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2009/10/07 (Wed) もうすぐ20なる未定

「もう20だがな」

季節の風はもう冬の到来を予期させるほど冷たく、俺の鳥肌が立ったのは言うまでもない。
それでも十月は一般的には秋だ。それどころか十一月だって秋に分類される。
寒さは冬でも常識では秋、いかにも人間らしい。
いつも横にいる片割れはというと現在就職活動真っ盛り中だ。
あれほどの才色兼備ならば就職先がないということはまずないだろう。羨ましい。
一応自分も就職活動しなければならないのだが、いまいちやる気になれない。
そんなことを見透かしてかあいつにはこう釘を刺された。

「就職するもしないも君しだいだけど、後悔はしないようにね。僕たちにとってここは大きなターニングポイントであることには変わりないから」

ここまで何も考えずノリだけできた俺にとっていささか急な問題だ。
何となく大学に入って、数年したら何となく就職先を決める。それが当たり前、常識、定め。
ここにきて俺はそれが気に食わなかった。
人生数百年、その中でも元気でいられるのは六十年間くらいだ。
その六十年間就職して会社のために尽くす、悪く言えば社畜だ。
だけどそれが当たり前かのように皆は喜び勇んで会社に就職しようとする。
それは何故か?
きっとそうしないと世間から隔離されるから。仲間はずれにされるから。
それが怖いからしたくもないことをする。そのために滅私奉公を止めない。
小さい頃からそんな大人たちの背中を見てきた俺たち子供達はそれに雀の涙ほどもおかしいと感じない。

「俺は嫌だなー」

つい独り言が漏れた。誰に聞かれるでもなく、俺の言霊は秋の風にさらわれた。

「さむっ」

寒いのは体、ぽっかり穴が開いてるのは心。
俺は、一体どうしたいんだろう。
答えはどこにあるんだろう。何が正解なんだろう。
考えれば考えるほど、こういうのは泥沼だ。でも止められない。
俺の頭がオーバーヒート寸前になった時、顔を見上げた。

「あれ、いつの間にここに」

そこは公園だった。例の公園だ。未だに俺はこの公園の名前を知らない。
でもここで起こった思いでは覚えている。

「いろいろあったんだろうな、この公園にも」

俺たち以外の甘酸っぱい青春やらを繰り広げた人もいれば、それこそ昼ドラ並みの出来事があったかもしれない。何人もの子供達の笑顔をもこの公園は見ているはずだ。
そんな思い出をここに残していった人たちは今はどうしているのだろう。
結局誰も彼もが同じ道を歩んでいったのだろうか。
ここでの思い出も忘れてしまっているのだろうか。
忘れてしまっているなら悲しいと思う。
いやまてよ。
ここでの思い出を忘れてしまう変わりにまた別の思い出を見つけた可能性だってある。
それはどの道を進んでもきっと起こりえることだ。そう思った途端に何かを見つけた気がした。
俺のしたいこと。

「放浪…」

ずっとずっと子供の頃から憧れていた、言わば夢かもしれない。
自由気ままにどこへでも行ける、そんな夢。
この時代にこの夢はきっと無理難題だ。
放浪するにも金が要る。そんな時代にこの夢は辛すぎる。
それでも、今の自分の心は妙に高鳴っていた。

「ターニングポイント、か」

あいつが言ったターニングポイント。変わり目。
俺がやろうとしていることだって十二分に変わり目に値するはずだ。
ならやっていけないことはない。
変わらぬ平穏も日常も捨てがたい、でもたまには劇的な変動も悪くはない。
そうと決まれば善は急げだ。
すぐさま俺は公園を後にして家を目指す。
いつの間にか走り出していて、心が躍っていて。
久しく忘れていたこの感覚を楽しみながら俺は走った。
途中で車に轢かれそうになって、思いっきりクラクションを鳴らされたが気にならない。
むしろ俺の邪魔をするなと心の中で思ったくらいだ。
階段を駆け上がり玄関前にたどり着く。その扉を蹴破らん勢いで開ける。
静けさ漂う家の中はどこまでも暗く感じられた。でもここともおさらばだ。
旅に必要そうなものをまとめる。素人が考えてまとめたものだからきっと一週間すらもたないだろうがそんなことはどうだっていい。放浪できることに意義があるのだ。
まとめ終わった荷物、普段の俺なら絶対に持ち歩かない重量となった。
でも今はそれを担ぐ、気合で担ぐ。

「準備万端、さて行くか」

玄関を開けて、階段を下りて放浪の旅へ出ようとした時だ。

「僕を置いてかい?」

あいつがいた。

「おおっ、いたのかよ」

「たまたま通りかかったら何やら夢見がちなことを考えている人がいたんでね」

建物を貫通してまで人の心をお読みになるとは怖すぎるでしょう。
プライバシーもあったもんじゃない。

「まあまあ、いいじゃないか。こんな時代にそんな野郎が一人いても」

「僕は困るけどね」

真剣な顔。

「…どうしても行くのかい?」

「まあ、いま決めちゃったし」

「忠告するけど、無茶だよ。君が今からやろうとしていることは」

「それでもやりたい、例え世界から仲間はずれにされても」

「その生き方はとても辛いと思うよ?」

「伊達に変態で呼ばれてないさ、慣れてるよ」

世間の冷たい目なんて怖くない、こともないが慣れているのは事実だ。
そう簡単にへこたれることはない、はず。

「…本気、なんだね」

「俺もたまには本気出さないとな」

それを聞いて数秒後にあいつはため息を吐いた。どういうことなの。

「なら、仕方ないね」

そう言ってどこに持っていたのか分からないヘルメットを俺に投げてきた。
そういえばあいつの横にあるオートバイはなんだろう。
見た感じ、二人は乗れそうだ。

「ほら、早く行こう」

「はい?」

「放浪、するんでしょ?」

「いやするけど、お前は就職するんじゃ…」

「…君のところに永久就職するよ」

「はあ」

顔を軽く朱に染めてうっすらと微笑んできた。
要は就職をあきらめて俺と一緒に旅に出よう、そうこいつは言っている。
だが生憎だが俺は他人の人生をそこまで捻じ曲げる気は毛頭

「君に捻じ曲げられたのは確かだよ。でも最終的に決断したのは私。だからいいの」

意地でもついてくる気だ。大学も残っているというのに。あれだけまじめに卒論を書いていたのに。
就職活動も怠らずに、あれだけがんばっていたのに。
全部を捨てて俺についてくる、と。
こりゃ大変なことになってしまった。

「…荷物、持っていけないな」

「ある程度は収納したりしてごまかしごまかしやっていこう」

「ごもっともだ」

さあ早くアクセルをと言わんばかりに目で訴えてくる。
ヘルメットをかぶり後ろの座席にまたがる気満々だ。
つまり運転するのは俺と。

「…わかったよ、後悔するなよ」

「きっと後悔だらけだよ、でもね」

「ん?」

「君がいるからいいよ」

満面の笑みでそう言われたらもう何も言い返せないだろ?
こうなったら腹をくくるしかないようだ。せめて楽しい旅になるように善処しよう。

「期待してるよ」

俺はバイクにまたがる。随分と久々なので何をどうするのか一瞬わからなかったが記憶というのものはすごいものですぐさま何をすべきか思い出した。
それにしても。

「よく俺が免許持ってるって知ってたな」

「ふふっ、大分前に君が教習所から出てくるところを見かけてね」

「大分前って…」

「それで君を見て、会いに行こうって思ったの」

「それじゃ俺が免許取りに行ってなかったら」

「一生会うこともなかったかもね、君には感謝しているよ」

こういうのも何だが昔の俺グッジョブ。
お前のおかげでこんなことになってるぜ。

「それじゃ行くぞ」

エンジンをつける。勢いよく、俺が何もしなくても今にも走り出しそうな勢いだ。
果たしてこの暴れ馬を俺は手なずけることができるだろうか、幸先不安だ。
走る直前になって思い出した。

「ああそうだ」

「なに?」

「永久就職の件だけどな」

「うん?」

「旅の途中で教会でもあったら結婚しよう」

「…本当に?」

「今日から本気出す」

「…うん!」

その返事を合図に俺はアクセル全開の勢いで走り出した。
どこに行くかも何も決めていないけど、それでいい。
それくらいで丁度いいさ。

その後、俺がノーヘルなことに二人で気づかず警察官に止められて出鼻を挫かれたのは内緒だ。

~未完~

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プロフィール

流ぬこ

Author:流ぬこ
自個偽無、候。
書いたり書いたりしている流ぬこです。
ピクシブなんかでも同じく流ぬこで書いています。
はじめの一歩を見るとオズマ戦でも小橋戦でもどの戦いでも泣けます。はい。

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