--/--/-- (--) スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |


2011/12/24 (Sat) 月は、太陽に変われる。

四条貴音




「もし、そこのあなた」
私は語りかけるように喋る。語りかけられた背中はひどく頼りなく、触れてしまえば砂の城が如く崩れてしまいそう。気軽に触れることなど到底難しい。
振り返りはしない寂しげな背中。私の声など、聞こえてはいない。きっと聞こえているのは幾千の懐かしき声援。今の私とは違う声援に必死に支えられている。
月夜の晩に流す涙。あなたの頬には幾粒の涙が流れたのか。今の私にすらわからない。あなたの表情さえ思い出すことも難しく。
決して座らず、揺れず、ぶれず、やせ我慢で立ち堪える。その反動により涙が流れ落ちていたのだろうか。砂の城も水に濡れ、仮初の強さを持ってしまったのだろうか。
だがそれは悲しいこと。強くなるために泣き尽くす、ああ何が良きことか。今の私には理解も出来ない故、私は歩き出す。
一歩ずつ、一歩ずつ。ゆっくりとあなたの後ろ姿に近づいて、あなたは気付かないふりをしているのでしょう。私はかれこれ数十回、あなたにふられているのですから。
構わないで下さい。
「そういう訳にもいきません。あなたは私にとって大切な人なのですから」
私を拒絶する言葉。その背中は震えているのに、それをひた隠し必死に冷たい言葉を吐き捨てる。最初はこれだけで私も引き下がってしまいました。
けど今はもう引きません。救わなければならないのです。でなければあいどるの頂点など、とてもとても。
構わず歩を進める私。徐々に私とあなたの距離が短く。大きく見えてくる背中は近づけば近づくほど小さく見えてくる不思議な背中。
それを隠すために伸びた大量の銀髪。月夜に照らされて銀髪が光る。まるでステンレスのように固く冷たい。その髪に私が映りこむ。
これがあなた。私と一緒。
「そうです、けれど違うのです」
私とあなたは一緒。それに否定は欠片もなく、大いに認めましょう。ですが違う。何故ならばあなたはそんなに悲しい顔をしている。
私はこんなにも笑顔であれるのだから。ねえ、気付いてください。私と一緒だということがわかるのであれば、気付けるはずです。
もう悲しまないでいいんです。もう泣かなくてもいいんです。責任に押しつぶされるなど、そんなことを彼らは望んでいるわけでもないのです。
辿り着いたあなたの元。よく見やれば隅々まで震えている身体。冬の寒さにではない、きっと心の底から震えているのだろう。
手を伸ばし、肩に触れようとする。と、鋭き静かな怒声が私を貫く。
おやめに。それ以上は私とて許せません。
「元より許されたいためにするわけでもなしに。そして誰かを救うのに許されたいなどと思っていれば、きっと私の手は届きません」
許されるために手を伸ばすではありません。嫌われても、拒否されても、生涯を許されなくてもそれでも。私はあなたを救いたい。
おこがましいでしょうか? 出すぎでしょうか? 過ぎることでしょうか? けれどもう私に迷いなんてありません。そんなもの、冥府の果てに伏せました。
私はそっとあなたを抱きしめます。一つになりたいと願うほどに、私の身体前面を、あなたの身体背面とくっつけて。ここには私と、あなたと、私とあなたがいます。
三人もいる。寂しいことなどありません。恐ろしいことなどありません。こうして一人で泣き続ける毎夜を断続的に過ごすことの方が恐ろしい。
あなたは耐えた。だからこそ今は私に身体を預けてください。寄りかかってください。私があの方にそうされることを、許されたように。
……人は温かいものですね。
「はい。人とは温かいものなのです」
……私も温かくなれるのですね。
「はい。あなたが私から温もりを感じるのであれば、当然」
……月夜に泣き伏せた私も、強くなれたのですね。
「はい。けれど一人のままでは強くなることなどとてもとても」
けれど私には誰かに手を伸ばすほどの強さすらありま
「はい。だからこそ、強引にでも引っ張るのです。そう教えられましたから」
そう言って私はあなたの手を引っ手繰るように繋ぐ。冷たい、冷たい手。寒さに凍えながらも決して折れようとはしなかった弱き強さ。
でも、もうその強さは手放しましょう。そんな悲しき強さでは皆の声援にも応えられません。ステージでも、遠いあの場所でも。
「行きましょう、銀髪の女王と言われた私よ。話しなどしません、離しなどしません、放しなどしません。何故ならば、全てはこれからなのですから」
……その強きは、何処から?
「無論、仲間達から」
……そうですか。そうでしたか。
「月だった私と照らしてくれた太陽達。こんどは私が太陽となり、あなたを、私を照らします」
「……ええ。そうしてください。私も、そうされてようやく報われる、そんな気がするのです」
私が私に溶け込んでいく。今まで震えていた心も、身体も私の中で治まるのが分かる。私は初めて救えた。私を。
「さあ行きましょう。共に。仲間達が集うあの事務所へ」
いつの間にか闇は晴れていた。違う、私が晴らしたのだ。
もう泣き伏せる私はいない。この清々しい闇の先、涅槃寂静ほどの先も見えないけれど不安などなく。
「私は銀髪の女王でも何でもない。あいどる、"四条貴音"。仲間と共にふぁんの皆の太陽となりたき者なり」
そう言いながら、近くにあったらあめんの屋台に入った。
腹が減っては戦はできぬ、ですから。

自作小説 | comment(0) |


<<伝わらないけど | TOP | 魔法のウイスキー>>

comment











管理人のみ閲覧OK


| TOP |

プロフィール

流ぬこ

Author:流ぬこ
自個偽無、候。
書いたり書いたりしている流ぬこです。
ピクシブなんかでも同じく流ぬこで書いています。
はじめの一歩を見るとオズマ戦でも小橋戦でもどの戦いでも泣けます。はい。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。