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今回はアイドルマスターDSから永遠のアイドル。
鈴木彩音




「ふぃ、疲れたー。ただいまーって誰もいないけど」
質素な空間。ここが私の家。元サイネリア、現鈴木彩音の家。
最近は蒸し暑くなってきて、家に帰ってくるのも嫌になる。蒸し風呂ったらありゃしないのだから。
買ってきたコンビニ弁当をテーブルに置く。
「別に飲み物一緒でよかったんだけどね。新人さんが頑張ってるのみたら断れないよねー」
今日入りました、と言わんばかりの緊張をしていた研修バッヂを付けた店員が相手なら誰だってそうなるだろう。
とりあえず袋から緑茶だけを取り出して冷蔵庫に入れる。冷蔵庫の中には缶ビールと日本酒、その他もろもろが入っている。
「もう法の上でもお酒オッケーなんて、時の流れは残酷だよねぇ」
まだ社会人ではないにしろ、世話しなくバイトに追われている。そうでもしないと一人暮らしの生活もままならないのだ。
ならお酒をやめればいい。ってそんな単純なものじゃないのよ。今の私には必要なんだから。
「さて、お風呂に入るとしますか」
飲みたくなる衝動をぐっと抑えて、脱衣所へ向かう。
少しばかり狭いお風呂。でもこんなお風呂でも付いていると結構お高くなるものなのだ。
事前に沸かしておいたお風呂。少し温くなってはいたが、入りながら沸かしなおせばいいと衣服を脱ぎ去る。
「んーやっぱ太ったよなぁ。この腹肉が憎い、肉だけに……いやあああ! おっさんくさすぎる!」
そんな自分を覆い隠すためにお風呂へダイブ。大波を伴って水面を上げ、浴槽からあふれ出す。
私はまるで羊水の中で丸くなる赤ん坊のようにしばらく浴槽から顔を上げないでみる。
懐かしい、気がするような。お腹の中にいる時は耳の中に水が入ってたりしないのかな?
そんなことを考えながらゆっくりと浮上して、顔だけ出した。
「はふぅー生き返る~ぅ……」
頬が上気している。じわぁっと体が熱くなっている。いろいろ、抜け出していくそんな感じ。
まあそんなに厳しい生活をしているわけじゃないけど、それなりに思うところはあるわけで。
でも愚痴は極力言わない。今日終わったことはもう終わった。このお風呂や明日に引きずるのはもったいない。
「……お猪口とぐい飲み、お風呂用お盆でも買おうかなぁ。うねりがあるような、ちょっと高めの」
くだらないところにお金をかけようとするのは前からの癖だった。
誰もそんなところ気にしないのにバカみたいに気にしていた頃を思い出す。
「楽しかったなぁ。今じゃ動画をupする暇も、というか取る時間も中々取れないし」
サイネリア、かぁ。もう戻れないのかな。サイネリアにも、あの頃のようにも。
……今はふやけるまでお風呂に使っていたい。そうやって気分が落ち込んでいくのをごまかしたいなぁ。
「あっ、体も頭も洗わないで入っちゃった」
よく見てみれば、細かな埃や髪の毛がちらほらと浮いていた。気分のいい気分がどんどん落ち込んでいく。
どうしてこう、私はこう考えなしなんだろう。
「洗うとしますか」
浴槽から出て改めて髪の毛と体を洗う。シャンプーやコンディショナー、ボディーソープはスーパーで安売りしていたものだ。
あんまり日常品にお金をかけたくないのだ。だったら嗜好品や趣味に回したい。
丁寧に汚れを落とした私は再度浴槽へと戻る。ゆっくりと肩まで浸かる。
「……大きくなったのは胸だけかねぇ。ほんっとに無駄な脂肪だよ。魅せるでもない、使うでもないんだから」
少しだけ両手を挙げて伸びをする。仕事と無駄な胸のせいで凝った肩が悲鳴をあげる。
「あたたたっ……これでも二十歳になったばかりなのに、笑えるなぁ」
などど言いながらくつくつと笑ってしまう。
この独り言の癖もまったく抜けない。誰と会話するでもなく、空気に溶かしていく呟き。
でも好きなのだ。そんな溶けていく言葉たちを発するのが。
「んー、今度何か踊ってみようかなぁ」
いろいろと考えてみる。だけど致命的なことに今の流行の踊りがわからない。
一昔前に流行ったものを今更踊りなおすのも芸がないし、どうしたものか。
「……何か、動画でも作ってみようかな。んー何がいいかな」
浴槽から両手をだらんと伸ばして、胸を浴槽の縁に押し付ける。
少しを目をつぶって、考えて、思いついては違うとかき消して。
中々決まらない。
「決めてに欠けるんだよね、全部。……いろいろ考えてみようかなー」
そう言いながら立ち上がる。浴槽から出て脱衣所のお風呂マットの所で立ち止まる。
私の肌は何とか水分を弾いてくれている。いつまでもつのか、苦笑してしまう。
「うーん、動画製作かー。どんなの作りたいかな」
何一つ決まらないまま、バスタオルで体を拭いていく。
その間、私はずっとニヤニヤしていた。理由もなくワクワクしていた。
あの頃の気持ちを、新しいことを見つけて妄想して楽しむ頃を思い出して。
「実際にやってみると飽きちゃ足りするんだよね……まあでも、そこも含めて楽しんでみるとしようかなー」
うん、決めた。ちょっと頑張ってみよう。
ちょっとだけワクワクする明日のために。
そう決めて、ある重大なことに気が付いた。
「……着替え、全部洗っちゃってるんだっけ」
どうやら早速、躓いたようだ。まあいいや。
髪も乾かさないままバスタオルを体に巻いて冷蔵庫へ直行。ビールを取り出して、ブルタブをぶしゅっと開ける。
そのまま飲めるだけぐびりと飲み続ける。
「……っはー、やっぱこれだねー」
着替えがないことに目を瞑り、今日一日だけはこのワクワクを忘れまいとビールに酔いしれる私だった。











「くしゅっ」
その後、風邪を引いたのは言うまでもない。
2012.06.21 Thu l 自作小説 l COM(0) l top ▲

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