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2011/11/11 (Fri) 東終の旅路(仮) 第四話

あまり二人には見せたくない冒険者の日常風景だ。弱肉強食はどの世界でも適用されているようだ。
ドラゴンではないにしろ姿形から見るに今の俺なら油断すれば死ぬだろう。簡単に持ってかれる。

「アホ面のくせにやることはえげつねぇな、せめて殺してから食えばいいものの」

「人間以外の生命体はそんな無駄なことはしないさ。芋虫はもう抵抗できない、なら食うだけさ」

「お前が言うとぞっとしねぇな」

「事実だからな、人間」

「で、でもどうするんですか? さすがにあれと何の理由もなく戦うのはメリットが無さ過ぎますよ」

「んーそうだよなぁ。俺一人だったら戦ってみたいけど二人もいるしな」

「そんなお前らに朗報だ」

「古王さん? どうしたんですか?」

「さっき緊急で依頼がきてな。最近ここらへんを荒らしてる正体不明の怪鳥を殺して欲しいって依頼だ、そして依頼の対象は三日月のように弧を描いている一本の角が生えてるらしい」

そう言われて先ほど降りてきた鳥ドラゴンの頭部を見てみる。言われたとおりの三日月のような角があった。

「こりゃ間違いねぇな」

「この依頼は隣街から来た正式な依頼だ。報酬もここのギルドなんかじゃ滅多にお目にかかれない額で、おまけにあちらさんにも名が売れる。お前らにとっても悪い話じゃないと思うがね?」

「…てゐ」

「サインは私でもいいのか?」

「緊急だからな、大丈夫だろ」

「ならてゐっとな。おうあんこく早くしろ」

「サンキューな、古王。マジで助かる」

「感謝は俺にじゃなくててめぇの運にするといい。お前らには女神様でもついてるのかもな、俺にはいなかったさ。まあ終わったら顔出してくれ」

「ああ」

古王はそのまま街の中へと戻っていった。
ビギナーズラックなのか、はたまた誰かの手のひらの上で踊らされているだけなのかはわからない。
だが依頼を受けたなら冒険者がやることなんざひとつきりだ。

「メイリン、フォロー頼む。多分並みの硬さじゃないだろうから」

「翼ですね、余力があれば腹部に入り込んで叩きます」

「了解した。でも危なくなったら逃げるぞ。冒険者にとって結局一番大切なのは生き残ることだ」

「わかりました、マスター!」

「もう一回お願いします! (からかうなよ)」

「ほ、本音と建前が逆ですよ」

「ああちくしょうミスった! くそ、しまらねーけど行くぞメイリン!」

「はい!」

その声を最後に俺とメイリンは二手に分かれる。俺が右翼、メイリンが左翼。フォロー頼むとか言ってみたがあれだけ強いのなら片側はまかせて平気だろう。戦力になってもらわなきゃな。
…こっちに気づいたな。視点から見るとメイリンのほうだな。あいつのほうが素早いってことか、なさけねぇな。しかしぐだぐだ言っても始まらない、今はこいつを倒すことだけに全力で!

――――――――――――――――――ッ

「ぐぅ!?」「くっ!」

なんて音出しやがる。足が止まる嘶きとかチートすぎんだろうが! 俺はともかくメイリンのほうに向いてるのがまずい。どうする!?

フィィィィィィ、フィィ、フィィィィィィィィィィー

「な、何だ? 途端に身体が軽く」

「思った側から油断とは情けないぞあんこく。あれでも竜族の端くれだろう、竜を殺す気でいかんと逆に殺られるぞ? それとも何か? お前は勝手におっちんで私一人で元の世界を探させる気か?」

「ちょ、てゐさんそれは言いすぎ…!」

「はっ、冗談ぬかせ! こんなところで死ねるか、俺はまだまだ冒険したりねぇ! もっともっと強い奴とも戦ってみてぇ! 何より!」

「…」

「お前ら二人を元の世界に帰すっていう、この世界での最初の依頼はやり遂げなきゃなぁ!」

「っ! あんこくさん…!」

「…上出来だ、さすがドMだな。罵っておいて正解だった」

「ちょっ!? かっこよく決めたのになんでそういうこと言うかな!?」

「いいからさっさと倒してくれ、座るのも疲れたんだ」

「っち、しゃーねーなぁ。そんなわけだ鳥ドラ、わりぃがお前の命、背負わせてもらうぜ!」

―――ッ

「二度も同じ手に乗るかよ! 喰らえ!」

グエェァアアアッッッ!

「ご自慢の音波付きの咆哮も喉叩かれたらでねぇよなぁ! 今度はこっちの番だ!」

あんこくの振るう剣が柔らかな翼膜を裂き、肉を断つ。血生臭さと化け物の叫び声が木霊する。
たった一撃、その一撃で化け物の翼はしばらくは使い物にならないほどにまでなった。
今までここまでの攻撃をされたことがなかったこの化け物がよろめくのも当たり前であり、その隙をメイリンは見逃さなかった。

「行きますっ! てぇいやぁ!」

器用に腹部へと滑り込んだ勢いそのままにメイリンは両手で掌底を打ち込む。常人が打ったとしたらどうともない打撃だが武に長けているメイリンの掌底の衝撃は瞬く間に化け物の腹部に詰め込まれている内臓器官に波紋のごとく拡がる。耐えかねた化け物は口から胃液のような液体を吐き出す。ここまでたった二回の攻撃で瞬く間に勢いを取り戻す二人。
この好機を逃さず更に鋭く一閃するあんこく。片側の翼はズタボロになり、これで飛行は不可能。つまり逃げられる心配はないと踏んだあんこくだった。が、思惑は外れる。
化け物が二人になりふり構わず走り出す。既に腹部から抜け出していたメイリン、翼の辺りにいたあんこくの二人は特にダメージを喰らうことはなかった。しかし化け物が翼を広げると同時に嫌な予感があんこくの脳裏を駆け巡る。

「まさかあの状態で飛ぶ気かよ!? あんだけボロボロなら飛べないだろ普通!」

「掌底も効いてないの!?」

「効いてるさ、だが人間さえ根本的に抱え持っている"生存本能"。こいつらにないはずもなく、その優先度も人間の非ではない。翼がどれだけ痛かろうが飛べれば然したる問題じゃないのさ」

「冷静に言ってる場合か! これじゃあの依頼がオジャンになるんだぞ!」

「所詮はそれまでだった、ということだろうさ」

「ああもうお前はっとにマイペースだな! くそ、間に合うか!?」

走り出すあんこくだったが時既に時間切れ。化け物は血を撒き散らしながらも飛行体制に入っている。飛び立って逃げ出せれば化け物の勝ち。そしてあんこく達にそれを止める術は。

「くそ、だめか!」

「いや、まだあるさ。なあ紅魔の?」

「紅魔のってメイリンのこと…」

「―――かああああああああああああつ!」

叫びと共に大気が振動する。化け物が発した音波とも違う、だが相手を怯ませるに足りる見事な"大声"だった。当然人間よりも耳の良いこの化け物も例外ではなく、自分の咆哮とは違う異質の"大声"に反射的に身構えてしまった。無理を押して飛んでいる体を止めてしまっては最早飛んでいることもできず、案の定化け物は体勢を崩して急降下する。そして落下地点に目を向ければ自分の翼をズタズタにしてくれた死神がいるのだ。最後の力を振り絞り威嚇をするが死神は動じてはくれず威嚇はやがて断末魔へと変わり、ぴくりとも動かなくなった。

「怨めよ、俺もいずれそっちにいく。その時までお前の生、背負わせてもらう」

化け物の首元に突き刺した剣を引き抜きながらあんこくはそう呟く。許してくれとは言わない、運が悪かったとも言わない、ただ怨めよと。

「…難儀なやつだな。いちいちしていたら疲れるだろうに」

「なあに、自分なりの弔いだ。気にすんな」

「おーいお二人ともー! お怪我はないですかー!」

「ああ、怪我一つないぜ。それにしてもおっどろいた、メイリンがここまで強いとはな」

「えへへ、そうですか? 正直、今の私の発で落とせるか微妙でしたけどね」

「ハツってさっきの大声の技名みたいなもんか?」

「そうなりますね、私がそう呼んでるだけなので正式なものじゃないですけど」

「なるほどな、いやでも今回はそのハツに助けられたぜ。メイリン様様だな」

「そ、そんなに褒めないで下さいよ」

「だが実際紅魔ののあれがなきゃ依頼は完遂できず、評判はガタ落ちだった。礼を言うぞ、苦しゅうない」

「それ礼じゃないからな? ともかく依頼完了だ、古王のところに戻ろう」

「そうするとしよう」

「はい」

街に戻りすぐに古王がいるギルド管理舎に向かう。

「I'm thinker トゥートゥートゥートゥトゥ I'm thinker トゥートゥートゥートゥ」

「お前その鼻歌好きだな、さっきも口ずさんでたろ」

「これも癖でな、あっちの名残だと思ってくれ。それはさておきここに来たってことは」

「ああ、ギルド創設のための雑魚狩り依頼とさっきの鳥ドラ討伐の緊急依頼、一気に片付けたぜ」

「上等上等、雑魚狩りと緊急のほうの依頼達成の証としてそれぞれ必要なもんがあるが」

「芋虫の体液五つと三日月角一本、これでどうだ」

「…オーケー文句なしだ。ギルド創設を許可しよう、あとこっちが報酬だ。納品物は俺が預かるからな」

「報酬は確かに…あってるか?てゐ」

「あとで調べておく。ああ、それとこれから金勘定は私がしよう。得意だからな」

「…大丈夫か?」

「私を疑っているのか? まああったばかりなんだから無理もないが」

「金とか数えてる手が荒れたりするし、意外と重いだろ? 平気か? 別に俺も無駄遣いする気はないから全然代わるぞ?」

「…無用だ、気をつけて勘定するさ」

「んーじゃあ任せた、それじゃギルド宿舎にのりこめー^^」

「宿舎? …あーそんなんもあったな」

「そんなんってお前ギルド管理者だろーが? まさか知らないってわけじゃ」

「いやそうじゃない、忘れてたのも事実だが…あーあれだ、掃除道具やら持っていったほうがいいぜ」

「大丈夫大丈夫! ちょっとやそっとじゃ死なないって、じゃあな古王。また依頼のほう、頼むぜ」

「あーハウスダストで死んでなけりゃな。嬢ちゃん達、悪いが掃除のほう頼むぜ」

「はい、わかりました」

「とこいつが言ってるのでな、私もゆっくりしよう」

「掃除道具なら宿屋から借りるか道具屋でもある程度は揃うだろ。宿舎の裏に確かこれまたきったねぇ豚小屋みたいな物置もあるから勝手に使ってくれ」

「ご親切にありがとございます、それじゃまたお願いしますね」

「おう、しっかしこの角、丁度いいな。リザに欲しいから何とか言いくるめて…」

「ほれ紅魔の、行くぞ」

「あっはい!」


「こりゃあ、たまげだなぁ」

「訛ってるぞ」

「こんだけきったねぇと訛りもするさ」

「でも本当に汚いですね…これは本当に誇りで死んでしまうかもしれません」

「図ったな! 古王!」

「古王さん最初に言ってたじゃないですか、お話聞いていなかったんですか?」

「…言ってた?」

「…もう、それだからあんこくwなんて言われるんですよ?」

「名前で相当いじられてる人に名前を突っ込まれた、死にたい…」

「怒りますよ?」

「怒った君の顔も素敵さ!(勘弁してくれよ)」

「むぅ、どうしてそういうことをさらっと言いますかね」

「そういうことって、どういうことだ?」

「てゐさ~ん…」

「紅魔の、治らぬ病気はいろいろある。恋の病から朴念仁継続症、これらに対してはうちの賢者も匙を投げざるを得ないのさ」

「早く特効薬が…でもそれも野暮ですかね、はぁ」

「まあ何にせよだ、私はこんな家の半分は塵で出来ていますもう半分はゴミですみたいなところで寝る気にはなれんぞ?」

「さすがにこれは俺でもきっついなぁ。しかたない、掃除するかー」

「お二人とも掃除できるんですか」

「適当」

「面倒」

「変なところで息ぴったりですね…掃除くらいなら私がやりますよ。そのためには掃除道具と、あとはご飯の材料があれば今日は大丈夫でしょう。お二人は買出しをお願いします、私はその間下準備してますから」

「りょうかーい」

「私もか、疲れているんだがな」

「よく考えればあなた何もしてませんよね?」

「よーしあんこくさっさと行くぞー」

「あちょっとー! 待てってば! それじゃメイリン行ってくるぜ!」

「はい、なるべく早く帰ってきてくださいねー」

「あいよ」

外に出ると回りはもう陽を潜め、重く、暗い世界へと変わりつつあった。この世界での野宿はもう少し先か、そう思うあんこくの少し先に空を見上げる小さな化け兎がいた。

「お嬢ちゃんは星でも探してるのかい?」

「そう、あなたにも見えるかしら?」

「えっ…」

「あの美しい、死兆星が…」

「見えてたまるかー!」

「ハッハッハ、冗談だ」

「いや知ってるよ知ってて突っ込んだよ?」

「突っ込むとは一体どこ」

「さあ掃除道具と飯の材料だなさっさと買って帰るかー」

「…勘違いしないうちに言っておく。私は狡猾だ、故に誰も信用はしていない。お前も例外じゃない、ただ利用できそうだから一緒にいる。それだけだ」

「あん?」

「伝えておきたくてな、本心を」

「そんなんでいいだろ、冒険者なんてやってれば狡猾な卑怯者なんざ幾らでも会えるし。汚い忍者とかな」

「これでもまだ私に協力するのか?」

「ああ、最初の依頼だしな。命の危機さえなきゃ続行するさ」

「なら私が仮にあんこく、お前の命と引き換えに元の世界に帰れる方法を見つけたらどうする? 私は迷わずお前の命を差し出す、ならお前は私を殺すのか?」

「ifの話は考えない主義でな、ノーコメントだ。だが一つ言えるのは、その時次第ってことか」

「随分とお気楽なんだな、あんこくwの割りに」

「あんこくはただの職業だ! 別に性格までネガティブってわけじゃねーさ」

「生と死に関してはまじめそうだがな」

「…まっそれもあんこくだからかもな。長話はこれでいいだろ、道具屋に行こうぜ」

「ああ、そうするとしよう」

道具屋で掃除道具一式と質素なパンと干し肉を買って宿舎に戻る二人。ドアを開けて中に入るとなぜかエプロンと頭の帽子を外して三角巾を被っているメイリンの姿があった。

「可愛すぎる天使かハァハァ(やる気満々だな)」

「お前もヤル気まんまんじゃないか」

「…お二人ともちょっと遅いですよ? でもおかげでエプロンと三角巾を見つけたからいいですけど」

「ふっ、ちょっと夜空の星を掴もうとしてただけさ」

「スターダストシェイクハン」

「それ以上いけませんよ、てゐさん。それじゃ早速掃除しましょうか」

「そういや部屋とかってどれくらいあったとかわかるか」

「大部屋が3つでした一階には一つと手洗い洗面所、二階には部屋が二つです」

「大部屋か、まあこんな小さな街に三つも大部屋があるならいいほうだよな」

「全部空いている今なら三人で分けて使えるな、私はそうさせてもらう」

「なら私とあんこくさんも…」

「別に私に構わず突き合ってもいいんじゃよ?」

「【興味があります】(付き合うだって、そんなことが本当にありえるのか?)」

「却下です! さあさっさと掃除しますよー!」

「先に私の部屋から掃除してくれ、こんな体だと眠くてな」

「そういえば部屋はどうしましょうか?」

「俺が一階で二人は二階だな」

「パンチラでも見たいのか?」

「俺が一階なら何か会ったときでも俺が対処できるだろ? 経験豊富な俺のほうが下にいたほうが対処もしやすいだろうしな」

「経験豊富とは笑わせるな、えぇ? 大方、柿ピーのどっちかくらいの大きさだろう?」

「そっちの経験じゃね! ていうかそんな小さくもねぇ! 仕舞いには見せるぞ!?」

「見せられたところでどう思わんし、私の形で泣きながら駆け込んでもいいんだぞ?」

「ちくしょう、それは卑怯だろ!? 心は助平な化け兎なのに形がこれとか反則すぎる…」

「役得だ」

「理不尽だ! そんなもののために何人の崖下紳士が犠牲になったと思ってやがる!」

「奴らが死んでも、変わりはいるもの…」

「割とそうだけどどんな虫にも一寸の魂があんだよ! あんなゴミクズでもな!」

「私の好きな言葉にこんな言葉がある。Dust to Dust 塵は塵に」

「あっそれかっこいいな? 俺も今度から使っていいか?」

「却下だこのDust野郎」

「なんだと! Dustっていう奴がDustなんだよ! やーいこのDust幼女!」

「…私はあなた達をdo not care a bitで掃除してきます。ええ、Dustを抹消しにね」

「…なあメイリン怒ってなかった? それにさっきの英語は」

「do not care a bit(ちりほども気にかけない)だな。洒落てるじゃないか、ハッハッハ」

「一階の掃除はまかせてくださいメイリンさーんすいませんでしたー!」

それからたまりに溜まった埃やDustを徹底的に排除するメイリンとあんこくだったが部屋数の差で当然あんこくのほうが先に終わる。あんこくはそのまま掃除したての台所で準備を始める。

「ほう、あんこく。お前料理出来るのか」

「簡単な奴な。ただ素材を焼くだけだとか、簡単な調味料振り掛けるだけだ。質より量、量より食いやすさだな」

「成る程な、期待しているよ。少し埃を吸いすぎたので外の風に当たってくる」

「気をつけろよ? 誘拐されるなんてイベントだけは勘弁だからな」

「ハッハッハ、善処しよう」

「しないでくれ、出来たら呼ぶ」

「ああ、そうしてくれ」

身を起こし、ドアを開け、外に出る。冷たい夜風が頬をくすぐる。少し肌寒く感じられる、それに常に近くにあった緑の香りはせず代わりに様々な所からにぎわう声、焼けた肉の香りが漂ってきていた。外にいてもあまり自然を感じられなかった。
今頃あちら側での知人や友人はどうしているか。果たしていつ帰れるのか? 原因もわからぬままただ異世界に残され、素性の知れぬ冒険者とそれほど知らぬ同じ世界の妖怪となぜか徒党を組むことになった。お笑い種だ。

「おいおい、嬢ちゃん? こんな時間で一人で出歩くのは危ないぜ~?」

「おいやめろよ、通報されるぞ」

「…」

酒臭い男二人が近寄ってくる。これも冒険者だというのか、あの青二才でもここまでひどくならないだろう。少しは見習って欲しいものだ。

「喉でも渇いてないかー? 今なら俺の特製ミルクをしぼりたてで飲めるぜ~?」

「うわーこんな子に下ネタとかないわー」

「飲んでやってもいいが覚悟はあるんだろうな? 兎にそんな話をする覚悟は」

「あははーそうだねーウサミミつけるもんねー、ウサちゃんは寂しいと死んじゃうの~」

「ああ寂しいな。お前の粗末なものを相手にするだけとは寂しい限りだ」

「ああっ? 聞き捨てならねぇな、誰が粗末だって? こんないい男捕まえてよー」

「あーらら、怒っちゃった。嬢ちゃん謝ったほうがいいぜ? こいつ怒ると無茶するからな」

「はっ、防具も愚息も皮被りの二人組み風情が無茶したところで暴発するだけだろうな」

「…おい、いい加減にしろよクソガキ」

「そうだなーちょっと口が過ぎるぜ? なんならお前の言う愚息で塞いでやろうか?」

「やってみるか三下共? 粗末で愚かな腐ったミルクしか出さないんだ、噛み千切ってやってもいいぞ?」

「てめぇ…!」

―――おーい、飯だぞ。さっさと戻ってこーい。

「おいやめろ、中に知り合いがいるみてぇだ」

「…っち、命拾いしたな。いやちと違うか? まあいい、次ふざけたこと言ったら容赦しねぇからな」

「わかったわかった。悪かったよ、本当のこと言って傷ついたのだろう? よちよーち、ってなあ?」

「…これからは一人で出歩くのは気をつけたほうがいいぜ」

そう吐き捨てて背を返して男達は夜の街へと消えていった。

「…ふむ、Dust to Dustの使い道は今だったか? いや、塵ほどの価値もないか」

「おい、いないのかーっているじゃねぇか。飯できたからさっさと中入れ」

「ああ、そうだな。そういえば飲み物は?」

「あっ何にも買ってきてねぇ、ちょっと買ってくる」

「私はお前のしぼりたてのミルクでもいいが」

「あんた! そんな言葉どこで覚えてくるんっ!? 大人しく中入ってまっときっ!」

「怒りのあまり母親っぽくてなってるぞ」

「いいから、後は皿に乗せるだけだから任せたぞ、じゃ」

「おい私に手伝わせる気…たく。これは帰ってきたらそれなり報酬が必要だな」

だがまあ、あっちに帰るまでは退屈はしないか。そう思いながら宿舎に戻るてゐだった。

「ういっと」

「留守番と盛り付け代で100の十乗分のヴァルだ。払えないのならつけといてやる」

「帰って早々ありえない借金を背負わされそうになりました、死にたい…」

「なんなら体で払ってもらっても構わないが、覚悟したほうがいい」

「なにその逆パターン。意外通り越して絶句した、そんなわけでメイリン呼んできますね^^」

「呼んだんだがな、あと少しで終わるだそうだ」

「すぐ終わるなら俺の無駄足で終わるし、そうじゃないなら手伝えばいいという理論で俺の勝率は100%だった」

「お優しいことで。だがこっちも腹が空いてるんでね、早めに頼むよ」

「先に食べててもいいぞ」

「釣れないこというなよ相棒」

「悪かったよ相棒」

軽口を叩きながら階段を上がると廊下の隅で雑巾を絞ってるメイリンがいた。

「おーい、飯だ飯。さっさと食べて今日は寝ようぜ」

「あ、はい。こっちも丁度終わって道具を片付けるだけです」

「そうか、じゃ道具貸して」

「? 何か掃除残りでも? なら私が」

「いやバケツ水入ってるから重いだろ? それに埃まみれの雑巾を冷水でしぼるなんて肌に悪いだろうし、後片付けは俺がやっとくから飯食べて先に寝な」

「そんなこと気になさらなくても」

「気になる性分でね、勝手にやらせてもらうぜ」

「…ではお言葉に甘えて料理のほうも頂くとしましょう」

「そうしてくれ、あ! 味は期待するなよ? 腹に入って手軽に食べれる調理しかしてないからな?」

「いえ、これだけいい匂いならきっと美味しいはずです。焼き加減なんかはばっちりってことですよ。男性それだけ出来れば大したものです」

「それほどでもある(それほどでもない)」

「あとはその本音と建前が逆になる癖さえなければ女性も放っておかないと思いますよ?」

「マジで!? 全力で治す! うおおおおおおおおおお!」

「ちょっとあんこくさん! そんな勢いで階段を下りたら危ないですよ! んーかっこいいのかそうじゃないのかよくわかりませんね」

そう言った後にメイリンは少しだけ笑い、足取り軽く階段を下りるのだった。

「御膳様の前で暴れるなど、お前には山ほど説教がある。そこに直れ」

「ついてねえ! ついてねえよ!」

「まあまあてゐさん、あまり説教しているとご飯が冷めますよ?」

「…いいだろう、お膳様と紅魔のに免じて許してやる私は優しいからな他の奴にも伝えるべき」

「って言っておかないと面倒だからな…(hai!)」

「間違いすぎる…修正が必要だ…」

「アッー!」

「…先に食べちゃいますよ?」

「なに、イレギュラーは排除した。早速食べるとしよう」

「そうだな、冷えちまったら美味しくないしな」

「あんこくさんタフですね」

「慣れた」

「えっ」

「一日で慣れた」

「…すごいあんこくです」

「何はともあれ命に感謝し、いただきます!」

「ああ、いただきます」

「いただきます!」

ハム! ハフハフッ! ハフゥッ!
理想のテンポで食事を終えた三人、メイリンとてゐは二階へ、あんこくは一階で道具の片付けをしていた。
今日の緊急依頼のおかげで恐らくは自分達の名前も向こう側の街に少なからずは届いているはずだ。更に運がよければ向こう側の街にも入れるかもしれない。そうすれば更にあの二人を元の世界に返せる可能性も高くなる。逆に言えばこの街には帰れる手段がないのは明白に明瞭。どうあっても次に進まなくてはならない。

「だが、運が良すぎる。まるで与えられたかのようなチャンス、それに丁度三人で運良くギルドも三人設定、更に同時に違う世界から来た三人が一堂に会する、きな臭さ抜群だなこりゃ」

しかし、いくらきな臭くても進まなければ何も見えないし、掴めない。怪しかろうが危なかろうが用意されたものが自分達にとって害がないのならそれでよし、あるのなら斬り伏せて進むのみ。それが。

「冒険者、だからな。よし道具清掃も終了、俺も寝ますかね」

そう一人考えを改め、床に就くのだった。

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Author:流ぬこ
自個偽無、候。
書いたり書いたりしている流ぬこです。
ピクシブなんかでも同じく流ぬこで書いています。
はじめの一歩を見るとオズマ戦でも小橋戦でもどの戦いでも泣けます。はい。

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