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2010/08/31 (Tue) よし。

一応OKをもらいましたので。
それではこちらの小説を、どうぞ。
題名「かざぐ  るま」

その屋台は金魚と雲が同時に存在する。
空と地面がすれ違う、空を泳ぐ金魚たち。
その屋台にはかざぐるまがあった。でもからからと音を立てて回ることはない。
静止したままそれで終わりを迎えるんじゃないかと思えるほどにも無音だった。
そこへ彼が現れて私の止まっていた時間がゆっくりと氷解していく。その時、かざぐるまが一つだけ、ゆっくりと回りだした。
からから。
二度と会えることもないだろうと思っていた彼、黒い長袖をまくって長ズボンのいつもの格好。
たまらなく好きだったその格好が目の前にある、それだけ私は泣いてしまった。
私が浴衣で、彼は普段着で、昔のまま。空と地面と金魚が混ざり合うこの不可思議な空間でも懐かしさを感じた。
からからから。
彼が私の頭を撫でるのと同じにまた一つかざぐるまが音を立てて走り出した。
風は右から吹いている、だけど他のかざぐるまたちは回らない。
不思議な空間にはどんな物理も、科学も通用しない、きっとそういうことなんだろう。
それまでしゃべれなかった分精一杯思いをこめて彼に話をした。
大学に受かったこと、初めてバイトをしたこと、一人暮らしを始めたこと。
親と喧嘩したこと、友達が増えたこと、先輩と旅行に行ったこと。
一人で寂しかったこと。
楽しいような悲しいような心持で私は永延と彼に喋り続けた。
彼はずっとそれを聞いてくれて時折頷いて見せた。
からからからから。
からからからからから。
からからからからからから。
やがて思い出したかのようにかざぐるまたちが動き出す。音が幾重にも重なって、まるでオーケストラでも聴いているような不思議だった。
なにか違和感を感じた。ふわっとした、そんな印象を彼にみた。
もともと彼の物腰は柔らかくそれを感じるのになんらおかしいことはない。
気のせいか。でも何故だろう。やけに胸騒ぎがする。
それからもずっと喋り続けた。やかましい女と思われたかもしれない、けど止まれなかった。
彼もまたずっと首を縦に振ってくれていた。それだけよかった。
そうして話をしていく、それと比例して違和感も大きなものになっていった。
小は中へ、中は大へ、大は特大へ。
そのような感じ、と曖昧で済むものだったものはやがて違和感の塊となって、そして表れた。
彼の姿が薄い。
存在が薄いとかではなく、いやそうでもあるけれど、物理的に、視覚的に、薄い。
ファンタジーの映画とかであるホログラフィーのような感じだ。
いまはまたそれほど薄くはない、どちらかといえば濃い。
だが私は知ってしまった。
私が話して、彼がうなずいた瞬間にかざぐるまが回ることに。
首が縦に振られて、から。
縦に振られて、から。
振られて、から。
かざぐるまの群れはいつしか音の合体をして風車とさえ思えるほどにまで大きな存在となっていた。
こうして私はしゃべるのを程なくしてやめた。自重した、と言うべきだろうか。
じゃなきゃ彼が、   しまう。
せっかく会えたのに、そんなの嫌だった。
私がそうしていると、今度は彼が喋り始めた。
久しぶり。から。
会えて嬉しいよ。から。
それとごめん。から。
かざぐるまが回る。そして周りを自由に泳いでいた金魚たちも空へと消えていく。
やめてほしかった。でもまた私は知ってしまった。
もう時間がないことを。
あれだけ広がっていた地面や空が、果てが見えなかったそれらの端が見えてしまったから。
遅くもなければ早くもない、しかし着実に、ゆっくりとこちらへ向かってくるのだ。
かざぐるまたちが音を奏でて、金魚たちは空の大海原へと向かい、果てはこちらを飲み込もうとする。
それら全てがこの世界の終わりであることを知ってしまった。
あれだけ断固として動かなかったかざぐるまたちもあとは五つを残すだけ、金魚も五匹だけになってしまった。
もう、私は喋れなかった。
顔を手で覆ってしまった。
それが私のせめてもの抵抗。
そんな私に変わらずの声で彼は話しかけてくる。

わかったんだね。から。
もうお別れなんだ。から。
だから最後に。から。

私の手がなにか暖かいものと触れた。驚いて顔を上げて目を見開けば。
私の手を握ってうっすらと微笑む彼がいた。
その姿はもう薄く、古いビデオテープの映像のようにぶれぶれだけど。
彼の笑顔は確かに鮮明だった。
彼の右手は私の左手、そして左手にはかざぐるまが握られていた。
それを私に握らせて、言った。

もう忘れていいんだよ。
から。

彼から受け取ったかざぐるまが回って、かざぐるまたちは全て回った。
急速に世界が収束をする。果てが途端に近寄ってくる中で私は絶対に彼の手を離すまいとした。
彼もまた、そうしてくれた。
でも終わりというのはあっけないもので、何かにひっぱられるように彼は空へと行ってしまい、私が最後にみたのは最後の金魚が地面にダイブした瞬間だった。
それで終わり。

泣いていた。目を開けると同時、あるいは既にか、涙が溢れ出てきていた。
もう二度と会えないとわかったからから、少しでも会えてよかったからか。
たぶんいくらでも泣いた理由は探せるし、そのほとんどが正解だと思うけどいまだけは。
左手に残っていた温もりと、右手から聞こえるからからという音に泣いていたんだと思う。
泣き声とからからという音だけがずっと私の部屋に響いた。

ちなみにこのかざぐるまの一つの羽根にこう書かれていた。
大好き。
あの夢では終わりに抵抗し続けることは出来なかったけど、これだけは抵抗し続けてみせよう。
彼のことを忘れる、ということに。

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Author:流ぬこ
自個偽無、候。
書いたり書いたりしている流ぬこです。
ピクシブなんかでも同じく流ぬこで書いています。
はじめの一歩を見るとオズマ戦でも小橋戦でもどの戦いでも泣けます。はい。

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