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ACfaのss。自分の妄想の中のあの人も出来てきます。










私は、整備士だ。ある傭兵のネクスト機の整備を任されている一人だ。
ネクスト機の整備といっても主要なパーツの感想などはやはりヘリや重機で行うためそうそう近くまで行くことはない。
それでも私のこの仕事が大好きだった。そう言うと皆は決まって目を伏せたりする。別に、なるべくしてなったのだからいいのに。
私は病気なのだ。もう二度と治らない新手の病気、『コジマ粒子の空気汚染における感染病』というのが正式名称、通称は『コジマ

病』
ネクストやその他の実験等に使用される有用でありまだまだ未知の可能性をもつ物質で、その性質は人体や土地、大気における
あらゆる生物、物質、原子にまで悪影響を及ぼす。あのクマムシさえ
「濃度の高い気体化させたコジマを密封させたシャーレの中にクマムシを入れたところ殆どの個体が24時間以内に死滅する」と言わ

れている。
それほどまでにコジマとはハイリスクハイリターンの身を滅ぼす危険な物質なのだ。
にも関わらず私は今でもなお整備士として笑顔で仕事を続けられている。好きなことをしているのだから当たり前だ。
でも私も最初からこの仕事について何も思わなかったわけじゃない。
昔から機会いじりが好きだった私はそこらへんに転がっているジャンクを拾ってきては直してみたり他の機械を直すために
パーツだけ分解して資源として再利用したり、果ては自分でオリジナル機械を作ってみたりといろいろやっていた。
それでもネクストが使用した兵器、及び兵装。ネクストが交戦していた地域のものには怖くて触れられなかった。
この世界は変わってしまった、それと同時に蔓延、肥大化していたくだらない常識や必要なルールはその全てを一緒くたにされ
破壊された。今でも常識、ルールは塗り変えられていくがただ一つ変わらないことがある。

コジマには近づくな。

これが絶対だった。仕事や生きるために仕方なくコジマに触れる人以外はコジマの存在そのものを畏怖していたのだ。
勿論私もそうだった。機械好きでもありネクストに興味があった私でもやはりコジマだけは受け入れられなかった。
そんな私に突然、ほんとにちょっとした日常に言われたあの言葉。

―――あなたは既にコジマ病に感染しています。

あまりにも唐突で残酷な通達に、私は何も出来なかった。でも周りが私を隔離し始めたときにふと涙がこぼれた。
私の隔離はあまりにも迅速で、当然だった。そうしてちゃんと理解するのに一日、なき続けるのにまた一日を費やした。
あとはもう何も出来ない、屍のような日が続いた。どれくらいか、多分半年はそんな無気力な絶望な無駄な日々だったと思う。
そして見事に生ける屍になった私の前に、見知らぬ男の人が来たのだ。後ろの扉の辺りには綺麗な女性もいた気がする。
部屋が薄暗かったのと当時の私に人の顔を注視できるほどの集中力が失われていたため顔は覚えていない。けれど。
その人はたぶん笑ってもいなかったしコジマ病の私を前にしても恐れもしないでいた気がする。ただ淡々と、淡々しく。
一丁の拳銃を渡してくれた。ぽんっと、毛布がかけられだらしなく伸びているだけの脹脛のあたりに投げたのだ。
そしてこう言った。

人手が足りない、ネクスト機の整備士になるならその銃を返してくれ。ならないのなら銃は好きにしてくれて構わない。

理解も出来ず、ただ銃を手に取る。重い、手軽なサイズではあるがその重厚な鎧を纏ったこの武器。きっとその重さの理由は
単純な理由ではない。そう、きっと何かや誰かの命をこの銃は背負っているんだ。本当に、損な鉄くず。
…この銃口をこめかみに向けてトリガーを引けば、私は造作もなく死ぬ。いいや、死ねる。火薬が爆発し、銃から吐き出された鉛球
が私を殺してくれる。恐ろしいであるその事態は私にとっては非常に魅惑的だった。
自然に、銃をこめかみにあて目を瞑る、そしたら後はトリガーを引くだけ、引くだけ、引く、だけ…。

パーンッ!

…吐き出された弾丸は私を閉じ込めていた右手側の窓を貫通して飛び、落ちた。懐かしい硝煙の香り。コジマ病と宣告されて以来の
久しい生活臭。私にとっての生きている実感の臭い。私はその臭いを鼻腔に、肺に目一杯吸い溜めた。

それが答えか。

先ほどの男性が言う。この時点で私の答えは決まっていたけれど、少ししたイタズラ心も思い出した私は。
その人に銃口を向けてこう言った。

貴方を殺せば、ネクスト一機は動かなくなる。私のようなコジマ病患者も減る。ならいっそ、引いてしまいましょうか?

後ろで何かが動く音がするのと同時に男の人が水平に右手を上げ、静止させるようなジェスチャーをした。
すると音のほうからはまた気配がなくなった。それを確認して男の人が喋りだす。

整備士にならないのなら構わない、が俺一人を殺したところでネクストは動く。ネクストもコジマもなくならない。
俺のネクストも他の奴に使われるだろう。結局、何も変わりはしない。

でも貴方が生きていても同じじゃないですか。

そうかもしれない。俺はお前のその願いに対する答えは持っていない、だがそれでもネクストに乗る。

何故?

言う必要はない。おしゃべりはここまでだ、決めてくれ。

ここまで話し合えるんだ、普通の人間同士じゃ出来ないけど結局この人も私もわかりきっていた。
ほら私と男の人はさ、コジマ病患者とネクスト機に乗る人だからさ、普通じゃない。ほらね、もう理由は出来てたんだよ。
そして私は硝煙の微かな残り香が漂う拳銃を男の人に返した。それは私の中で、健全な握手に思えた。

それから私は整備士になった。コジマ病ということは他の整備士には伏せている。けど、あんまり意味はない。
何せ整備士だって近づかないにしろ結局は近い場所で仕事してるから、皆多分もう感染してると思うから。
だから皆何も言わないし、誰も聞かない。それは怖いからって意見が大半だと思う。目を伏せるのはそのため。
私はちょっと違う。怖いのは変わらないし、残念なんだけどでもある意味ではコジマ病にかかったからこそ踏ん切りがついた。
大好きな機械いじりが出来るのはコジマ病のせいで、コジマ病のおかげだから。
原因が発端になって結果となった私はもしかしたら、一番幸せなのかもしれない。だから私は笑顔で仕事が出来るのだ。

私には、恥ずかしながらここにきてから夢が出来た。その夢はやっぱり怖いけど、楽しみな夢。
それはいつか、あのネクスト機にマスクも防護服も着ないで触れること。出来ればいじること。
それが出来たとき、私はもう死んでるも同然だと思う。でも、それでも夢にできちゃうんだ。だって。
コワイコワイって思ってたのに近くで見たら真っ白な天使がそこにいたんだもん、仕方ないよね。
だから私の夢はやっぱり変わらない。いつかその日が来るまで笑顔でずっとこの仕事を続けたい。
油まみれになって、機械臭さと油の臭いと、硝煙の香りを漂わせているであろうあの天使の傍に寄り添うその日まで。

二年後。

「お疲れ様です」

「ああ」

「にしても、本当によかったの? あんな無茶な希望を通して」

「…」

「…あんなことしたら更に」

「承知の上だろう、でなきゃあんな顔で言えない」

「そう、よね。…本当に、私が言う権利なんてないんでしょうけど、虚しいわね」

「…」

「どこへ行くの?」

「任務のとき気になるところがあってな、直で見てくる」

「そんな、まだ帰ってきたばかりでコジマ粒子だってかなりの濃度で…」

「今更さ、気にするな」

「…でも」

「あと一つ、聞いていいか」

「…何?」

「紙コップ二つと、インスタントコーヒー、もらうぞ」

「…ええ、わかったわ」

「ありがとう、それじゃ」

「ええ」


数日後、ある一人の整備士が息を引き取った。誰が悲しむこともないことだが、意外にもその死を悲しむものは多かったという。
コジマ粒子が広がるのを抑えるため念のため死亡解剖が行われた際に、解剖担当は驚きと疑問をもったという。
一つは普通の死体よりもコジマ粒子の濃度が高かったこと。
もう一つは少しだけ検出されたカフェインと、右手に握られていたくしゃくしゃになった紙コップが握られていたことだった。

今日もネクストは戦場へと赴く。悪魔のような兵器でありながら、その姿はまるで天使のようで。
硝煙に包まれた不釣合いな、真っ白な天使のようで。
2011.10.28 Fri l 自作小説 l COM(0) l top ▲

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