代役には代役なりの意地がある。
だから代役だとしても、このssは立派な役者です。
(キリッ
というわけで一枚絵に出展作品「一線を越さない覚悟」
許されるのならこのままでいたい。
何もかも忘れてこのままに身をまかせていたい。
でもやがて終わりが来る。そう、私たちは。

「響、何を作っているのです?」

「みんな大好きなカレーだぞ!」

「カレーらあめんですか、それは楽しみですね」

「なんでもラーメンに当てはめるのはよくないぞ」

「これは失礼」

彼女が私のために料理を作ってくれている。
私のために台所に立っていてくれている。
それがどれだけ嬉しいことか。
軽快な会話とは裏腹に私の心内はどんどん重くなっていく。
許されざる。だがしかし。

「ですがかれえもまた美味ですから今日は楽しみにしています」

「そりゃもう!自信満々の一品だからほっぺとろけるさー」

「ではそうでなかった場合はらあめんの追加注文もいいのですね?」

「いや、どれだけ食べるんだ…」

「らあめんはおやつにも主食にもなる優れた料理ですからね」

「ならないからねっ!」

楽しい、楽しい、嬉しい、嬉しい。
でもその後に告げられる現実に打ちひしがれるのがわかるからこんなに辛いんだろう。
そう、この響はあくまでこの四条貴音にご飯を振るっているだけ。
この四条貴音と同棲しているだけ。
そこに私という四条貴音は。

「カットー!はいお疲れさーん!」

いないのだ。

「はいさい!お疲れ様です!」

「…お疲れ様です」

「休憩取るからしっかり休んでねー」

あくまで役の我那覇響と役の四条貴音だった。
一瞬だけ別の人物の人生をなぞっていただけ。
その一瞬での束の間の幸せに酔いしれていたのだ。
これからも仮初の関係は続くけれどそれもやがて終わる。
終われば私たちはよき仲のライバル同士となるだけ。ただそれだけ。
いつからか、初めはそれでよかった。それが当たり前だった。
でもいつしか私の心のどこかに暗い、不純な感情が芽生えてしまった。
言ってしまえたら楽になれる。だけど言えない、言える訳がない。
だって。

「お疲れ様ー!貴音一緒に飲み物でも買いに行こう~」

この笑顔を二度と見れなくなること。
彼女が漂わせるほのかな良い匂いを嗅げなくなることが。
彼女のシルエットをこの目に写すことが出来なくなるのが。
それら全てが怖くて私を押しとどめる。
この一線は越えてしまったら帰ってこれなくなる。
良い結果でも悪い結果でも。
だから私は。

「はい、参りましょう響」

友人、四条貴音として出来る限り響の近くにいよう。
それ以上先を見ることなく、それ以上先を望むことなく。
友として、好適として。
いつまでもいつまでも。
2010.09.21 Tue l 自作小説 l COM(0) l top ▲

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