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いつも笑顔を振りまいているアイドルが最近暗い。
そう巷でうわさされている。
アイドルのイメージとしてはあまりよろしくはない。
それ以上に元気な少女が暗いということに問題がある。

「…」

「…春香、頼むから元気出してくれよ」

「えっ…?あっ、いたんですか?」

「そこまで存在感ないか、僕」

「ち、ちがうんです!今のは私がぼーっとしてたから!」

「…それってさ、最近暗いのと何か関係してる?」

「い、いえ!そんなことは!」

「その悩みは僕にも話してくれないのかな?」

「…えっと」

ずっとこの調子だ。かれこれなんとかしようと、聞き出そうとしてみるも幾度となく失敗してきた。
しつこくするのは逆効果かも知れないが、それでもやらなくてはいけなかった。
直感として、このままアイドルとしても人としてもまずいことになる気がする。
だから、春香が何かに押しつぶされる前にどうにかしなければならない。
その焦りからか、いきなり話を振りすぎてしまう。
情けない自分に腹を立たせそれでも助けなきゃいけないと彼は四苦八苦する。
彼女はアイドルで、彼はプロデューサーだからそれは当たり前だ。
でもきっとそれ以上にプロデューサーは彼女を守ってやりたかった。
見守ってきたものとして。
彼女が笑顔じゃないと泣きたくなるくらいに悲しいから。

「何度も言うけど、無理にとは言わないよ」

「…はい」

「その悩みを打ち明けて楽になるなら話してほしい」

「…」

「その悩みは僕が解決できるものなら相談してほしい」

「…はい」

もう一年になる。出会って、話して、一緒に活動して。
それでもどこかにあるぎこちなさが拭えない。
自分の知らない、もしかしたら春香自身も気づいていない見えない壁が二人を隔てている。
その壁は限りなく薄く、けれど決して壊れはしない壁。
それがどんなに悲しいことか。

「…でも、気にしないでください!そんな大した悩みじゃないですから!」

「…そうか?もう元気でいられるか?」

「もちろんですよー!私から元気をとったら何が残るんですか、もう!」

「…ならよかった」

「それじゃーお仕事行きましょっ!レッツゴー!!」

まただめだった。いつもあの壁に阻まれるのだ。
どこまでどこまでも薄いはずのその壁は、どこまでもどこまでも長いのだ。
どうすれば、そう頭を悩ませるのはもうずっと。彼女がダメになるまえに彼がダメなるかもしれない。
はっきり言えば二人はもはやアイドルとプロデューサーじゃない。
カウンセラーと受診者だ。
いや、もっと言ってしまえばただの病人かもしれない。
互いに、誰かを想って悲しみ苦労し絶望する、そんな病気。
いつか治る日はくるのだろうか。
2010.02.09 Tue l 自作小説 l COM(0) l top ▲

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