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僕はこの日浅はかな言動をしてしまう。
してはいけなかったんだ。

「僕は君を愛している、だけどこの世界が耐え難い」
「なら、この世界、あなたの目に映る私以外のものが正常に見えるようになればあなたは私をずっと愛してくれる?」
「もちろんだ、そこら一帯に肉塊が歩いていたり、血の生臭さにはもううんざりだ!」
「そう、私には実はあなたのそれを治すことができるわ」
「なら今すぐに治してくれ!そうすれば僕は全力で君を愛し続けることができる」
僕はもううんざりなんだ。だからこそ治してほしい。
この異常な状態を。正常に。
「本当に?」
何を迷うことがあるか。彼女はこんなにも美しい。何より僕に優しくしてくれた。
それだけで愛する理由にはなりえるだろう。
「もちろんだとも」
「約束してくれる?」
「当たり前だ!」
「偽りは真実、逆に真実は偽りだとしても?」
なんのなぞかけだろう。ああじれったい。
「ああ大丈夫!治ったら結婚しよう、子供も生もう、三人は生もう!」
「…そう、わかった」
ああ、ようやく。ようやく正常に戻るときが来た。
どれだけこの日を待ち望んだことか。
彼女は本当に僕にとっての女神様だ。
なにやら彼女がぶつぶつと呪文めいた言葉を呟いている。
当然それがなにを意味するかはわからないが、ともかくこれで治るのだ。
…待てよ。
なぜ彼女はいままで黙っていたのだ?
確かに最初の段階ではだめかもしれないが、僕たちは一ヶ月で急激に仲良くなった。病的なまでに。
毎日お互いに愛を求め合った。いついかなる場所でも愛し合った。
それなのに丸一年、彼女はそれをしなかった。それは何故?
胸騒ぎがする、体中に警告が鳴り響く。
でも遅かった。その呪文めいた呟きは終わり、その瞬間に光が迸る。
耐えることもできず、僕は目を瞑った。数秒後に目をあけたところに彼女はいなかった。
ただ僕はみた。窓の外の向こうに歩いている人を。それはまぎれもなく世間一般的にいう人間だ。
肉の塊なんかじゃない。僕は喜びのあまり雄たけびを上げた。
その喜びに酔いしれる間もなく、僕は後ろにある気配。それが何なのかは言うまでもない。
僕は振り向いた。
先ほどまで感じていた胸騒ぎ、警告を忘れて。無我夢中で振り向いて、言葉をつむごうとした。
そこにいた、ものを見て、僕は愕然とする。
その刹那に僕は絶叫した。
そこにいたものが持っているもの、それは以前僕が彼女に上げたヘアピンを持っていた。
それをみて、理解して、でも理解する前には叫んでたと思う。
肉の塊がゆっくりこっちに近づいてきた。狂ったように笑い、泣き、叫びながら。
化け物じみた肉声で。

僕はこの日浅はかな言動をしてしまった。
してはいけな
2009.12.12 Sat l 自作小説 l top ▲
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