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ある日の二人の一日です。

とてもとても寒く、外に出るのが億劫になるそんな雪の日。
伊織は外にいました。いつものうさちゃんを抱きしめながら、吐いた息は白く。
そこへやってきたのは春香さんでした。
彼女もまた息を白くしていますが、伊織と違って笑顔です。
その笑顔が、妙にカチンときてしまった伊織。

「人をこんなくそ寒い中呼びつけて、あんた何様よ!」

出会い頭にこれです。これでは話もあったものではないです。
ですが春香さんは違います。少々引いてはいますが。
待たせてしまってごめんねの笑顔に、これから面白くなるから許してねの笑顔。
その笑顔の波にのまれてしまえば伊織さんもひとたまりもありません。
結局は許してしまう。それが天海春香さんなのです。
伊織は普段彼女とはあまりお話をしません。
仲が悪いというわけではないですが、特段良いということでもありません。
今日はどうしてもと言われたので渋々来たのです。

「…それで?何が面白くなるのかしら?」

仏頂面ながらも少しワクワクする伊織。
そこは十と四歳の女の子ですから、当然といえば当然です。
ましてやこんな寒い中呼ばれたのです。面白くなければ彼女は怒って帰ってしまうかもしれません。
そんなオーラを出す伊織に少し後ずさりながら春香さんは言いました。
雪を使って遊ぼうーっ、と。

「はあっ!?」

アイドルらしからぬ発言です。余程驚いたのでしょう。

「ま、まさかあんた!たったそれためだけのためにこんな雪の中この伊織ちゃんを呼び出したわけ!?」

そ、そうだけど、と苦しそうに言う春香さん。それでも笑顔は忘れません。苦笑いに近い笑顔です。

「信じられない!?あんたバカじゃないの?もう私帰るからっ!」

すっかりへその緒を曲げてしまった伊織。
それでも服の裾をがっしり掴み待って、と言う春香さん。
話を聞くと、春香さんはどうやら伊織と一緒に雪だるまを作りたいそうです。
あまりの幼稚さに伊織の怒りのボルテージは増すばかりです。

「そんなことどうでもいいじゃないっ!手は冷たくなるし、作っても後は溶けるのを待つだけじゃない!」

そんなことはないよ、作ることに意義があるんだよ!
そう力説する春香さん。お互いに一歩も譲りません。
しばしの沈黙がありました。
ですが寒さのせいなのか、はたまたなにかの気まぐれでしょうか。

「…さっさと作って帰るわよ!ばか!」

そう折れたのです。
その返答に対しての春香さんは満面の笑顔でありがとう!と言いました。
その笑顔が本当にうれしそうで、少し怒りすぎたかと後悔する伊織。
きっと春香さんは気にしてないでしょうけど、伊織はそういう子なのです。
二人はせっせと雪を転がし始めました。
伊織は頭を、春香さんは胴体を手分けして作りました。
雪は多く積もっていたのであっという間に雪だるまが完成しました。

「はい終わり、それじゃ帰るわね」

それだけ言って帰ろうとする伊織に、まだ!の声が。
まだ目とか口とかが出来てないよ!
そう、二人が作ったのはそれだけではあまりに白すぎるのです。
雪だるまというよりは鏡餅です。
ですから春香さんは口を、伊織は目を作りました。
さあこれで一般的な雪だるまが完成しました。
でもまだまだー!と意気込む春香さん。
次にティアラをつけたのです。
相も変わらず仏頂面で伊織はこう聞きました。

「どうしてティアラなんてつけるのよ?」

それはね、この子は私達と同じアイドルなの。だから少しでも可愛くしなきゃ、と言うのです。
なんとも不思議なことを言う人です。
そもそもなぜ自分なんかを誘ったのでしょう。
こういうことはやよいや亜美真美のほうが楽しいと感じるでしょうし、春香さん自身も楽しいはずです。
さらに春香さんは付け加えます。

だからね、この子と友達になろう!
正直伊織にはよく意味がわかりませんでした。
たかだか雪だるまにアイドルの称号を与え、あまつさえそれと友達になろうと言う。
とうてい合理的な伊織には理解できない世界がそこにありました。
そしてますます思います。どうして私なのだろうか、と。
さらに春香さんは言います。

でもね、この子もいきなり仲良くなれって言われても困ると思うの。だからまずは私達が仲がいいところを見せないと!

そう、言いました。
そのときです。伊織は理解しました。
だからわざわざこんなことをしたのかと。
だから絶えず笑顔であり続けようとしたのかと。
そんな春香さんの気持ちに気づいて、でも素直になれない伊織はこう言ってしまうのです。

「…あんたって本当にばっかね~」

うう…、そう漏らす春香さん。それでも数秒後には笑顔を取り戻そうとするのです。
そんな健気な彼女に伊織は手を差し出しました。
春香さんはキョトンとしながら、なにもわからないままその手を握りました。
そんな春香さんに伊織はあの思いに答えようと、言いました。

次はどんな遊びなのかしら?楽しくなかったらお仕置きだからねっ!にひひっ

笑顔で。
それがたまらなく嬉しかったのでしょう。
春香さんは今日一日のなかでの一番の笑顔を、自然と伊織に向けていました。
その後辺りが暗くなるまで雪遊びをしたそうな。

この冬の一日から春香の笑顔も伊織の笑顔も、同じところにたったのです。
2010.03.02 Tue l 自作小説 l COM(1) l top ▲

コメント

読ませていただきました!
「一枚絵で書いてみm@ster」参加中の月の輪Pです。
春香なりに知恵を絞って、孤立しがちな伊織を気遣って発生させたイベント、成功してよかったです。「この雪!! この雪を見たら、伊織ちゃんも絶対ワクワクノリノリだよ~!」という春香の立案の瞬間が想像できました。
それをぶち壊しにするほど伊織も恐い子ではないですよね。むしろ優しい子です。
案外、このイラストお題、スタンダードな展開が難しいと思うので、こういう展開は心にスゥッと入ってきてとてもよかったです。
2010.03.07 Sun l 月の輪P. URL l 編集

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