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2012/05/03 (Thu) 現想

鈴木彩音




―私はネットだけに必要とされる偶像デス―

そういい残して、サイネリアは姿を消した。
そこそこに賑わっていた彼女のブログには、彼女のファン、信者から幾つものコメントが寄せられていた。
でも、やがてコメントの嵐も落ち着いて、今では何事もなくネットの海を彷徨う死んだデジタル媒体となっていた。
彼女が作り、考え、試行錯誤をして投稿したであろう動画も廃れていった。
ネットアイドルとしてそれなりの知名度があったサイネリアの存在は、見事にネットの波に飲まれて消えた。
しかし、それだけではなかった。
サイネリアだけでない。サイネリアの所謂中の人、鈴木彩音も消えてしまったのだ。
彼女の素性を知っている知人たちがいくら連絡を取ろうとしても、取れなかったのだ。
行方不明。彼女を表すステータスにはそうはられたまま。未だにはがれないでいる状態異常。
けれど、存外に世間は冷たかった。
一ヶ月そこらの捜索程度で警察は既に諦めムードだったのだ。
これはそういうイベントだったんだ、と人の失踪をまるでゲームの中で起きる仕方のない仕様と断定し、逃げたのだ。
こうして、現状サイネリアにまつわる事柄は一つもなくなっていた。
彼女はネットだけではなく、リアルからも姿を消した。
世界はその両方を容認した。
私は、それを仕方ないと思っている。
いなくなる少し前から、サイネリアは変なことをつぶやくようになった。

もう、私はいなくてもいいんデスよね

こんな言葉が、どこかのログには残っているはずだ。
そして消えた。
それから私はパソコンをやめた。
内の世界で引きこもるのをやめて、ありったけのお金をもって自転車に乗り込んだ。
どうなるかはわからなかった。けれど、私にはもう止められなかった。
知らない景色へ飛び込むのがこんなにも素敵なことだったんだと思った。
知ってる人がいないことがこんなにも辛くて縛られないことだったんだと思った。
ずっとずっと、足も自転車も靴もお気に入りのリュックもボロボロになるまでこぎ続けて早数年。
帰ってきていた。自分がいきなり飛び出した場所へと。
自分の残り香はもう何もない。誰の未練すらも感じられない。そんな世界に返ってきた。
昔、私が住んでいた一人暮らしのアパートの前まで着いた。その玄関に。

―――絶対、帰ってきて EILLE

あの人だ。いつもの疑問符はなかった。それだけ大切に思ってもらっていたのなら、嬉しい。
でもどうしようか?
もう私はサイネリアではない。サイネリアはネットの中に残してきてしまったから。
それなら私は、私はこう名乗るしかない。

PLLLLLLLLLLL PLLLLLLLLLLL PLLLLLLLLLLL PLLLLLLLLLLL

『もしもし?』

「……」

『……誰?』

「ダレ、なんでしょうね」

『……嘘。私、知ってる?』

「教えてもらっても良いですか」

『うん。でも先にやっておきたいこと、ある?』

「えっ?」

―――ぎゅっ。

「……おかえり、彩音」

「……ただいま、です。絵理先輩」

「何、してたの?」

「……こじらせた厨二病を鎮めに、長めの自分探しにですかね」

「そっか、うん。おかえり……おかえりぃ……」

「……ごめんなさい。だから、ただいまです」

ねえ? どこかに漂うサイネリア? これはもしかしたら貴方が見ている夢なのかも知れない。
それだったらとっても素敵な夢だと思わない?
だって、私のことを覚えてくれている人がいたんだから。
泣いてくれる人がいたんだから。
すっごく、素敵だね。













システム 復元___ サイ__ア __再起動___。

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ピクシブなんかでも同じく流ぬこで書いています。
はじめの一歩を見るとオズマ戦でも小橋戦でもどの戦いでも泣けます。はい。

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