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鈴木彩音





「あら、やっと起きたね。固いイスでよくもまあ寝てたものだね。でも私が拾う前は君、とんでもないところに捨てられてみたいだったからね。つい拾っちゃったよ」

………

「あらあら、だんまりかい? 別にいいけどね。感謝されたくて拾ったわけじゃないからね、好きにしてなよ」

………

「ここはどこかって? どこからどうみたって喫茶店じゃないか。コーヒーの香りと軽食が出てくるお洒落な喫茶店。夜になればお酒も取り扱ってるけどね」

………

「外人、私が? それは私が綺麗だから、それとも単に金髪で長髪だから? どっちかな、いってごらん?」

………

「どっちも? あはは、照れてる割には上出来上出来! 頑張ったご褒美に今からコーヒーとベーコンエッグトースト付き、奢ってあげよう。お姉さんに感謝するんだぞ? でも君猫舌っぽいね」

………

「そんなことないって目で見なさんな。だって君まんまそんな顔してるじゃない。ついそう思っちゃったのよ。卵はどうする? とろとろにする? 固くする?」

………

「半熟とはグルメだね。注文されたからには最高の半熟目玉焼きを振舞ってあげるからねー。ちょっと待つといいアルねー」

………

「後ろ姿が主婦みたい? それは褒め言葉として受け取っていいのか老けていると見られているとして悲しんでいいのか。でも褒め言葉として受け取っておくよ」

………

「お客さんがいないって、そりゃね。まだ開店前だし。開店前も前だから他の人もこないしねー何せまだ五時だし。仕込みにしたって今日は早すぎるくらいだよ」

………

「早いのになんでいるか、んー気分だね。今日は早起きしたし、何となく店でまったりしてたかったから早めに来たってわけ。そしたら君が捨てられててびっくりしたんだよ、正直疲労かどうか迷ったけどこれも何かの縁だと思って拾ったの」

………

「そりゃいつまでもいさせるわけにはいかないよ。出来るなら開店までには出て行ってもらおうかと思ってる。私は別に親切じゃないし、優しくもないんだよ」

………

「これだけしてるんだから親切だし優しいって? んー気まぐれだからね、でも君にそう見えるのならそっちのほうがいいんじゃないかな。うんうん、その通りだよ」

………

「開店は八時から。最初はほとんどお客さんこないからさ、まったりできるんだよねーお昼くらいまではお店で流してるジャズだったりケルト音楽を聴きながらお店の掃除とか、マグの手入れとかミルで試し引きしてみたりね」

………

「別に儲かりたいからって喫茶店始めたわけじゃないからね。ただ、ここが誰かの休憩所になってくれればいいなって思って始めた道楽みたいなもんだよ」

………

「そう、休憩所。人は誰しも休まなきゃいけない時がある。頑張るときがあるようにね。でもたまーにどこで休憩すればいいかわからなかったり、周りの環境のせいで休憩出来なかったりする人もいるわけだ」

………

「いるから始めたの。最初はある個人のためだったんだけどね。今すごく楽しいんだけど、どこで休んだらわからないって言われてさ。それじゃ私が休憩所になります! って勢いで言っちゃったらすっごい目を輝かせてありがとうって言われて引くに引けなくて、それで今に至るのだ」

………

「まあ最初は辛かったよ。朝早いし自分で何でも判断しなきゃいけないし、料理も別に上手いってわけじゃなかったから割と失敗したりして。普通に入ってきたお客さんが悪魔に見えて仕方ない時期があったよ、懐かしいなぁ」

………

「そうだね、続けられた理由か。やっぱりみんなが来てくれた事かな? ここは最高の休憩所だって言ってくれたの。それがうれしくってね、ここまで頑張っちゃった。そしたらバイトさんとか雇えるようになっちゃってね。初期のころは親から資金援助してもらってたけど今は何とか自力でやっていけてるよ」

………

「場所が場所だからだよ。見つけるのも一苦労だからさ、ここ。君もここを一度でも出たらもう二度と帰って来れなくなると思うよー、っとトーストとベーコンエッグお待たせ! 最高の半熟具合だよー」

………

「何か調味料使う? 醤油からタルタルソースまで何でもござれだよーってもう食べ始めてるし! 味ないでしょ? 下味に塩だけ振っただけだよ?」

………

「上手いって、変わった子だねぇ。でも喫茶店ではあるまじき豪快な食べっぷりは気に入った! ご褒美にティッシュで口元を拭いてあげよう」

………

「はいはい逃げない逃げない。すばっしこいんだから、すぐ終わるからじっとしててね……はいできた。美味しかった?」

………

「ローストビーフのように濃厚だったって、私そんなもの食べたことないからわからないなー。いや、反抗期あたりではでてたのかもしれないけど」

………

「あーううん、こっちの話。女は秘密を持って美しくなるのだよ。それを暴こうなんて無粋だからしないように、ね?」

………

「素直でよろしい。それじゃコーヒーを淹れてあげよう、砂糖とかミルクはどうする? 多めにする?」

………

「砂糖抜きミルクたっぷりって、だったら牛乳飲む? いっぱいあるから飲んでもらっても構わないよ?」

………

「さっきのはなしで私のコーヒーが飲みたいって、結構苦めに作るけどいいの? ミルクに至ってはなしだよ?」

………

「…よろしい。これを機会にミルクコーヒー意外も知ってもらうとするよ。何で喫茶店のコーヒーはあんなに高いのかの謎が解けるかもしれないね」

………

「さっきの話の続き? ああこの店の場所がわかりにいくいて奴ね。理由は特にないよ、まあでもあれかな。ここは休みたいのに休めない人を受け入れる小さくて静かな休憩所にしたかったから」

………

「分かる人には分かるんだと思うよ。最初にここに来る人はみーんな疲れた顔をしているからね。私が注文を聞いてようやくこの世界に戻ってくるって感じかな」

………

「寂しい? 寂しくないよ。今は私だけじゃないバイトの子もいるし、元々一人は嫌いじゃないし。喫茶店もおしゃれだなって想像してたし、私は寂しくないよ。だから私はコーヒーを疲れた人の横にそっと置くのだ、どう? マスターって感じしない?」

………

「だよねだよね! だけどマスターって呼ばれるのって常連さんとかになってからでしょ? だから呼ばれないんだー、何せみんな最後には少しだけでも元気になってここに二度と来ないからさ」

………

「そりゃそうだよ。人はいつまでも休憩しているわけには行かない、でもここは休憩所。たまに来る人はいてもリピーターはいないんだよ、例外はあるけどね」

………

「例外、それは…っとその前に、はい。今日はモカの気分でしたので、どうぞ」

………

「ああモカね。コーヒー豆の銘柄だよ。他にもマンデリンとかキリマンジャロ、よく聞くであろうブルーマウンテンもそうだね。品種改良とかもあわせると大体200種くらいの豆があるんじゃないかな。私もさすがに全部の豆の種類は言えないよ」

………

「モカは強い酸味があってね、だけど甘い。日本人が好きなこくもあるからファンが多いんだよ。朝だから甘いのもいいかなと思ってチョイスしてみたんだけど、どうかな? 美味しい?」

………

「缶コーヒーとは全然違う? あははは! そりゃそうだね、あれはもう別の飲み物だからね。でも私だって最初は缶コーヒーとコーヒの区別なんてつかなかったからその気持ち分かるよ」

………

「うんうん、元気になってきたね。そろそろ大丈夫そうだね」

………

「勿論。言ったでしょ? ここは休憩所だって。ここに来る人は誰だって『疲れている人』なんだから。私が君をここまで連れてきたとしてもここの近くで倒れていたのは疲れていたから」

………

「そう? でも私はそんな奇跡じみたことも信じたいなーだってそっちのほうが楽しそうじゃない? むしろこのお店が存在してるのも奇跡みたいなものだしね」

………

「コーヒーを飲んだら行くんだね。私にはわからないけど君にもいろいろあるんだろうね、でも生きとし生けるものは全て平等に生きることを与えられているからね。そこは頑張んないと」

………

「お代、払ってくれるんだ。それならありがたく頂くよ。ご休憩で八千円ね! なーんてホテルみたいな料金は取らないよ。でもコーヒーも結構高いし軽食でもわりとかかるから、千円くらいかなー」

………

「あーいまちょっとぼったくりだみたいな目をしたでしょ! ほら、メニューにも元々この値段で書いてあるんだから詐欺じゃないよー!」

………

「冗談? もー意地が悪いな…でも冗談が言えるくらいまで元気になってくれたらそれでいいか。それじゃ、ちゃんとお代頂いたよ」

………

「どうかなー? さっきも行ったけどこのお店って見つけるのが至難の業だからまず普通の人には捜し当てられないんだよね。君もこれから疲れ人から普通の人になるだろうし、また来れるのは難しいと思うよ」

………

「うん、そうだよ。だからいつでも私は出来うる限り話を聞くし、美味しい軽食も振舞うしコーヒーも淹れてあげられる。最初で最後のお客様だからね」

………

「…ううん、このお店に来るのは最初で最後になるくらいが丁度いいんだよ。少し休憩したいときは某有名喫茶店で十分だよ、ちょっと騒がしいけどね。あっちは」

………ありがとう

「うん、それじゃあね。私も楽しかったよ。それでは」




―――又のお越しはお待ちしておりません。頑張っていってらっしゃいませ。
2011.12.24 Sat l 自作小説 l COM(0) l top ▲

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