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2010/11/28 (Sun) またも突発ss

タイトル「軍神、戦乙女へ」

今回の絵はこちら。かなブロ
絵のタイトル及び作者:射命丸スナップ001「山頂の休息」、Ze-Nさん

うちの神社は自慢じゃないが何も寄り付かない。
神社であるのだからそれ相応に参拝客もいてほしいが生憎山の中まで入り込んでくる物好きな奴はいない。その山が妖怪の山って言うのだから尚更だ。
人間は勿論だが妖怪も寄り付かない。いろいろあってあまり好かれていないのだ。こんな調子で神社として機能しているかと言われれば、はいとは言えないだろう。
生き物お断りの結界でも張ったかのように何も寄り付かないうちの神社に、最近になっての話だが一人変わった男が訪れた。

俺はブロント謙虚だからさん付けでいい

第一声がそれだったものでどうにも印象深く頭の中に残ってしまった。それは他の二人もそうだったようでおかしいな奴だと三人で思いながらも笑っていた。
その笑いは嘲りではなく、なんと表現したものか。心の隅がほんのり暖かくなるような笑いだった。
それからというものその耳の長いやたらめったら重そうな純白の鎧を着た男は我が守矢神社にちょこちょこ顔を出すようになり、その頻度も日に日にまして多くなっていった。そんなものだからうちの早苗がその男のために服まで繕ってしまった。その服が仕上がった次の日には既にその男の袖を通り、これは存外似合っていた、今ではそちらのほうがしっくりくるくらいに感じる。
神社に長く居座るようになってからは私達と時を同じくすることも多くなっていった。早苗の家事や洗濯を手伝ったり諏訪子と森の中を散策したりだ。当の私はそれを微笑ましく見ているだけで満足していたのでそれでよかった。が、いつだったか。
早苗も諏訪子も人里まで出て行くことになり神社には私とその男とでの二人きりのことがあった。その日はお互い黙して語らず、ただただ同じ縁側に座り距離を離して風景を見ていた。それで終わり。だが早苗や諏訪子がいない日はまちまちあった。私は立場上神社から動けないしその男もこの神社に来ることをやめないものだからそれを回避することは出来ず、少しだけ居たたまれない気持ちになった。
だから私は口を開いた。お前、碁は打てるかと。そうしたら

なにいきなり話しかけてきてるわけ?

と来たものだ。その言葉は幾度となく早苗や諏訪子に言っている状況で聞いたことがあったが自分自身に向けられたことはなく、つい笑ってしまった。誰もが恐れおののく軍神の私に対してのこの口ぶり。笑わずしてどうするか。
その後もいろいろ会話のやり取りがあったがとりあえず結論を言うと、碁も打てるということだった。も、というのは他にも将棋も出来るということ。
それからか、私達二人が距離を圧倒的に縮め、向かい合い、お互いの思考を読みあう遊びに興じるようになったのは。私とて軍神、故に負けることはなく完膚なきまでに相手をした。それでもやめることはせず、愚痴などは大いに零していたが、飽きもせず私達は思考を読み合い絡め合いながら日々を過ごしていった。
私と彼の勝敗で私の勝ちが三桁を越えた頃くらいだろうか、突然彼は喋り始めた。その間も私達は手を止めることなく将棋を指した。
曰く、元々自分はこの神社の動向を探るためにきたのだということらしい。確かに私達は一度騒動を起こしてもう一つの神社の巫女に目をつけられている。あの巫女のことだから自分で監視するのはめんどくさいから彼を、ということだろうか。
それだけ言ってすまにぃと彼は謝った。大きめのそれでいてよく通る声で。恐らく私だけでなく他の二人にも謝罪したかったのだろう。しばらくの静寂、それを破ったのは私の一手だった。パチン、と小気味良い音。
その一手を見て彼は驚いて、ながらも私の王を奪い去った。軍神の私の王を取ったのだ。これは私が手を抜いたからではなく、だが彼の将棋の腕が私に追いついたのでもない。
私はまた別のもので負けてしまったのだ。攻略されたのはこの小さな盤上で起こっている戦いではなく、それを操る私だった。それを、恐らく理解していないであろう彼は私の王を手の中で見つめながら寝てしまった。余程昨日寝付けなかったのだろう。それだけ私達に悪いと感じていてくれたようだ。
そうして寝てしまった彼に、私は将棋板を退かして自分の膝に頭を乗せた。恥ずかしながらこれが初めて彼に触れる瞬間だった。
かなブロ
私の膝の上で寝る彼の寝姿は苦しそうではなく、どことなく安らかに見え私にはそれが嬉しかった。早苗や諏訪子に見られている恥ずかしさもあったがそれ以上に心はほんわかしていた。やがて二人のどこか羨ましげな視線もなくなった。
そっと左手を彼の銀髪の上に乗せる。丈夫で何となく元気な動物を想像させる毛並みに私の顔は綻んだ。嬉しく恥ずかしく綻んだ。
でも実のところ何に嬉しくて何に恥ずかしいのはわかっていた。でもそれを呆気なく認めるのは軍神としていささか負けた気分にもなるのでそこは少しだけ抵抗しておく。だからそっと囁いた。

おやすみなさい、ブロントさん。

いつか彼にさん付けで呼ばなくていいと言わせるまで、この戦には勝って見せよう。だからこそあの木の陰から見える鴉天狗の行いも許そう。軍神たる私には似つかわしくない、ぎこちなく危なっかしい恋戦を。

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書いたり書いたりしている流ぬこです。
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はじめの一歩を見るとオズマ戦でも小橋戦でもどの戦いでも泣けます。はい。

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