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我那覇響




「さあいぬ美! 散歩の時間だぞー! 今日も元気に行くぞー!」
「わんっ!」
ボクの名前はいぬ美。名前だとメスっぽいけど実はオスだったりします。飼い主はこちらの我那覇響ちゃん。とっても明るくて可愛らしいスポーティーな女の子です。
それだけじゃなくて何とアイドルをやっていたりするんです。しかも結構売れているアイドルなんですよ? 飼い犬のボクもとっても誇らしいです。
そんな響ちゃんの日課がボクの散歩なのですが……。
「ほらほらーもっと早く行くぞー! レッツゴー!」
という調子で犬のボクよりも元気に駆け回るので、最近ではどっちが散歩しているのかわからなくなっていたりします。
いえ、普通の人から見たらボクが散歩に連れて行ってもらってるようにしか見えないんですけどね? そこは犬と人間さんの目線の違いです。
いつも通りの散歩道、変わり映えのしない道路ですがボクにとっては宝物の地図の道を歩いているようにワクワクします。
響ちゃんも同じように楽しそうに、嬉しそうに歩いてくれるんです。一緒になって散歩してくれる響ちゃんが、ボクは大好きです。
「さあとうちゃーく! いざ公園で遊び倒すぞー! わーい!」
あらら、ボクの手綱もそっちのけで走り出してしまいました。こんなことだとまた逃げ出しちゃいますよ? 泣かれるのは嫌だからもうしませんけどね。
あの時の響ちゃんは本格的に泣いてしまって、帰ってきたら一週間ほど抱き枕にされましたから。海よりも深い母の愛?を感じました。
この公園は遊具などはなくてだだっぴろい草原が広がっているだけの公園です。響ちゃんとボクのようなペットを引き連れている人達に愛されているのです。
ただ今日は朝六時ということもあって人はいません。ちらほらと飼い主さんも見かけますが足早に去っていきます。
心なしかペットたちも少しだけつまんなそうにしています。その点ボクは響ちゃんと遊べることが出来るのですごく楽しいのです。
ボクよりもはしゃいでいる響ちゃんを見ているのもすごく楽しいですし。うーん、なんだか最近自分が犬らしからぬ考えを持つようになってきました。
それはそれで響ちゃんの好きな一面を広げられるのにも役立っているので好ましいからいいんですけどね。
「よしいぬ美! フリスビーするぞ! ほら、早く投げて投げて!」
響ちゃん、逆です。響ちゃんが投げてボクが取りに行くんですよ?
「冗談さー! よっしいぬ美! とばすぞーそれー!」
フリスビーが綺麗に空を飛んでいきます。ボクの犬魂がそれをみて疼きます。まあ犬ですから当然走ってしまうんです。これがまた楽しくて。
なにより綺麗にフリスビーをとってきて響ちゃんの元へ戻ると
「いぬ美かっこよかったぞ! 自分もあれくらい高くジャンプするダンスとか踊ってみたいぞ!」
なんて褒めてくれるからたまりません。尻尾が振れてしまうのも無理ないんです。こればっかりは不可抗力ですね。
それから一時間くらい遊んで、遊んで、遊んで、遊び倒します。だいたいそろそろかなぁと思うんですけど。ああ、やっぱり。響ちゃんが芝生の上で横になっています。
「ん、もう食べられないぞー……」
最近はアイドルのお仕事も忙しくて、それでもボクの散歩をしてくれるものですから途中で疲れて寝てしまうのです。気持ちは嬉しいですが無理はしてほしくありません。
それに響ちゃんは可愛いのでもしかしたらよからぬ人がよからぬことをしようとしているかもしれません。その間ボクはペットから警察犬になるのです。
器用に響ちゃんを背中に乗せ歩いて帰ります。ボクを一週間抱き枕にしていた響ちゃんはボクが近寄ると無意識のうちに抱きついてくるのでそんなに難しくはないです。
ちょっとだけ毛が痛いですがこれも響ちゃんのためならお安いものです。ボクは道を引き返して響ちゃんと僕の家へと帰ります。
「…すぅ…すぅ。ぷろ、でゅーさー…えへへっ」
いい夢を見ているのかよだれを垂らしています。ボクは構わないのですが結局響ちゃんが洗ってくれるので結果的には少しだけ申し訳ない気分です。
でもボクの背中で気持ちよく眠ってくれることにボクは誇りを持っています。他のペットたちにはできないことですからね。
「うう…いぬ美ぃ…もう逃げないでねぇ」
はい。ボクはもう逃げたりしませんよ、響ちゃん。
ボクは逃げ出して始めて知ったんです。ボクがどれだけ響ちゃんのことが好きだったかを。
確かに響ちゃんはボクの餌を出すのを忘れたり、たまにボクの餌を食べてたりします。他のペットたちも同様の被害にあっていたりします。
けどいつも響ちゃんはボクたちの側にいてくれるんです。仕事から帰ってきて疲れているのに、ただいまだぞー!って元気に、目のクマがあろうかなかろうが関係なしに。
皆にご飯を出してくれて、毛並みを整えてくれたり、喋りかけてくれたり。どれだけ疲れていてもそれだけは欠かしませんでした。忘れることはありましけど。
だからあの時始めて響ちゃんと離れて知りました。ボクの心の奥底にはいつも響ちゃんがいてくれたことを。そして。
―――いぬ美ぃいい! よかった! 無事だった! 自分が悪かったぞぅ、ごめんねー! うわあああああん!
響ちゃんの心にもボクがいることを知りました。あんなに泣かしてしまったのを今でも後悔しています。
だからもう逃げないって誓ったんです。響ちゃんが餌を忘れても、毛並みを整えてくれなくなっても、見向きしなくなっても。
ボクはずっと響ちゃんの側に、死ぬまでいたいと思います。
そんなことを考えていたら家に着きました。大体これくらいで響ちゃんも起きるのですが、あっもそもそしてますね。
「んあ? あれー、自分また寝ちゃってたかー。ごめんねいぬ美…あんまり遊んであげられなくて、おまけに重かったでしょ?」
ううん、平気だよ響ちゃん。響ちゃんは軽いから、もっと食べた方がいいと思うくらいだよ。
「そっか。でも次はもっと遊んであげるからね! 自分完璧だからね!」
たまにボクのことを忘れてみんなと遊んできていいんだよ? もう響ちゃんにはいっぱい友達がいるんだから。
「よーっし! 明日からはもっと気合いれていくぞー! いぬ美のためにもね!」
ボクのために頑張ってくれるのは嬉しいけど、今は自分のためにでいいんだよ響ちゃん。
「……いぬ美、ずっと、ずーっと一緒にいようね?」
うん、ずっとずっと一緒にいるよ。例え人間と犬の寿命に大きな違いがあってもボクはずっと響ちゃんの側にいるから。
だってもう決めたから。響ちゃんからもう。
逃げないって。
「うんっ! ずっと一緒だぞ!」
きっとボクの声は聞こえていないだろけど、ボクには響ちゃんの声が聞こえているから。ボクはそれだけ満足。だから聞こえなくてもボクはいつでも返事をするよ。
うん、ずっと一緒だよ。
「わんっ!」
2011.12.24 Sat l 自作小説 l COM(0) l top ▲

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