--/--/-- (--) スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |


2012/01/01 (Sun) アイドルオブキズナ

天海春香







「出来具合はいかがでしょーか春香シェフ? うーむ、中々の出来栄えですね! なーんて」
台所に響く料理の音、充満する美味しそうな料理の香り。男を掴むならまずは胃から、をモットーにしているわけではない。
「そう思ってうまくなった部分もあるけどね、あははっ」
冗談片手に料理とダンスを踊りながら料理を続ける春香。その姿はアイドルではなく、一人のよき母にも見える。
寒さ対策で穿いている靴下ともこもこのスリッパがまだ少女らしさは抜け切っていないところを露呈しているが、料理の腕は主婦にも負けない。
今日は自分だけが食べる料理ではない。だからこそ春香にも気合が入っていた。いつもよりも念入りに包丁を研ぎ、鍋を洗い、オシャレな皿を用意していた。
その気合の入れようは主婦ではなく、まさしく恋する乙女なのだ。彼女が歌う『乙女よ大志を抱け』のごとく乙女なのだ。乙女といったら乙女なのだ。
「皆、喜んでくれるかなー?」
心優しい春香は勿論乙女力のアピールをするだけでなく皆に美味しいものを振舞いたいと思う気持ちもあり、だからこそ彼女の手料理は温かく美味しいのだ。
やよいは涎を我慢するのが精一杯、亜美と真美に至っては我慢することなくつまみ食いをするレベルである。
アイドルとして活動する彼女の姿は無論可愛いが、このように台所に立って料理をする春香も家庭的で可愛いのである。
「それじゃーお塩を入れてー、ってああっ!? 砂糖だよこれ! で、でも少しだけしか入れてないから平気平気! それじゃお塩をー」
ドジスキルは何も転ぶだけでなく他の分野まで幅広く習得している。しかし何より凄いのはそのスキルが人に迷惑をかけることがあまりないことである。
転ぶのも何もないところでなので被害は春香だけに留まる上、春香自身まったく怪我をしない特製も持ち合わせているた迷惑のめの字もない。
「さてさて、そろそろ皆が集まりだす時間だね。その間に完成させないとあっちちっ……火傷したかな?」
うっかり心上の空で料理をしていたために熱い鍋に指が触れてしまった。水脹れに成る程ではないが少しだけ赤ずんでいる。
「……春香、手、貸して。……はい、これでもう大丈夫。……なんてなんて! きゃ~!」
よくある少女誌で見かける王道的な展開を妄想し、感極まったのか飛び跳ね始める春香。エプロンの下に隠されているふっくらとした両の椀が震える。
震えているのは椀だけではないが彼女の名誉のために描写は控えることとする。仕方ないのだ。季節は冬、それも年末。食欲の誘惑は数知れずなのだから。
だが彼女もアイドルだ。そのプロポーションが一線を越すことはない。アイドルたるもの自分の管理もしっかり出来なくてはいけないのだから。
「でも、今日は特別な日だからいいんだもんっ 大丈夫! 太ってもその後で痩せれば、いやでもやっぱり太りたくない~! でもこんなに作っちゃったし食べないともったいないー! ああーん、私の心が矛盾に苦しんでるよー助けてー!」
鍋の蓋を持ったままうずくまる春香。鍋からこみ上げる湯気を存分に受け止めていた鍋の蓋には雨でも降ったのかと思えるくらいに熱々の水滴達が。
そしてゆっくり、ゆっくりと下に流れていきついに春香の膝小僧にぴちょんと落ちた。と同時に。
「あっつー! 何どういうこと!? 家の中なのに熱湯の雨!? ち、違うこれだ! 鍋の蓋だよー! えーいっ、封印!」
どうにかこうにか湯気と共に逃げる旨みと香りを封印した春香は一つはぁと大きなため息をする。
「……浮かれすぎた。すごく疲れた」
完全に自業自得である。

トントン カンカンッ ダッダッダッ!
―――にして――――はどう? ―――それ――けど ――――いた――――ずら――――し放題!

「えっ、もう来てる……? まだお料理できてないのに? ……やっちゃったー!」
全ての料理を完成させておくつもりだった春香だったが予想以上に時間を喰ってしまったため、喰った原因はほとんど一人芝居だが、まだ出来ていない状態だ。
あたふたしても料理が進むわけでなく、時は無残にも進み扉は当然の如く開かれた。
「ご、ごめんねみんな! まだお料理できてなくて」
静寂。その数秒後にテーブルにお菓子が入ったコンビニ袋が置かれる。
「はーい、亜美と真美は先に片付けとお菓子の整理。つまみぐいは不可」
「せ、せめてポッキー一本」
「不可。私と千早は春香の手伝いね、ほら千早」
「でも私、料理はあまり知らないのだけれど」
「習うより慣れろよ、アイドルだってそうだったでしょう?」
「……そうね、やってみるわ」
「えと、あのー? 律子さん?」
淡々として進む場についていけない春香はとうとう律子に助け舟を乞う。それに対して眼鏡くいっとあげて笑って応える律子。
「まあ予想してなかったわけじゃないし、おかげでこの千早に着せようと思って買ってきたエプロンも無駄にならなくて済みそうだし。それに料理は皆でやったほうが楽しいでしょ?」
そう言って袋から取り出したエプロンをばさっと広げる律子。そのエプロンはキュートなふりるがふんだんに使われ中央にハートマークがでかでかと書かれているエプロンだ。
「こ、これを私が着るの!? 聞いてないわ!」
「言ってないもの、そりゃそうでしょう。でも平気よ。機能性も損ねてはいないから」
「そんな顔で言われてもっ……もういいわ、何を言ってもだめみたいだし」
「理解が早くて助かるわ」
「あ、あははっあはははは!」
「面白かった?」
「はい、とっても!」
目に涙を溜めているのは笑いすぎなのか、はたまた別の気持ちが春香の隣にいたからかはわからないけど。
この後きっと春香は涙も忘れて盛大に騒いで、楽しんで、笑い転げるだろう。
いつものアイドル活動だけでは得られない宝物の経験を、どうか天海春香に。

自作小説 | comment(0) |


<<これまでとこれからに。おかえりとただいまを。 | TOP | 双子姉>>

comment











管理人のみ閲覧OK


| TOP |

プロフィール

流ぬこ

Author:流ぬこ
自個偽無、候。
書いたり書いたりしている流ぬこです。
ピクシブなんかでも同じく流ぬこで書いています。
はじめの一歩を見るとオズマ戦でも小橋戦でもどの戦いでも泣けます。はい。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。