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2011/11/11 (Fri) 「紅茶」 ―サイネリ―

―――ワタシは、今、紅茶のお風呂で遊んでいます。そう、それはそれは、深い深い真紅色の紅茶のお風呂。

ピチャピチャ、肌を滴りつたい落ちるあの雫はまるでワタシのようです。ええ、堕ちるところまで堕ちてしまったワタシのように。

ワタシの背中にソフトベージュのような長い髪が張り付いて、ぺたっと。まるで封筒に切手を付けるみたいに。誰に宛てたものかはわからないけど。

お風呂と紅茶とワタシ、それだけが存在している真っ白な空間。縦も横も、奥行きも、時間も、全ての有象無象は存在なく。あるのはお風呂と紅茶とワタシだけ。

紅茶のお風呂にふと浮かんだティーカップ、これまた紅茶が入った綺麗な花の模様が入ったアンティーク調のティーカップ。つつましいサイズはワタシの胸みたいで。

波打っているカップの先に唇をつける。ワタシながらとても柔らかい唇で少しだけカップの先をはむっと。少し照れくさいかな。

そのまま音を立てないで口の中へ。紅茶、あーるぐれい? それともにるぎり? あるいはもっと違うのかもしれないけど、ワタシがしっているのはえるめすだけ。

お風呂の紅茶に浮いていたシルバートレイにわざとかちゃっと音を鳴らしてティーカップを置く。ワタシの入浴はまだまだツヅク。

少しだけ唇に付いた紅茶の雫、ワタシの体を這いでつたった紅茶と同じ、少しだけ違う紅茶の雫をぺろっと。なめてみた。あまい、あまい。

気が遠くなるほどあまくて、甘美で。途端にしぶい、しぶい。うん、まるではーどぼいるどのようなしぶみかな。でもぶしょうひげはまだちょっとだけノーセンキュ。

お風呂の紅茶にワタシが入って、どんな味なんだろう。手ですくって紅茶たまりになった紅茶をネコがするようになめてみる。ぴちゃ。

さっきと一緒の甘美としぶみ、でも少しだけ苦さとしょっぱさがあるよ。きっとワタシの汗なのかもしれないな。

紅茶は、砂糖をいっぱいにいれる。紅茶が紅茶でなくなってしまうくらいに、あまくあまく染めてしまう。だからきっとワタシの紅茶はとってもあまい。

ワタシが淹れた紅茶は口がふやけてしまうくらいあまいのにどうしてだろう、ワタシが入った紅茶は少ししょっぱいのだ。不思議だ。

誰かが淹れてくれた紅茶はね、あまり好きじゃない。なんだかどれも似通っていて、どれも同じ味しかしないから。

砂糖1杯、ミルク1杯、レモンはひとかけら。いち、いち、いち。そればっかりで同じ味、同じ人。ワタシには少し物足りないの。

砂糖一杯、ミルク満杯、レモンはそのままどぼーんと入れちゃえばいい。断りないでこれがワタシの味なんだよってみんなに自慢すればいいのに。

みんなそんなことしないで、同じ目をして同じ味の同じ紅茶を淹れるんだ。ワタシにはそれが少し窮屈に感じるんだ。

ワタシは紅茶のお風呂で遊んでいます。手と手のひらを合わせて、紅茶のみずでっぽう。えいっ、ぴゅっ。白い空間に向けてうった弾はなくなってしまった。

紅茶のお風呂はワタシの心を癒してくれる。それはあまいから、時にしぶいから、それとも綺麗なあーるぐれい色だからかな。

きっと誰にも聞いても答えは返ってこないそんな疑問、でもね、ワタシにとってそれはとても大切な疑問。ワタシがワタシであるための疑問。

紅茶の色があーるぐれい色から綺麗な綺麗なスカイハイ色、うーんブルーハワイ色かな。とってもかきごおりが食べたいな、キンキン。

こんな色の紅茶は見たことないけれどワタシはこれが紅茶だと思う。でも他の人に聞いたらきっと紅茶じゃないって言うんだろうな。

最初にそういった人に続いてみんなも言うの、うんあれは紅茶じゃないって。だってこんなにも真っ青な紅茶なんて存在しない、ばかげてるって。

飲みもしないで、そうやって決め付けるんだ。なんだかとっても理不尽ですね。だからワタシは少しふくれながら勢いよく蒼い紅茶の海へ顔をダーイブ。

ぶくぶく。ゆっくり目を開ける。やっぱりね、ほらね。中を見てみればまた素敵なあーるぐれい色だ。ちょっとだけ顔を上に向けたら蒼い色ですけどね。

ワタシの柔らかい唇の端から気泡がするんと抜け出た。上に行けばいくほど蒼くなって、いつかは弾けて散る。ぱーん。中にはワタシのふくれた頬にあたって、紅茶中で、ぽんっ。

ワタシは絵本でみた人魚のようにこれまた勢いよく顔を上げた。きっとその一瞬のワタシは髪が後ろにばーってなって、やわからな表情で、まつげもちょっぴり長めに見えたはずです。

首から足の先まで、体育座りをしているワタシはそっと指でつつーっとなぞって見る。首、鎖骨、胸、お腹、股、ふともも、ふくらはぎ、足の甲、足先。

Uターンするときは腕から肩、首に唇、最後に鼻。そして帰ってきた左の薬指をなめてみる。やっぱり、苦い。ワタシらしくないですね。

そのまま左の薬指をちょっと強めに紅茶面にぴちゃ、そしたらまーるい紅茶の波紋がお風呂いっぱいに広がる。うん、すごく綺麗だ。すごく綺麗、ワタシの気持ち。

そろそろ出ようかな、このままじゃわたしは紅茶になってしまう。うんそれも悪くないけれど。ワタシが紅茶になっても誰も喜ばないよ。

紅茶は綺麗であるべきものなんです。紅茶は、そこにあるだけで一つの雰囲気になるんです。インテリアにもなるんです。そんな素敵で綺麗な存在なんです。

ワタシは紅茶になんかなれません。だってワタシが入った紅茶はこんなにも苦いんだから。こんなに苦い紅茶は、それこそ紅茶じゃないんです。

ぴちょん、紅茶じゃない、ワタシの涙。いけない、綺麗な紅茶がワタシの涙で汚くなっちゃう。いやだいやだいやだ、泣き止まないと。

でも原因不明の涙の雫が止まらない。手で顔を覆ってもその間からするりするりと抜けていく。だめだめだ、こんなのいやだ。でも止まらない。

いつの間にか、いつの間にか雨が降っていた。土砂降りで、土砂降りで。ワタシの胸を半分隠していた紅茶かさがみるみるうちにあふれ出す。綺麗な紅茶があふれ出す。

振らないで降らないでふらないで、ワタシは立ち上がり精一杯に両手を何もない空間に伸ばした。でも、とまらない、ワタシの涙も、この雨も。

ワタシはあきらめて、膝を抱えた。その間もずっと雨は降る。ずっとずっと降る。ワタシの涙も、止まらない。ああ、ひどいなぁ、神様がいるならとってもひどいなぁ。

ぱさっ。

ほんの少しだけ聞こえた何かを置く音、顔をほんの少し左に覗かせるとタオルがおいてあった。すごく、すごーく小さなタオル。なんだか見てるこっちが守ってあげたくなるような、そんなタオル



ワタシはそれを手に取れなかった。でも、そのタオルは震えながら雨に打たれながら、ずっと私の横にいてくれたんです。だからワタシも、ちょっとだけ勇気をだしたんです。

そのタオルを手にとって、涙を拭くとワタシの涙も空から降りしきる冷たい水もぱたっと止まりました。すごくすごく、ワタシはそれが嬉しかった。

でももう紅茶のお風呂はなくなっていて、ただの水風呂になってしまって、とても寂しい。また少し泣いてしまいそう、そうしたら。

ふぁさ。

すごく小さかったタオルが大きくなって私を包み込んでくれた。柔らかくて、暖かくて、優しくて、良い匂いで、でも力強く抱きしめるように。

言い過ぎかもしれないけど、ワタシにとってこのタオルはマザーテレサなんかよりももっと優しい、そんな自慢なタオルに見えたんだ。

タオルは瞬く間に大きな鏡になりました。ワタシの全身を映してくれるほど大きくて、ワタシはワタシと対峙したんだ。でもぷっと吹き出した。

どこにでもいる顔、平凡な胸、中肉中背の体、だけと少しお腹周りがぷにっとしていて、顔にはそばかすがてんてんと。そんな絵に描いたようなワタシを見てワタシは笑う。

笑うだけ笑ったら、こうやりきった顔で、よしいくぞって柔らかに、でも力強く決断する顔つきで鏡の前で片手でピース。

どれもこれも一糸まとわぬ私だからすこしおまぬけに見えるけどね、でもね、それもワタシだって思うから。

ぴちょん。

ワタシの前髪から雫が一滴だけ、スズメの涙みたいな一滴が鼻に落ちた。ワタシはそれを両目を寄り目にしてきょろと見て右手の小指にすいとって、またなめる。

うん、とってもあまい。とっても、甘い。ワタシの体に触れたのにとってもあまい。ああうれしいな、うれしいな。まだ大丈夫なんだ、うれしいなぁ。

そうしてワタシは満面の笑みで笑う。どこかわからない、ううんもうしってるけどね、そんな場所で―――。


「――ネリア、サイネリア?」

「…ン」

「大丈夫? 急に落ちてみたいだけど、寝不足?」

「…いえ、そんなことないですよ。でも、不思議な夢を見ました」

「夢?」

「はい、紅茶のお風呂で…遊ぶ夢です」

「紅茶のお風呂の夢…もしかして、これが原因?」

「ああ、そういえば先輩に淹れてもらってましたね、紅茶」

「うん、美味しかった?」

「はい、とってもとっても…甘くて美味しかったです」

「甘すぎたかな? でもこれが私なりの味?」

「いえ、美味しかったです。それに、綺麗で、素敵で、暖かくて…」

「後半聞き取れなかったから、もう一度?」

「いいえ、なんでもないです。はい」

「そう、でもなんでサイネリアは泣いてるの?」

「はい? あれ、ほんとですね。泣きたいことなんて…ないんですけどね」

「でもサイネリアの涙、すごく綺麗」

「…そんなことないです。先輩のほうがもっと綺麗ですよ、きっと」

「そんなこと、ない? それよりもそろそろ秋葉原に行こう?」

「そうでしたね。…はい! では行きましょうか、センパイ」

「うん。その前に、もう一度聞いていい?」

「はい、どうぞ」

「紅茶、美味しかった?」

「…はい! 甘くてとっても美味しかったデス!」

「…ありがとう、それじゃいざ出陣?」

「おー!」

美味しいに決まってるじゃないですか、だって先輩が淹れてくれた紅茶なんですから。
センパイが部屋を出て、ワタシもそれを追おうとして少しだけ待って、紅茶のカップの取っ手を親指と人差し指で掴む。ちょっとだけ気取ってみたくなったんデス。
そしてワタシは、私はそっとカップを置いて先輩を追いかけます。大好きな、絵里先輩を。

―――その時置いた紅茶のカップの音は、あの夢と同じで。

















カチャ。























カチャカチャ、カチャカチャカチャ

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Author:流ぬこ
自個偽無、候。
書いたり書いたりしている流ぬこです。
ピクシブなんかでも同じく流ぬこで書いています。
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