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2010/05/05 (Wed) 世間ではゴールデンウィークですが。

関係ないです。追記に長編アイマスの続きをうpします。

 男はすぐに携帯の電源を切った。コートも捨て、髪を切り、髭も剃った。整った印象があるその顔があらわになればもう亡霊の姿とは似ても似つかなかった。仮に少女と出くわしたとしても気づかれないこともあり得るだろう。最初からこのつもりで本当の電話番号を教えた。電話は切ってしまえばいいことでばったりあっても見逃すだろうと考えたのだ。あの一瞬で男はそこまで考えた。ただ、ズボンだけは変えていない。どのような人でも着ているようなものだし後ろのポケットに入った紙とペンを移すのも面倒だった。紙とペンがどこかにないと落ち着かないのは昔の名残で、何度かそれを改めようとしたがこれだけは出来なかった。忌まわしい記憶と完全に決別はできなかった。
 しばらく外にはでたくなかったが、あの少女とまた出会ってしまうような気がして、丁度自炊の食材が切れていたのでともかく何か食べるものを買いに出なくてはならなかった。なんとも妙なタイミングで切れる、と愚痴を心の中で零して外に出る。
 別に外が嫌いわけじゃなく、むしろ散歩なんかはよくしている。食材を買うついでだったりそれだけだったりと男の活動時間のいまや半分を占めていると言っても過言ではない。いまこの特殊な条件下においては外に出たくはないだけなのだ。近くの業務用スーパーまでの距離が若干遠く感じられるのは間違いなく昨日のことがあったからだろう。足も心なしか重い。だが挙動不審に振舞えばそれはまずい、見つかるという嫌な感覚が付きまとっていた。それなのにどうして外に出たのだろう。一日くらい我慢すればいいはずだ。それなのに男は外に出てしまった。それがなにを意味するのか。
 遠くに感じられた業務用スーパーに着いた。存外早く、それでも男は油断しない。この中で出会うかもしれない、偶然なんてそんなものだ。ぱっと見渡した限りではあの少女はいない。だが入り口からでは当然奥までは見えない。精肉コーナー、パン販売コーナー、冷凍食品コーナー。どこかにいるかもしれないし、いないかもしれない。ここまで警戒するに値するか、もちろんする。あの少女は一筋縄でいくわけがない。ならどうして、やはり迂闊に外に出たのか。それはなにを意味するのか。
「そこの人ー」
 呼びかけられた男だ。どうするか、そう思ったのには理由がある。
 呼びかけられたのは事実だが声は少女のものじゃない。十代ではない。二十代はいっている声質だ。だから少女ではないのか確かだ。でもなぜ声をかけられたのか、それが解せなかった。自分に声をかけるのが最近のブームなのかもしれないとくだらないことを考えた。それから歩き出した。関わるべきではないと。だが遅かった。
「あなた、この間の人ですよね」
「…この間の、人?急になんですか?」
 あくまで知らないフリをした。なにせ自分は少女と出会った外見とは違う。似ているなというのはあったとしても断定はできない。人間は断定でき得るだけの証拠、理由、根拠がなければ安心できない。だからこそこの会話はこれで終わる。そう思った。
「んーっと…。あった」
 あった?なにがあったのか男が疑問に思う、それとほぼ同時に見知らぬ女性は男の後ろポケットに手を伸ばす。堂々と痴漢でもするのだろうか。そこからなにか抜かれた感触があった。
「人のペンを抜き取るのが、趣味なんですか?」
 それは後ろポケットにいつも入れている紙とペンだった、が違和感がある。後ろポケットにはまだペンの感触がある。それにいま女性が手にしているペンに、見覚えがなかった。
「これ、あの子からですよ」
 その言葉の意味がわからない、と思いたかった。でも男は確信した。これはしてやられたと心の中で苦笑さえした。あの少女、別れ際に自分のペンをズボンの後ろポケットに入れていたようだ。抱きつかれながらタックルされたときだろうか。あの時なら当然わからない。でもあの少女ならどのタイミングでもうまく立ち回れるような気もする。
「よかったですね、電話番号付きですよ」
 ペンの挟む部分に紙の切れ端、それには電話番号が書かれていた。それがだれのものなのかは言うまでもなかった。ますます苦笑が心を支配する。ああこいつは大物だ、その確信とともに心に広がっていく。どんな関係なのかは知らないが十中八九この女性はあの少女と繋がっているのだろう。それ以外に考えられない。
「電話、しないんですか?」
「ああしない」
 これで怖くなって電話するとでも、面白い奴だと思って電話するとでも。男にその気はさらさらない。さっさと料理の材料買って帰る、それだけの一日にすぎない。女性にペンを返し身を翻した先、こればっかりは男も驚いた。
「そうよね、電話する必要ないもの」
 そこにはあの少女がいた。威風堂々、凛とそこに立っていた。
「おまえ…」
「絶対にもう一度会ってやろうと思ってたけどまさかこんなに早くなるとは、さすがに運命なんてものを感じちゃうわ。あなたもそう思わない?」
 呪われている、と思った。素直に純粋にどこまでも真っ直ぐにそう思った。結局今日外にでずとも何れまた会っていた。運命?確定事項?抗うことはできないか、きっとできない。それでも抗わなきゃいけない理由が男にはあった。少女の誘いにのればまたあのトラウマが再来するかもしれない。それだけは、嫌だった。
「思わない、それじゃ」
「あら、冷たいのね、白井さん」
「…俺の名前か、その様子だと他も筒抜けか」
「白井譲、私はそれしか知らないわ。姫っちは他にも知っているけど」
 姫っちというのは恐らく。
「姫上です。以後お見知りおきを」
 そう言うと女性はお辞儀をした。それだけの動作が嫌に美しく感じるのはこの人の顔が整っているから、纏っているオーラが綺麗だからだろうか。ただこの人を安易に信じるのは危険だと男は判断する。極論言えば、この人はサディストだ。それもドが付くほどの。
「私より先に自己紹介するなんてずるいわ姫っち」
「あら、すいません。疑問だろうと思いつい口が動いてしまいました」
 そのやりとりを無視してすり抜けようとしたが案の定だめだった。がっつり腕を掴まれた。いっそ殺してほしい。昨日今日と白い目で見られるくらいならいっそ死にたい。不可抗力で死ねたらそれはどんなに楽だろう。
「ちょっと、行くならせめて私の自己紹介聞いてからにしてよ」
「俺には関係がない」
「大有りよ、私のプロデュースしてもらうんだから私の名前を」
「ふざけろ」
 それだけ言って歩き出す。頭がパーなのか知らないが他人様の都合でどうこうで動く気はない。ましてやプロデュースなど吐き気がする。もうその言葉を聞いただけで理性が飛びそうなくらいだ。飛んでないことが不思議なくらいだ。
「ちょっとー!せめて私の名前聞いてけー!」
 もうなにも聞こえない。聞きたくない。聞くに堪えない。なにもなかった。そうなにもなかったんだ。もう帰ろう。晩飯もいらない。帰って寝よう。
「わ――は、―だ――い」
 聞かず男は業務用スーパーを後にした。

 昨日今日でこうもすんなり会うとは思わなかった。姫っちにはこの近くに住んでると聞いていたけど本当に運命なんてものはあるかもしれないと錯覚するほどにすんなり会えた。
 結局今回もだめだったけど会うたびに思う。あれはプロデュースする、私を、絶対に。
 だからいつまでだって追い掛け回してやるって決めていた。

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自個偽無、候。
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