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『国家解体戦争』
その名のとおり、国家を解体する戦争、超大規模クーデター。人口の爆発的な増加などの原因に対応できず管理体制が著しく低下した国家を見限り、六大企業全てが総力を挙げて国家に対して奇襲、全面戦争へと勃発。戦争が始まった感覚すらない平和惚けした人類はこの時誰もが国家の勝利で終わると無条件で考えていた。戦争は一ヶ月ほどで終わる。

企業側の圧倒的な勝利で。

そしてあっけなく、潔いほどあっけなく国家は解体され世界は六つの大企業の支配下となる。それも当然、私たちの知らないところで既に六大企業は国家よりも実質的に絶対的な力を有していたのだから、それに国家軍隊程度が適うはずもなかった。
企業側は潤沢な最新鋭兵器の使用、更に三十機にも満たない新型AC(アーマードコア)の導入で瞬く間に国家の戦力を壊滅していった。後にネクスト、オリジナルと言われる機体。完膚なきまでに打ちのめされた国家は反旗を翻すことなく、抵抗といえる抵抗も出来ず壊滅。たった六つの企業に、だ。
GA、ローゼンタール、レイレナード、BFF、インテリオル・ユニオン、イクバール。
国家に代わりこれら六つの企業が世界の管理体制を維持、労力と最低限の衣食住を保障するコロニーによる統治が開始された。自由のない管理体制はまるで奴隷制度。だが人々に蔓延する無気力がそれすらもどうでもいいことだと思わせ、五年の月日が流れた。表面上で保たれていた秩序、しかし敵がいなくなれば敵を作るのが人類であり、当然またその繰り返しが行われていようとしていた。


まだ自分の身体じゃないような気分だ。足が浮いているように感じられるだけでなく、臓物全てが浮き上がっているようにさえ思える。それと相反して体の一部は鉛のように重く鈍く、脳内もオーバーヒート気味だった。
ミッション完了後、すぐに離脱をしてガレージに戻りネクストを降りたところあたりからずっとそうだ。いや、降りた直後はもっとひどく、嫌悪感、吐き気、眩暈、頭痛、耳鳴り、痺れとありとあらゆる悪性症状が乱発した。そちらの症状群もまだ継続中だ。休みたいとは思うが寝れるとは思えない。薬でもあればいいのだが企業が統治するようになってからは碌な自由が与えられておらず薬の売買や全てにおける売買も撤廃、全て六つの企業からの支給となった。薬などは余程のことでもない限りお目にかかれずおかげで私はこの様の状態で休まなければならない。なんなら今回の報酬分を薬代に全てつぎ込んでもいいと思えるくらいには気分は悪い。

「おかえり、律子。大丈夫か?」

「…正直、駄目」

駄目ではあるが私は安堵した。この人がここにいる、つまりそれは私は私の安らげる場所、落ち着ける場所に帰ってこれたんだと確信することが出来るから。先ほどまでは、信じられなかった。あんな戦場にいた自分が平和なこの場所にいる訳がないと思っていた。だがこの人がいるのなら何よりも強い、愕然たる証拠として私は安心できる。

「それじゃこれ、水は多目に飲むといい」

「これは…?」

「薬だよ。精神安定剤、頭痛薬に睡眠薬。とりあえずこれだけしか確保できなかった。悪いな」

「いえ、十分ですよ…。本当にありがとうございます」

「うん。それじゃそれ飲んでもう今日は休みな。たっぷりと寝るといい」

「はい、そうします。それでは失礼しますね、プロデューサー」

「もっとも今はオペレーターだがな。ゆっくりな」

「はい」

おぼつかない足取りで部屋へと向かう。途中何度か倒れてしまおうかと本気で悩んだが活を入れて歩き、どうにか自室へ辿りついた。即座にベッドへ身を投げ出す。堪えていたものが一気に噴出しそうなのを押さえ、なんとか涙だけに留めた。逆に言えば涙だけは止める事が、制御することが出来なかった。当たり前だ。私の知っている世界では恨まれることや憎まれることはあった。それくらいなら日常茶飯事だったともいえる。けれどあそこまでの明確な殺意を向けられたことなんてない。今も私の心を容易く抉るあの殺意。思い出すだけで寒気がして、怖気がして、涙を堪えることが出来なかった。私は一人、どうすることもできず両肩を抱いて只管泣いた。

「…っぐ、負けるな、わたじっ」

負けたくない。負けられない。私はまだ舞台に立ったばかりの新米だ。この舞台で踊り続けることはないが今はそうしなくてはならない。でなければ私が目指す新たなステージへは辿りつけないのだから。例えば怖くとも、立ち向かわなければならない。だから震えるな、私。
…だめだ。このままでは早くもギブアップしてしまいそうだ。そうなる前にこの薬を全部飲んで逃げてしまおう。夢へと、睡眠へと。
私は立ち上がりコップを乱暴に手に取り水を注ぐ。昔ほど美味しいと感じないがあのネクストに乗っている私だ。そのうちそれすらなくなるだろうし、気にはしない…わけではない、わけではないがどうこう出来る話でもないか。自問自答に悲しい答えを出し、ため息一つに薬を飲んだ。さっさと効いてくれると事もないのだが。…しかしプロデューサーには本当に感謝しなければ。薬もなくこのまま休憩していたのなら私はきっと髪も喉も掻き毟って精神を、心をおかしくしていたかもしれない。たった一度の舞台でいきなりボロ人形になるところだった。いや、そもそもプロデューサーが私のオペレーターとしてついてきてくれなかったら、今頃私は。
そう考えながら私の脳みそはやがて覚束なくなり、意識を遮断した。


「ごめん皆。でも私、行くね。また会えたら」

生意気で我侭だけど、とても可愛らしい女の子。それだけを言い残して事務所を去っていった。

「私は勝ち取るわ。私が生きていくために、自分自身でその権利を。さようなら」

凛とした真面目な、それでいて優しい女の子。そう宣言して事務所を去っていった。

「うー…私もみんなを守らなきゃいけないから、その、ごめんなさい!」

いつも元気でみんなを癒してくれていた女の子。少し辛そうにして事務所を去っていった。

他の皆もぽつぽつといなくなっていって、最後に残ったのはどこにもいけない、縛られた私だけ、今例えるなら、そう。私は、縛られたリンクスに成り果てた。それでも私は、私だって、この場所を守りたかったんだ。いつでも誰でも帰ってきてもいいように、またみんなで笑いあえるようにこの場所を守っていたかったんだ。でも。
私は結局ここに一人ぼっちだ。
2011.07.27 Wed l 自作小説 l COM(0) l top ▲

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