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「今年も一人、寂しいなぁ…」
そうして音無小鳥は一人ケーキを食べていた。誰と食べるでもなくこのあと数時間後には年が変わるこの瞬間にも一人で。それは今年が初めてではなくかれこれ数十年
「あ~あ、寂しいな」
心なしかの殺意を感じたのでこれ以上は言わないでおく。何はともあれ一人がやたら寂しいのか独り言が止まらない小鳥であった。そう呟きながらもちゃっかりケーキは食べているから器用ではある。この器用さが仕事中にも存分に発揮されるから出来る女と見られてなかなか男性社員が話しかけられない要因とは夢にも思わないのだろう。

PULLLLLLLLLLLLLLLLL PULLLLLLLLLLLLLLLLL PULLLLLLLLLLLLLLLLL

携帯電話の無機質な着信音が鳴り響く。どうやら小鳥の携帯が鳴っているようで本人もそれを聞いて驚いてこたつの中でくつろがせていた足を思い切り上げてしまいこたつにぶつけてしまい痛そうに顔を歪める。その行程をふんで漸く電話にでた。電話のディスプレイには見知らぬ電話番号が表示されていたが出なくとも寂しいだけなので出ることにしたのだろう。

「はい、音無です」

『夜分遅くにすいません、音無です』

「えっ?音無さんですか?」

『はい、今お時間大丈夫でしょうか?』

「ええ、平気ですよ」

堂々と平気だと言ってしまったがそれは寂しい夜を過ごしていると声を張って言ってるようなものなのだが電話をしてきた人物が意外で細かいことは考えられなかったのだろう。
音無、と言うのは小鳥のことではなく代理プロデューサーの苗字の音無である。だから今765プロには二人の音無という苗字の人物がいるわけなので、決して小鳥が自作自演をしているわけではないのでそれには留意していただきたい。

『少し事務仕事をしていたのですがわからないことがありまして、電話でそれについてどうすればいいのかご教授頂きたくて』

「あっわかりました、それでどんな内容ですか?」

『では言いますよ…』

話しを聞くと小鳥はなるほど、と納得をした。プロデューサーとしても有能であり事務仕事までこなす音無でもこの内容は事務に精通していないと厄介なものだった。そしてこれを口頭で説明するのはいささか骨が折れる。

「教えるべきことはわかりましたけど、口頭での説明は難しいので今から事務所に行きますね」

『いえ、そこまで音無さんのお手を煩わせるわけには』

「いいんです、どうせ暇なので。それと同じ音無ですから、小鳥でいいですよ」

『ですが』

「もうっ、今から行きますから大人しく待っててください!いいですね?」

『…了解致しました。ありがとうございます』

「それでは、また後で会いましょう」

『はい、では失礼致します』

礼儀正しく電話を切る音無。それを聞き終わって小鳥はすぐにコートを羽織る。電話でも伝えたようにもう音無には一人寂しくしていたことがばれているので今更めかす必要もない、そう思った小鳥は待たせまいと必要最低限のものを持って家を出た。あと、大人しく待っててください!と言った後に音無だけにと言わなかったことを心底良かったと思っているのは内緒だ。

「来ましたよ、音無さん」

「年越し目前の所で仕事のお電話、申し訳ございませんでした。なにより、来ていただいてありがとうございます」

「いえいえ、それじゃさっさくですけど教えますね」

「かしこまりました」

そうして事務処理の仕方をぱっぱと教えていく。こればかりは慣れたので、音無よりも小鳥のほうが数倍は早い。こうしたてきぱきさを見て惚れる男性と言うのは少なく、どこかで抜けている女性のほうが可愛く見えるのだ。いかんせん仕事だけは妙にきっちり出来る小鳥なのでそこのアピールが出来ずに今日も先ほどのように寂しい一日を過ごしていたのだ。

「成る程、よくわかりました。音無さんは教えるのがお上手で助かります」

「どちらかと言うと音無さんの覚える速度が驚異的なんですよ。私だってこれを覚えるのにはなかなか苦労したんですから。それと音無、じゃなくて小鳥って呼んでください。紛らわしいじゃないですか」

「はあ、では小鳥さんとお呼び致しますね」

「はいっ」

下の名前で呼ばれるのが大分久しい小鳥にとってそれはうれしいことだった。心の中で今年一番のガッツポーズをしつつ、あくまで表面上には出さない。出したほうが好感が上がるということをそろそろ誰か教えてあげて欲しい。

「では、僕はあと少しだけ処理があるので小鳥さんはご自宅に帰っても大丈夫ですので」

「せっかく来たので手伝いますよ、どれくらいですか?」

「あとはこれだけです」

そう言って指差されたほうには山積みにされた書類とあと少しの書類の束がある。小鳥的には少しの書類の束のほうが好ましい。会話文的にそうであるとは思うが、もしがあったらばと少し後悔をする小鳥であったがとりあえず聞かないことには始まらない。

「えっと、どっちですか?」

「どっち、と言いますと?」

「いや山積みの書類と少しの束の書類があるじゃないですか、そのどっちが残っているものなのかと聞いたんですけど」

「ああ、あれは既に終わっています。残りはパソコンのほうで処理するだけなので指差したのはそのパソコンですね。紛らわしくてすいません」

予想外にも二つとも終わっていたようで、しかも残りはパソコンの中のデータの整理らしい。確かにそれならば小鳥の力を貸さずしてもすぐにでも仕事は終わるだろう。だがここまで来て教えてはい帰りましょうでもつまらないので小鳥は無理にでもその仕事を乗っ取って終わらせてしまった。その手腕はとても早く、まだ音無でもその領域には追いつけなくあった。

「コーヒーを淹れたのですが、もう終わってしまったのですね。さすが小鳥さんです」

「長年やってますからね、それなりに早くないと社長に首にされちゃいます」

「それにしてもお早いと思いますよ?ともかくこちらがコーヒーです」

「ありがとうございます」

お茶を淹れるのも普段は小鳥の仕事なので誰かに入れてもらうのは素直にうれしく、ゆっくりコーヒーを楽しむ。いい香りでありながら甘さは薄く、苦味が効いていて香ばしくてとても美味しいコーヒーだった。これだけを飲みに来たと思っても許せそうだと小鳥は思いながら一息つく。

「美味しいですね…私の淹れるコーヒーよりも美味しいんじゃないですか?」

「いえ、小鳥さんのように疲れた身体に最適なコーヒーは淹れられませんよ」

「うふふ、お上手ですね」

「本心ですよ」

軽い調子で話しながら二人で薄く笑った。その雰囲気たるや余裕を持っている大人同士の素敵なお付き合いのように思えていい眺めではある。残念なのはお互いにそれに気づいていないと言うことくらいだろう。

「ではお仕事も終わりましたし、帰りましょうか」

「そうですね、今日はありがとうございました」

「はい、それじゃよいお年を」

「小鳥さん」

「は、はいっ」

「もしよろしければお食事でもどうでしょうか?少し遅い時間ですけれども、お仕事を教えてくださったお礼として」

「食事、ですか?えっ、それは冗談ではなくて?」

「僕はあまり冗談が得意じゃないので、勿論お嫌でしたらそれでいいのですが」

「えっと、そ、その!」

「?はい」

「い、いきまふ!」

「思い切り舌噛んだみたいですけど大丈夫ですか?」

「へいきれふ…」

何はともあれ小鳥もこれで一人寂しく過ごす夜ともオサラバできてよかったと思う。この二人がそこから先に発展するかはわからないけれど、それでも今この瞬間に少しだけ熱を帯びた二人の関係を祝福したい。
2011.01.01 Sat l 自作小説 l COM(2) l top ▲

コメント

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2011.01.03 Mon l . l 編集
原案ご苦労様代わりに感想投下
あらあら小鳥さんよかったですね~。
と素直に云うしかないですね。まあ代理プロデューサーもここまでされて、好意を持たれてないと思うわけがないけど。
でも、実際に小鳥さんがいたら、絶対にモテまくりでしょうけどね!

返事をrunuko@gmail.comに送りました! よろしくお願いします。
2011.01.02 Sun l 月の輪P. URL l 編集

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