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2011/12/13 (Tue) 日高舞

日高舞





当時の私にライバルなんていなかった。あらゆる意味で、私の隣に並んで戦おうとする人はいない。誰もが私を上から見上げるだけだった。
妬ましい目、羨ましそうな目、敵わないと勝手に決め付けている目。私が視線をやると一斉に皆目をそむける。だから私は一人でアイドルの頂点になった。
うちの娘は違った。同じ事務所に高めあえる仲間がいて、他の事務所には輝いているアイドル達がいっぱいいた。だからこそあの子はあそこまで大きくなれた。
私にはなかった羨ましい環境だ。だって皆敵だけど、励ましあったり、そこらへんの喫茶店で話したりも出来るんでしょ? 私にはそんな子一人もいなかった。
みーんなへいこらしちゃって営業にでも来たのって何度尋ねたことだか。失礼しちゃう、私はただ話をしようと思っただけだったのにね。
それであの子ったら帰ってくるたびに今日はどうだったとか、アイドルの話ばかり。私が元アイドルだって知ってるくせに、どこまでも素直な子。
誰に似たのか、あっ私か。あの人は別に素直でもない、というか捻くれてたたし。どれくらい捻くれてるかというと私があの子を生んでから失踪したことかな。
あの時は笑った笑った。産み立てでお腹休めなきゃいけないのに、お腹痛くて涙出たわよ。本当に、ね。
あれから十三年経って大きくなったあの子を見るたびに疼くある決心。もう二度とアイドルはしないという決心。だってつまらなかったもの。
つまらなかったけれど私はそれでも頂点に立った。皆がどれだけの努力をしたかはしらないけれど私はそれら全て蹴散らして頂点に立った。
少しのレッスン、お手軽営業、派手なTV出演、生涯でたった一曲だけの私が愛した私の歌。今ではあの子の持ち歌なんて言われてるけど、そんなことない。
だってあれは私の歌だもの。あの子が歌っているのはまた別の曲。私のと一緒ではないのに、世間はそれに気付けないでいる。
私は私、あの子はあの子でどうして分けられないの? どうして日本ってのは一緒になりたがるの? そんなに一緒になりたいなら溶けてしまえばいい。
溶けてドロドロになって他の人と混ざり合って生きていけばいいのに、無駄に個を保ちたがる。そのくせ目立つのは嫌。矛盾という言葉がなかったら日本人は表せないじゃない。
私はそんなの嫌。だから私なりのやり方でアイドルになって頂点になった。でも私がやめたあと皆は一瞬だけの変わり者に人気が集まっただけ、だってさ。
そうしないと食べていけないのはわかるし、別に他人からどう思われたって構わない。けどあの子と一緒にされるのはお門違い。
私は、私の子供にだからって負けたりしない。世間ではもう親を超えた子! だとか騒いじゃってるけどね。
……そう考えるとちょっとムカっとしてきた。何か私達親子がアイドル業界の良いダシに使われてるみたいじゃない。それだったら悪徳記者の痛快なゴシップのほうが面白いし正しい。
決心が揺らぐ。これだけは守ろうと決めていた決心が、歯茎が緩んだ奥歯のようにグラグラする。料理をしていた私は止まる。
お味噌汁が入った鍋が吹き零れる、寸前火を消して、私の心に火を移した。決心は揺らぎそのまま折れた。もう一度だけ、もう一度だけ。
「今度は、私が夢見たアイドル、楽しめるわよね?」

それからものの一週間で私はフリーアイドルで再起した。周囲の反応は、賛否両論千差万別。あの伝説のアイドルの復帰を喜ぶ人もいれば、時代遅れではないかというコメンテータリー。
頭と知識しかない人達は言うことも楽しくないわね。多分ブランドだからお洒落って思っちゃう人達なんでしょうね。
ブランド物は決してお洒落のメインじゃなくて、ワンポイントなのに。だからコメントも今ひとつのポイントずれてることしか言えないのね。
まあいいわ、見せてあげるから。時代遅れ? 私の力が、あの時の精一杯だとでも思っているのかしら。こちらとら退屈しすぎて力の半分も出していないって。
でも今は全力でぶつかってもいい子達がわんさかいる、ようやく時代が私に追いつき始めたのよ。まあそれも並みのスピードならまた置いていくけどね。
世界は地球に留まっていればいい。私は太陽まで行ってあげる。日高舞の名の如く、太陽のその先まで高く舞って見せてあげようじゃないの。
それから私は何人ものアイドルと戦った。確かにみんな私よりも若い子達だけど、別に歌でも踊りでも容姿でもお肌でも負けてない。なら平等でしょ?
最初のうちは私と一緒のオーディションに受けに来た子、みんな死んだ目をしていた。危うく結局同じじゃない! って思ってやめるところだったわ。
でも、高槻やよいちゃん? だったかしら。あの子と戦ったときは楽しかったな。私に負けて落ち込んでるのに、他のアイドルにも挨拶して私にも挨拶しにきて。
確かに身長的に下から見上げられたけど妬ましいとかいなきゃよかったとかそんな目じゃなくて、純粋に感謝を込めた目。思わず感動しちゃったわ。やっとここまでの子がきたかって。
それから765プロの子達とは戦い続けだ。眼鏡の子、臆病な子、男の子っぽい子、金髪毛むくじゃらの子、普通の子。
876プロの絵理ちゃんと涼ちゃんとも戦ったわね。どの子もみんな可愛いくて綺麗で、素敵な子達。でもまだ未成熟、もう少し熟成した状態で戦いたかったわ。
でもね私をわくわくさせてくれる子がいたのよ、二人ね。どうしようもない鼓動の高鳴りに恋しちゃったのかと勘違いしちゃうくらい!
一人は如月千早。歌の天才と言われている彼女と始めてあったとき感じ事のないオーラを感じた。私とも違う圧倒的なオーラ。でも胸は小さいから私の勝ちね。
もう一人は私の子、日高愛。まさかここまで成長してるとは思わなかった。我が子ながら天晴れよ。でもまだまだ母親には敵わないのよ。ほら、この子は私のおっぱいを吸ってきたんだしね。
如月千早、日高愛、そして私日高舞の三人。共に得意はボーカル、歌。千早ちゃんもあの子もニュアンスは違うけれど、真っ直ぐな歌い方をする。
なら私はどうする? 同じ土俵で戦うに決まっている。ビブラートなんていらない。技術なんていらない。
二人の迫力ある声を、迫力をもってして圧倒する。素敵じゃない? こんなに素敵なことが起きて、幸せでいいのかって思うくらい!
そして私達三人が出演するライブ『ボーカルバトルonステージ』開催、それぞれがありったけをこめて歌いきる。あの子なんて私が出るからーって気合入れすぎちゃって歌った後失神しちゃったし、千早ちゃんもいつも異常に上手くて思わず鳥肌立っちゃった。
ちなみに千早ちゃん、その後裏で立てなくなってたのよ? これだけ二人のありったけを見せられてワクワクしないわけがないじゃない? 最後だからなんてくだらないものプレッシャーにもならなかった。
むしろ最後に劇的な歌い方をして勝利を飾るなんて素敵じゃない! そう思って舞台に立った。歓声なのかブーイングなのかわからない声の塊。
私は一歩も動かない、歌が始まるまで呼吸もしない、顔も上げない。だって『ALIVE』は本来そんな歌じゃないもの。あの子のように歩き回るような歌じゃない、千早ちゃんの『蒼い鳥』のように悲しい歌じゃない。
この曲は、唯一私についてこれる曲なのよ! 今それを見せてあげる!
って思って歌ってたらいつの間にか歌い終わってて、終わった瞬間一瞬だけ意識が消えてなくなる。『ALIVE』に吸われたんだろう、生気を。
そして私は獲得する。アイドル業界きっての二人のボーカリストを打ち破りまた頂点に立った。伝説なんかじゃ終わらせられない。
故に私は喧嘩を売る。私を貶した世間に、私に追いつかない世界に。

「これが私よ! これが日高舞なのよ! 負けて悔しいのなら勝てるまで努力してかかってきなさい!」

世界に喧嘩を売る都合上、全世界のアイドルにも喧嘩を売ってしまったけれどまあいいわよね。だってそっちのほうが楽しそうじゃない!
どんな奴が相手でも叩きのめしてあげる。
だって私、日高舞だもの。

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Author:流ぬこ
自個偽無、候。
書いたり書いたりしている流ぬこです。
ピクシブなんかでも同じく流ぬこで書いています。
はじめの一歩を見るとオズマ戦でも小橋戦でもどの戦いでも泣けます。はい。

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