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オリジナルで微・機械物





時間がない。迷ってる暇もありはしない。
疾走する。

『――――――っ!』

最早聞き慣れ親しんだ声は遠くに聞こえる。
けれど立ち止まるわけには行かない。
振り返らず突き進む。疾風の如く、壊さなくてはならない奴の元へ。

攻撃が激しい。四方八方から狙い撃ち、違う。乱れ撃ち。
避けられる次元ではない。ミサイル、レーザー、グレネードー、弱体化ジャマー。
左腕右腕両足胸部から腰部及び頭部左眼カメラ損傷全体ダメージ率致死越え。
動けないはず。動けないはずだろう。普通ならば。だけど。
普通などとうに捨ててきた。普通を捨てなければ守れないとわかったその瞬間に、即パージした。
どれだけダメージが蓄積されようと、損傷が激しかろうとも、動けばいい。安い。
次第、周りの攻撃も薄れていく。殺気、執念、私から放出される異常な念。耐えられず、後退したのだ。
好都合? 不都合? 今となってはどうでもいい、収束するべき点はそこではない。
そうだろう? ……最大最強最高にしてゴミでクズな最低な王、異端児よ。

……。

微動だにすることなく、佇む。悪魔的なまでの高速チューン。そのスピードの速さ、時にソニックブームをも超える。
貴様もボロボロだろう。傷だらけ、サビだらけはお互い様だ。同じ穴の狢同士、殺しあおう。

……コイ ハイジョ スル

聞かず、真っ直ぐ突っ込む。ブーストを限界、爆発寸前の臨界点まで一気にふかす。
散らばった機械が散乱するゴミの床の上を噴射したブーストで溶解させながら、ブレず直進。
数瞬、間髪いれずにブレードを取り出す。レーザーブレード等とハイカラな物ではない。上等な物ではない。
だがお前にはこれで十分だ。十二分に過ぎる。……これが適当だ。
そうだろう? "物理の申し子"

ガキンッ!

鈍い轟音と共に、衝撃が円状に発せられる。その衝撃が限界近い装甲に亀裂を響かせる。
奴が取り出したそれも、同じ物理ブレード、いいやもっと不恰好だ。鉄パイプのような物。
そんな物に押し負けそうになる。こちらが扱っている獲物は不恰好であれ立派な破壊・殺傷兵器。
相手が使っているはその辺に転がっていた、ゴミクズだ。それで尚、互角。……いや。
押されている。この鬩ぎあい、確実に後ずさっているのはこちら側。
スピートしか考量していない構成の分際で、押して勝てない。理不尽。不条理。
泣き言が頭を過ぎる。今更、捨てろ。じゃなきゃこいつを殺すなんてとてもだ。
反撃覚悟でブーストを噴射し後退する。一気に数百メートル離す。だが……。

―――――ブオゥンッ!

奴の機体が爆発する。否、ブーストを使ったのだ。それがただ爆発したように見えただけ。
これが悪魔的な高速チューンを施した故、起こり得る光景。身を削り、相手を瞬時に間合いに捉える破滅的戦術。
こちらの機体も高速チューン重視だが、あくまでも重視。命を顧みない程の改造はしていない。当然、追いつかれる。
そう思っていたら、過ぎていた。既に奴の機体は後方に。
こちらの機体の左腕は空中に。
……たかだかの鉄パイプ、ゴミ武器で一本持っていかれるとは、悪魔すら逃げ出す。
逃げろ逃げろ逃げろ逃げろにげろ逃げろにげろ逃ゲロにげロニゲロにゲろニゲろニニニニニニニニニ。
……黙れ。もう遅い。どの道終わりなんだ。なら踊らせろ。殺させろ。
生存本能とやら、てめぇも一緒に来い。地獄の底の閻魔のとこまで、ひでぇ面して道連れだ。
空中に舞う左腕をふっ飛ばしながら旋回、奴へと向き直る。その直後、頭部装甲の半分を持っていかれる。
有り余るスピードで後方に向きその速度のまま強引に逆ブースト、余力のブーストよりも強い運動量を持つ逆ブーストが勝り旋回前のこちらへ直行。
……万、億、兆に一つこちらから手を出して勝てる要素はない。手を出せば、だ。
既に奴の右腕もそこらに転がっているだろう。神懸り的ではある操縦だが、規格外の強引な手段を取る事を想定せず作られた軽量パーツ。
それが先に鳴いた。悲鳴を上げて、持ってかれたんだろう。これが奴の弱点。
戦えば戦うほどに死に近づく、救いようのない機体。触れるなと言わんばかりに動き続ける。故についた、らしからぬ異名。
ホウセンカ―――。私に、触れるな。花の様に短い命でも、自分の命には指一本触れさせまいとする傲慢。
一人では生きていけるはずもないのに、決して群れ様としない矛盾。
そんな姿に、泡沫の様な気持ちを抱いた。
ああ、こんなにも美しく気高い物もあるのだ、と。
だからこそ手を出さないなど出来るものか。してやるものか。この身がここにある機械のゴミ屑と為るまで付き合ってもらう。
それが最後の、我侭だ。
旋回している暇はない。ならどうする? 一瞬でゴミ屑となるか? そんなのは、ごめんだ。
後方も確認せずに跳ぶ。その僅か下を奴のシルエットが駆け抜ける。勘も捨てたものじゃない。
攻めるか、立て直すか、戦況を見て判断すべきをすっ飛ばしありったけのブースト加速で奴に接近する。並みの相手ならこれで勝てる。だが。

……コイ イレギュラー

胴体部にでかい風穴の開けながらも余裕で振り向き、俺の姿を捉える。本当に、毛ほども勝ち目がない。
そんな破滅的な生き方も悪くない。そんでこんな破滅的な奴に負けるのなら上等だ。
だが、しないまま死ぬなんてのはっ!

「真っ平御免なんだよぉお! ホウセンカァアアア!」

力もスピードも半減以下。それでも突き出す、愛剣"錨葬"。
もう、どうして憎いのかも思い出させないこいつに。
届け!
届け届け!
届け届け届け!
届け届け届け届け!
届け届け届け届け届け!
届いちまえ! 俺の思いごと突き立て届けぇ!

……ワルクナイ ダガ アイテヲマチガエタナ

避けられ、鉄パイプが装甲を貫通しめり込む。油が、粒子が、思いが霧散していく。
結局、届きはしなかった。……わかってたとはいえ、万が一を考えずにはいられなかった。
……弱い人間だ。

……来世では もっと良い相手を見定めるのだな

綺麗な声が聞こえた。まるで迎えに来た天使のような透き通る声。
ああ、悪くない、悪くない。
もう終わりだとしても。
届かなかったとしても。
最後にいい夢を見れた。
ホント、悪く

グシャッ


ホウセンカ:「私に触れないで」
イカリソウ:「あなたを捕らえる」

思い届かず 命と共に 儚く散る夜に―――。
2012.07.04 Wed l 自作小説 l COM(0) l top ▲

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