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2012/01/01 (Sun) 私と美希ちゃん

星井美希





「お疲れ様でしたなのー!」
「そのままの美希ちゃんがやっぱりさいっこーだよ! またよろしくねー!」
アイドル星井美希は撮影を終え、控え室へと戻る。ようやくそこで自分の化けの皮を剥ぐのだ。
「ふぅ、疲れた。ちょっと、肩こっちゃったなぁ。また胸が大きくなったみたいだし、これ以上大きくなっても恥ずかしいだけだよ」
本当の星井美希が現われる。皆は知らない星井美希。実はこんな星井美希。
「最近グラビア撮影の仕事ばっかりだし、結構恥ずかしいんだけどなぁ。この水着布地少ないし……」
今も見につけている露出度抜群のカラフルなビキニのひもを少し引っ張ってみる。そうするだけもう胸が締め付けられる。
「なのなの言ってるのも実は意外と恥ずかしかったりして。……なのー。可愛いかな?」
鏡に向かって唱えてみる。皆が大好きな星井美希、その子が度々語尾につける不思議な言葉。皆を引きつける魔法の語尾。
「この金髪もやりすぎじゃないかな? そもそもこのハネ作るのも疲れるんだよね。あーあ、思い切って黒髪ストレートに戻そうかな」
過去の自分を思い出す。まだ私がアイドルになる前のこと。普通の中学生、よりもかなり地味だった星井美希。
「語尾だってなのーとかじゃなくて使えるならですますとかがいいのに。そういうアイドルっておしとやかで可愛いし」
学校では大人しくて、だけどイジメられるわけじゃない。委員会は決まって図書委員会。眼鏡はかけてないけどね。
「はあ、とりあえず着替えちゃおう。このままじゃ恥ずかしすぎて顔が赤くなってきそう」
アイドル星井美希はこんなことくらいじゃ恥ずかしがらないからちょっと困ったものだ。雪歩ちゃんみたいに恥ずかしがりたい。
「私ももっと歌いたいなー。でも未だにあの曲は慣れないし、私は『relations』のほうをもっと歌いたいなー」
あの曲というのは星井美希ちゃんが大好きで皆も大好きな『ふるふる☆フューチャー』だ。その歌詞の始まりは。
「……大好きハニー いちごみたいに 純情なの ずっと見てて 絶対よ。あああああああ身体がかゆい~!」
がしがしと身体を書く。もっちもちの潤い肌を伸びきった爪でがりがり。ちょっと爪に皮膚が付着する。
「い、いた~い! 掻きすぎたー! もう、踏んだり蹴ったりだよ……」
アイドル星井美希が順調に成功するに反比例して、私の生活はずさんになっていく。別に二重人格じゃないからすぐにでもやめられるけど。
「今星井美希ちゃんをやめちゃったら、私なんて存在価値ないもんね。あはは、仮で始めた美希ちゃんに全部取られちゃうなんて」
……悲しい、というか虚しい。仮の自分の存在が大きくなっていく。アイドルとして大成している。なのに私はどうだろう。何もない。
「アイドルにもなりたかったけど、作家にもなりたかったりして。でも今の私は美希ちゃんがあふぅって言って寝たら出てくる、仮の星井美希だから」
美希ちゃんの睡魔も継続して私に襲ってくる。いつも私になったときにまとわりつく睡魔に抗えず、書くことすらままならない。
「だって私なんかが星井美希ちゃんの邪魔をしちゃだめだし。ある意味では私にとっても重要だし……」
そうはわかっていてもやっぱり不安だ。このまま立場が逆転してしまうんじゃないか。そして。
「私、いつか消えちゃうのかな? それは、悲しいなー」
このままのスピードで行ったら、いつか私は消えてしまって、星井美希ちゃんは本当の意味で一人の星井美希ちゃんになるんだ。
「アイドルになってよかったのか、わからない。美希ちゃん成功すれば私が消える。だけど美希ちゃんが成功しなきゃ私はどうなる?」
作家として大成できていたかな? 誰もが目指してみる作家何て狭き門に私なんかが通ることができたかな?
「無理、だよね。美希ちゃんなら出来るかもしれないけど、私には出来ないよ」
心が鬱になる。でも美希ちゃんには引き継げないから、私にずっと滞留するの。不公平だけどそれが私の役目だから。
「これで、いいのかな?」
いいわけがない。けれどこれでしかもう生きられない。アイドルとして約束された道があるのにそれを辿らない人がいるだろうか。
「そう、だよね。いないよね。私は幸せなんだよ、こんな生活なかなかできないし」
皮肉だ。アイドル生活を送るのは美希ちゃんだ。私はしばらくの間美希ちゃんをサポートする雑用係でそのうち消える使い捨ての存在。
「でもいいよね。私が犠牲になれば、私は幸せになれるんだ」
でもそれって本当の幸せ? 自分を殺して自分を幸せになんて、悲しすぎない?
「だけど、もう私には他の道なんて歩めない。……だから受け入れよう。消えるまでの間、せめて何か一つ作品を書き残せたらいいなぁ」
うん。私がいた証として、何か書こう。それがどうなるかはわからないけど。でも―――。
「……誰にも知られないまま消えていくのは、寂しいなぁ」
少しだけ漏れた本音。でも、星井美希ちゃんを消すにはあまりに決定に足りぬ言葉。やがて残骸となり崩れ落ちた。


月日が流れて、アイドル星井美希は立派にトップアイドルになった。そしてまさかの自伝出版。
タイトルは、






『星井美希はここに散る』

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書いたり書いたりしている流ぬこです。
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