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2010/12/19 (Sun) ピクシブ突貫企画

今回で、えっと三回目かな?
ちょっと記憶が疎かですがタイトル「河と僕と鍵の少女」
絵のタイトル及び作者名 「河城にとり」 sinzanさん
河城にとり sinzan作

ファイルサイズの問題でペイントでばっさりカットしてある部分があるのでちゃんとしたものが見たい人はこちらから


それはいつの記憶だったろうか。遠い遠い思い出だけど決して消えることはないもの。どんなに薄れても忘れても根っこの部分で枯れない思い出。
河と、僕と、鍵の少女。

人里で生まれ育ち何事もなく成長していた僕。妖怪や妖精などこの世に存在すると聞いてはいるが一度もあったことがない。そういった平凡で平和で温和な生き様だった僕。
変わっていることといえば、夏が来るとさも当然のように見る夢くらいじゃないか。後は箸の持ち方が人よりちょっと違っていたり両利きだったりするくらいだ。
自他共に平凡と認められる僕に普通じゃないところを見つけるほうがそもそもの前提としておかしい。夢だって人間一つや二つ見続ける夢くらいあるだろうしなかったとしても生きるうえでそれが障害になるかと言えば、だろうし。その夢だってなんてことはない内容でそれまで親しい友人にそんな夢を見るんだと話したことはあっても夢の内容まで言ったことはない。
どうしてもって言うなら今から夢の内容を

「妖怪の山に行こうぜ!」

僕の脳に聞こえてきたそれは理解できる言葉ながらも理解するまでに時間を要し当然の如く疑問が脳を掛ける。何のために?と。言いだしっぺによると要は度胸試しということらしい。
人里でこういったくだらないものが流行るのは最早常識、例えば腕立て王決定戦とか女に一番モテるのは誰かランキング(男達による独断)とか、そういった愚の骨頂なことの次のターゲットがこの訳もない度胸試し、ということだ。
さすがに妖怪の山はまずいんじゃないかという声が上がった。人里では妖怪や妖精は危ないものだと伝えていたしその延長線上で勿論妖怪の山にも立ち入るなと皆親から聞かされていた。
だが僕たちの身体と好奇心はそんな掟めいた言いつけを突き破りたくなるほどに大きくなってしまっていた。
だからこそ僕だって危ないと思いながらドキドキしながら今こうして妖怪の山にいるんじゃないだろうか。同じような服を着た男が五人、互いに互いを気にしながら徐々に奥へ奥へと歩を進めた。と言っても入ったことが初めてなのでどれほど進んだかもわからないのでただただそう感じることしか出来なかったという節もある。
山に来る前の取り決めである程度進んだら散開、怖くなったりもう無理だと思ったら先に山の入り口まで戻り待っていること。一番遅く帰ってきたものが一番の度胸持ちということだ。
ある程度まで進んで散開する理由は一人のときにその場にずっといてある程度したら帰ってくるということを出来にくくすること、つまり進まなくても立っているだけでもそれなりの恐怖を感じる場所ならばすぐにでも引き返すだろうという考えからそういうことになった。好奇心の塊で出来ているような奴らばかりだからそうなることはないと思うが、一応ということらしい。
しかし、いざ独りになってみると先ほどまでの好奇心よりも森の不気味さや静けさが酷く恐怖心を煽る。自分では認めにくいが多分弱虫の類である僕はその恐怖心に早くも踵を返しそうになる。でも心のどこか奥底でもっと進めと聞こえてくる。感じられると表現したほうがいいのかもしれない。酷く曖昧な感覚なのにこっちに進めと言う指示だけは明確に断固たる意志を感じるのが一層怖さを増した。それでも僕は歩を進めて、ある場所へと辿りついた。
人間にも妖怪にも世界にも忘れ去られてしまったと思えてしまう小川。水遊びをするにも泳ごうにも中途半端で何も出来ない。ただただ流れを見ることしか許されない。
その世界の忘れた風景を、僕は知っている。いつも見る夢の中のお決まりの舞台、それがこの小川と木々と木々がひしめく間のちょっとの隙間から覗く空。本当に何から何までその風景は僕の夢の舞台と一緒だった。でも足りないものもある。
鍵の少女、と僕は呼んでいる。その夢の中で僕とその鍵の少女はずっと川を見ながら静かに話して笑い合っている。でも僕がふと空を見上げて横を見れば鍵の少女は既にいなくてそこで目が覚めるのが恒例だった。そこから先は一度も見たことがない。
がさがさっ
奥の方から明らかに風が木々を揺らす音ではない音が聞こえる。草を掻き分けて確かな意思を持ってこちらにやってくる恐らくは生物のもの。だがここは妖怪の山で今ここで度胸試しをしている自分達以外に人がいるとは思えない。ならば、つまり。

「やあ人間、我が物顔で妖怪の山でお遊びかい?」

そうして現れたのは人型の、外見は少女のそれだった。背中につけている得体の知れない薄緑色の綺麗な何かは独りでに蠢いている。それは這いずる虫か何かのようで気持ちが悪かったが僕が一番驚いたのはそこじゃない。

「鍵の、少女」

彼女の胸元に僕がそれまで幾度となく見てきた夢の中であの女の子がつけていた鍵とまったく同じものがつけられていた。薄く照らされる木漏れ日で鈍く金色に輝いている。着ている服も夢で出てくるあの子と似通っている部分がある。つまり僕が見てきた夢は、夢じゃなかったんだろうか?

「盟友だった頃が懐かしい、が今ではここまで落ちぶれたのかい?」
その声色には遠い親しみと近い敵意のそれが含まれていた。盟友、とは僕の事なのだろうか?とてもじゃないけれど頭の回転が中々この現状に追いついてくれない。

「ここは妖怪の山、妖怪があんた達に関わらないよう、そうしている山。なのにあんた達と来たらこれだ」

やはり歓迎されているようには聞こえず、更に僕の脳を混乱させるのには一秒と掛からなかった。でも混乱は一回りすると落ち着くようで不思議なものである。そうして、彼女の言い回しから彼女が人間でなく、妖怪だということもわかった。これだけ人型で、少女らしい身形をしていてもこの少女は、妖怪なのだ。そのことを今認識したのではなく、昔から知っていたことを思い出したかのように感じた。

「さて、人間がここに入るのはあまりよろしくないしこうして妖怪の私に見つかったんだから何をされても文句は言えないね」

違う。この妖怪はそんなことしない。人間をとって食ったりするはずがないのだ。それならば遠い昔に僕は食われていなければおかしいのだから。また何となく思い出す、この先後少し行けば全てを思い出せることを思い出した。

「…その先へ少しだけ行かせてくれませんか?」

「それは出来ないね、と言うよりここにいることも許されないんだけど?」

その言葉には行かせないと言う確固たる意志が伝わってくるし、目つきも大分恐い。それでも僕はこの先へどうしても行きたかった。自分のために、この少女のために。

「お願いします!」

「ここから先へ言ったって何もありゃしない、無意味なことをさせるほど私は暇じゃない」

このままでは埒が明かない。どうしても行かなきゃと何に命じられているのかもわからないまま僕は一気に走った。だが

「ここから先は駄目だっていってるじゃないか。この莫迦でうぬぼれ屋の人間め」

河城にとり sinzan作
眼前で広がったのはそれまでうごうごしていた薄緑色の物体が一気に何本もの触手のように広がり挙句の果てには目のようなものまで光っている。表現しがたく、またきっとそれは冒しがたくも見えた。さすがにこれだけの未知の恐怖に抗えるほど僕は強くなくて、尻餅を自分でも潔いと思えるくらいに綺麗についた。

「一度だけは警告として何もしなかったけど、次はない。だからもう一度言うよ?この先には何も、ありは、しない」

今までのどれよりも鋭い目つきで、でも何故かそれは一番遠く悲しそうな目でもあった。それが何故なのかはわからない。

「…僕はいつも同じ夢を見るんです。そしてその夢はここが背景で僕がいて、鍵の少女がいるんです。貴方の胸元についているそれと同じ鍵です」

「だがそれは夢だよ。たまたま同じように見えているだけだ、人間の夢とはそんなものさ」

「でも!僕はこの先を知っている!理由も証拠もないけど、少しでもこの先を見せてくれたら絶対に何かを思い出せるんです!その思い出は…!」

「…その思い出は?」

「すごく、大切なものだった気が、するんです」

そう、ただ気がするだけだ。でも絶対にそうなんだ。だからどうしても僕はここより先に進みたい。全力でそう伝えた。でも結局は

「…そんなものは、ないよ。いいから帰りなさい。天狗が来る前にね」

「でも…!」

「くどい、言ってわからないようなら腕の一本や二本、折ってでも言い聞かせてもいいんだよ?」

その目は、本気だった。これ以上無駄な口答えをしたのなら僕の腕はあらぬ方向へと曲がるだろう。この少女はそれだけのことが出来る、妖怪なんだ。でも僕にはどうしてもこの妖怪がいつまでも遊んでいたい人間の童に見えてしまう。

「わかりました。諦めます、でもまた来ます」

「それは私に喧嘩を売っているのかな?」

「違います。僕はまだ貴方と、ううん。君と話をしていたいんだ。夢の中で僕と鍵の少女がそうしたように」

「生憎、私はその鍵の少女じゃない、何せ妖怪だからね」

「例え妖怪だとしても僕は君と話をしたいんだ、だめかな?」

「…だめだね、妖怪と人間はもう相容れないものだから」

「そう、でもまた僕は来るからね。腕を折られる前に立ち去るから安心して」

「…次の保証はない、私だっていつもここにいるわけじゃない。それでもなら、勝手にすればいいさ」

「うん、勝手にさせてもらうよ。それじゃ今日は帰るね」

それだけ言って本当に僕は彼女に背を向けた。何事もなかったかのように来た道を引き返した。ただ違うのはこのドキドキやワクワクが来たときにはなかったことだろう。



「はあ、記憶消去、しきれてなかったのかな」

私は深くため息を漏らした。あの人間と遊んだ記憶は一応小さいながらも発明した記憶消去の機会で消したのだがまだ未熟だったためかその記憶は夢として残ってしまったらしい。妖怪の山はお世辞にも治安がいいとは言えないので、昔のよしみとまでは行かないが自分と関わってしまったしで妖怪の山に来てしまったのならある程度のケジメはつけようとした。
案の定ここに来た彼はこの場所と私をきっかけに完全に消えていなかった記憶を呼び覚まそうとしていた。思い出したところでどうにもならないし、それは止められたので良かったとは思うが心の中ではちょっとだけ嬉しかった。だって私は未だに人間が好きだから、その人間に少しでも覚えられていたのがやっぱり嬉しかった。
そういえばまた来るといっていた彼はもう帰ったのだろうか、無事に帰れたのならいいのだけれど、と考えながら彼が帰った道を辿ってみると話し声が聞こえた。

「随分と遅かったな、もしかして妖怪を見て教われてたとか?」

「確かに妖怪は見たね」

「本当か!で?で?どんな恐ろしい妖怪だったんだ?」

「ううん、人間よりもよっぽど人間が好きな可愛い妖怪だったよ」

「はあ?それ、本当に妖怪なのかよ」

「うーん、僕的にはその子が妖怪だろうが人間だろうが何でもよくて…」

「あーもういいもういい。怖すぎて何か幻覚でも見たんだろう、ともかくもう飽きたから帰ろうぜ、みんな撤収だー」

「ちょっと、待ってよー」

そんなことを真面目に言うもんだから皆に莫迦にされてこのあとからかわれるんだろうな、と思いながら私はちょっとだけ涙を流して微笑んでいた。
それまで絶対に会うものかと思っていた気持ちが、少しだけ、ほんの少しだけだけど仕方ないからもう一度くらい会ってやろうかと思うくらいに私の心は傾いてしまった。

「あーあ、だから人間は莫迦なんだ」

でもそんな莫迦な人間が今でも好きな私も結局莫迦なんだろう。でもそんな莫迦私を、私は褒めてあげたかった。そして出来るなら彼と一緒にまた川を見ながら静かに話していたあの頃と一緒なように話せたら、と一人、涙目になりながら、莫迦みたいにそう思った。

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Author:流ぬこ
自個偽無、候。
書いたり書いたりしている流ぬこです。
ピクシブなんかでも同じく流ぬこで書いています。
はじめの一歩を見るとオズマ戦でも小橋戦でもどの戦いでも泣けます。はい。

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