上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- -- l スポンサー広告 l top ▲
日高愛




「いいわ、今回は素直に負けを認めてあげる。……愛、頑張ったわね」
「ママ……!」
「さあ歌って。あなたの『ALIVE』をもう一度、ね?」
「うん! それじゃもう一回、いっくよー! 『ALIVE』!」
こうしてあたしは伝説のアイドルであるママ、日高舞と同じ曲『ARIVE』を歌いあい、見事に歌い勝った。『ALIVE』は私の曲として私を認めてくれた。
ファンの皆も遂に認めてくれて、あたしの『ALIVE』で泣いてくれる人もいた。それが嬉しすぎてあたしもついつい釣られて泣いてしまった。
それが丁度半年前のこと。今ではあたしの持ち歌と言えば皆が口を揃えて『ALIVE』と答えてくれるまでになっていた。それはすっごくうれしい、けど。
「私だけの曲、欲しいかも……」
十三歳のあたしはまだわがままで甘えん坊だから、ついそんなことを思うようになってしまった。思うようになってからはずっと頭を離れなかった。
確かに『ALIVE』はあたしの歌にもなってくれたけど、やっぱり最初はママの曲だから。同じじゃないのはわかっているけど、けど。
それでも別の曲も歌いたかった。あたしだけの、日高愛が最初に歌って、日高愛と言えばこれだ! って思える歌が欲しくなっちゃった。
すごくわがままな話だからまだ誰にも話せていない。話す気にもなれないよ。さすがにこればっかりは申し訳ないって思っちゃうから。
でも日に日にその思いは強くなっていく。朝起きても、昼にまどろんでも、夜を迎えてもいつだってあたしの頭の隅の中には『あたしだけの曲』がいた。
ダメダメ! まだまだなんだから! って自分にかーっつを入れてもその思いを晴らすことはできなかった。このままだとそのうち暴走しちゃうかも。
そんなことになったら『ALIVE』を裏切ってしまう気がする。せっかくあたしを認めてくれたのに自分から裏切るなんて嫌だ。
『ALIVE』を裏切ることでママも裏切ると感じてしまう。それはまだ子供だから? 芸能界はそんな風に考えなくていいのかな?
例えそうだったとしてもあたしはそうなりたくない。ママだってそんなアイドルじゃなかったはず。同じ道をなぞりたいわけじゃないけど、その歩き方は見習いたい。
……あたしだけの曲のタイトルは何だろう? メロディは? 歌詞は? 振り付けは? スピードは? 転調はあるのかな?
考え出したら止まらなかった。あっこれ以上はだめだ。暴走しちゃう。誰かに相談しよう、と思って。
やめた。
少し、もう少しの間だけでもいい。この気持ち、思い、迷い。誰にも言わないで自分一人で向き合ってみよう。
今までずっと誰かに頼っていたから。誰かに相談して、励ましてもらって、自信を取り戻して突き進む。それがあたしだったはず。
それを否定するつもりはない。今までも道を否定するのは誰が許そうとあたしが許さない。だって否定しちゃったらあたしを支えてくれた皆を否定することにだってなるんだ。
否定はしない、その上で今度はあたし一人でこの迷いと戦ってみよう。そうすることでもう一歩進める気がするから。
戸惑うこともあるけれど、この迷いだけは捨てないでおこう。初めての迷い、初めての対峙。どこまでやれるかわからないけど。
あたしが暴走しちゃったとしても、あたしが止めればいい。今回は全部一人の責任だ。全部一人で解決してみるんだ。
それで、それでね。
この頭の隅に居座る迷いがいつか晴れてなくなったときに社長に話してみようと思う。
自分の、自分だけの歌を歌いたいんです! って。
日高愛らしく、元気にそう宣言しようって思う。
2011.12.24 Sat l 自作小説 l COM(0) l top ▲

コメント

コメントの投稿












       
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。