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「ねえねえ、なに打ってるの?」
ソファーに腰掛ける千早の後ろからひょっこり真が身を乗り出す。
「それは、秘密」

「はいカットー!おつかれでしたー!」
「クランクアップでーす!みなさんお疲れ様でした!」
そう監督が言い終わるのと同時に拍手がおこった。
「千早ちゃんと真ちゃん、最後までお疲れ様。おかげでいい作品になったよ」
「へへっ、お疲れ様です!またお願いしますね!」
「力及ばずながらでしたがお疲れ様でした。またご縁があればお願いします」
それぞれ礼を言って一旦控え室に戻る千早と真。

「んー!楽しかったー、妹役だったからドキドキしちゃったよ」
「昔だったら弟役だったかしらね?」
「まあ今でも男役のほうが多いけどね…気にしてないけどさ」
喋りながら廊下を歩く二人。
ちらほらと周りにいる人たちは忙しく動き回っている。
それが芸能界という場所だ。

しばらくして自分達の控え室に帰ってきた二人をプロデューサーが出迎える。
「はいお疲れ様。とりあえず緑茶と緑茶と緑茶だ」
「緑茶しかないじゃないですかー!」
緑茶一択に不満を声を大にして言う真。
小さな控え室に活気が戻ってきた。
「嘘です嘘です、そこに適当に買ってきたから好きなの選んで飲んでくれ」
テーブルにあったのは色とりどりの着色がなされたジュースやらがたくさんあった。
その中のミネラルウォーターをとり腰に手を当ててごくごくっと飲む真。
この絵だけでもCMに使えそうだなとプロデューサーは思った。
「ぷっはーっ!やっぱり仕事の後には水だなー」
「おいおい親父みたいな…とりあえず千早も何か飲んだらどうだ?終盤の長台詞で疲れたろう」
「では遠慮なくいただきますね」
最初に薦めた緑茶を手にとって、真とは対照的に控えめに喉を鳴らさずに飲む千早。
これもまたCMに使えそうだなとプロデューサーは思った。
いっそ自主制作でもしようかと思ったが無断でそういうのを作って怒られたことを思い出したのでプロデューサは何も思わなかったことにした。
ふと質素な音、いわゆる普遍的な電話音が鳴った。
「誰かしら」
千早がポケットから携帯を取り出す。そして携帯を見ようとしたそのとき。

「ちはやさーん!おつかれさまでーす!」
世界の果てまでも届きそうな声の主はやよいだった。
何の仕事でだかはわからないがペンギンのコスプレをしていた。
「可愛すぎるだろう、これは合法ロリ…」
「プロデューサー!やよいちゃんの前であまり変なこと言わないでください!」
「はい自重します」
割と本当に怒られたので素直に謝るプロデューサー。
さて、千早がやよいのことをやよいちゃんと呼ぶようになったのはいつからだろう?
「でも本当に可愛いね~僕もやよいくらい可愛くなりたいなー」
「まことさんは十分に可愛いと思いますっ!」
「そうね、だからこそ今回だって妹役のオファーが来たんだと思うわ」
「そ、そうかなー?照れちゃうな~…」
そういって頭を掻く真。これはいつもの真の癖だ。
「それでやよいちゃんはどうしてここに?」
「たまたま隣のスタジオでお仕事をしてたんです。それでプロデューサーを見かけて挨拶をしたらちはやさん達も来てるって言うから来ちゃいました!」
「そうだったんだ、仕事は一人だったの?」
「いえ他にもですね」
「ちっはやちゃーん!」
第二に控え室に飛び込んできたのは春香だった。

チャームポイントのリボンを揺らしながら千早に抱きつく。
「ちょっと、春香!いきなり抱きつかないで!」
「だってドラマの仕事終わったんでしょ?だからお疲れ様の意味を込めて、ねっ!」
「ねっ!って言われても…」
「真もお疲れ様っ!はいこれクッキーだよ!」
「本当?丁度良かった、お腹空いてたんだー!」
ここまでくるともはや収集のつけようもないのでプロデューサーはただただひっそりと佇んでいた。
「そういえば千早さ、さっき携帯鳴ってたよね?見なくていいの?」
「ああ、そうだったわ。やよいちゃんや春香が来て忘れてた」
「あう~…邪魔しちゃってたらごめんなさいー…」
「ええっ邪魔だった?それだったらごめんね千早ちゃん」
「そんなことないわ、今から見ればいいだけのことだから」
そんなことないわ、そう言った千早を見てプロデューサーは思った。
ああこの子は変わったなと。昔の彼女からは想像もつかない言葉だなと。
病的なまでに音楽に執着した少女がこんなに普通になった。
真にしてもそうだ。ボーイッシュな女の子と世間から見られるのにもうほとんど抵抗がない。
やよいも春香も、もちろんこの場にいないアイドル達も変わった。
でも変わっていないものもある。
例えば千早は歌に対する真摯さは今も忘れていない。
例えば真はまだまだキャピキャピした女の子を目指している。
自分の目標や根底にあるものはきっと変わらないのだろう。
それでも彼女達はいい方向に変わったんだと思う。
「それもこれも俺のおかげだな、うんうん」
「…独り言は怖いですよ?プロデューサー」
「ああ気にしないで続けてくれ」
とは言ってみたものの、結局はこういう風に仲間がいてくれたことも一つの変わった要因だろう。
そもそもそれこそが一番の要因なのかもしれない。
助けあい競い合い切磋琢磨しあえる仲間がいたからこそなのかもしれない。

「さっきの、あずささんからだわ」
「なんてなんて?」
千早がソファーに腰掛けながら身を乗り出してきた真に目を合わせながら携帯をいじる。
「律子さんと小鳥さんと私で、ドラマが終わったお祝いの準備をしたから早く帰ってきてね~。だそうよ」
「り、律子もか…この間怒られたばっかでちょっと気が引けるなぁ」
「大丈夫、後からねちねち言う人間じゃないでしょ?律子は」
「まあそうなんだけど」
先ほどのドラマとまるで同じ光景がそこにあった。
でもドラマとは違う。きっとその違いは
「私にも見せて~ちはやちゃーん」
「だから近いってば!もう、見せるから!」
「私もお祝いしたいです!それじゃまことさん、ハイターッチ!」
「ハイターッチ!そしてダーン!へへっ」
「ダーン!えへへ~」
「ん~仲間がいるっていいね、千早」
「そうね…うん、いいわね、真」

これが違いの答えだろう。
2010.01.27 Wed l 小説 l COM(4) l top ▲

コメント

拝読致しました
初めまして。一枚絵で書いてみM@STERに参加している小六と申します。
冒頭のメールのやりとりからラストへ。千早さんが「秘密」にした内容は分かりませんが、きっと優しい感じの内容だったのでしょうね、と個人的に解釈しております。
やよいの呼称、春香さんとのやりとり、そのちょっとした仕草の一つ一つに千早さんの性格の変化が見て取れました。こういうさりげない会話、素敵ですね。
友人と友人らしい付き合いをする千早さんもですが、他のアイドルの女の子の動きもいいですね。何といいますか、千早さんを友人として考えて、千早さんと付き合っているといいますか。お互いが友人だと思える関係っていいな、とこのSSを読んでじわりとそう思わせて頂きました。
素晴らしいSSをありがとうございました!
2010.02.12 Fri l 小六. URL l 編集
No Title
千早が変われた・・・この環境なら
当然だと思いますよね 
根底にあるものは決して変わらないというか
大事なものはみんな見失ってない

ただ、大事な物が増えた……それだけ
のこと それだけのとっても重要なこと
なんだと思いますね
2010.02.11 Thu l トリスケリオン. URL l 編集
面白い。
「仕事の後には水だなー」
がとてもツボでした。
千早の壁はけっこう堅固なので、
春香や真ややよいのような突破力のある人間がいると、
本音の部分を見せられるんでしょうね。
765プロのみんなが幸せそうにしているのは、
見ている側としても、嬉しいものです。
あと、プロデューサーは律っちゃんのハリセンくらうべき。
2010.02.07 Sun l ガルシア. URL l 編集
高木社長の御旗の元に
「一枚絵で書いてみm@ster」に参加している月の輪Pです。
異端のアイドルの卵が集結し、互いに化学変化を起こしながら一流のアイドルになっていく一シーンを描いたようなSSですね。
そう考えると高木社長の存在が、SSの背景に強く浮かび上がってくるように感じられました。
2010.02.05 Fri l 月の輪P. URL l 編集

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