ。

P「10日の仕事が終わったら、遊びに行こう!」

千早「はあ…」

P「資金は一万。それでできるだけ、やれるだけ遊び倒す!」

千早「そうですか、だけどみんな暇じゃないんじゃ…」

P「何言ってるんだ、話の流れから考えても、二人で遊ぶだろうJK」

千早「二人、ってもしかして…!」

P「俺と千早」

一瞬のラグ。そしてバックアップが作動し、顔がみるみる赤くなる。
つまりこれは一般的に言う、俗に言うところの。

千早「…(デート?)」

P「嫌か?」

千早「!?いいえ!そんなことはありません!」

P「そうか!じゃ7月10日は遊ぶぞ!」

千早「はっ、はい!」

その時、プロデューサーの携帯が鳴る。
その着うたが、千早の得意な歌で、千早自身も好きな曲。
『目が逢う瞬間』だった。

P「悪い!社長がなにやら話しがあるそうだからちょっと行ってくる」

千早「はい、あと、その」

P「なんだ?あんまり時間ないけどなんかあるのか?」

千早「いえその、着メロ…」

P「ん?…ああ!千早の『目が逢う瞬間』な」

千早「どうして…、この間まで水瀬さんの」

P「確かに伊織の『フタリの記憶』も好きだ、だけどな」

千早「だ、だけど?」

P「今日は千早記念日だしな」

千早「…」

そうだ。毎回毎回結論が同じだったのはこれのせいだ。
この際、なんの千早記念日だとかいう細かいことは置き去りにしよう。
このプロデューサーは無意識に人を喜ばせる達人なのだ。
それが憎めなくて、そんなところが人を惹きつけてやまない原因なのだろう。

P「7月中はずっと千早だな」

千早「…」

涙が出そうだった。うれしくて、うれしくて。

P「それじゃ、また後でな」

千早「…はい」

その返事を聞いてプロデューサーは事務所を出ようとする。

これでいいの?
こんな小さな声で、あの人に伝わるの?
私の気持ち、そんなに小さいの?伝えたくないの?
いつも私を見守って、助けてくれたあの人。
それなのに、今の私は…。
これじゃ、ダメだ。自分で踏み出さなくちゃ。
あの人へ近づくためへの、一歩を。小さな一歩でも、大きな一歩を。
言わなきゃ、ダメ!

千早「プロデューサー!」

P「うわっ!な、なんだ?」

千早「7月10日!絶対ですよ!私、私…」
千早「私!楽しみにしてますからねー!」

P「お、おう!任しとけ!仰天プランを用意しておく!それじゃーな!」

千早「はい!いってらっしゃい!」

その後は、静けさだけが残った。
でも千早の胸の中は、小さな達成感でいっぱいだった。

千早「…ふふっ」
2009.07.10 Fri l 自作小説 l top ▲
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