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鈴木彩音



「びしゃびしゃのびっしゃびしゃ、シャワーを浴びて倍増びしゃびしゃ」

私は歌う。しょうもない歌を、事務所のシャワー室で歌う。
外は雨。雨から生まれた水溜りの上を、車がビューンと走り去り。
どんくさい私はその横にいて、思い切りを水をかけられたのだ。
おかげでお気に入りの服がびしゃびしゃ、白い生地の胸部分が透けて恥ずかしかっ

た。

「朝からシャワーなんて、いいのかわるいのかわからないデスね」

変にあがる私の語尾は今日も健在。社会に出たときちょっと不安だ。

「さて、出るとしましょうかね」

ひとしきりの跳ねた雨水とうっすら書いていた汗を洗い流した私。
あっ、紹介が遅れました。
私、半年前まではネトアだった現リアドルのサイネリア改めて鈴木彩音です。
名前だけでも覚えて帰っていってくださいね。

「ん、そういえば替えの洋服の準備を忘れていましたね」

「おはよう! 今日も一日頑張ってっ……」

「ああ、プロデューサーおはようございマス」

「バスタオル一枚ってお前、誘ってるのか? 本気にしちゃうぞ!」

「誘ってないので替えの洋服取ってきてください。Tシャツでも何でもいいので」

「なら裸にYシャツで、いやまて。ここはエプロンを持って来るべきか、いやそれと

もバスタオル続行……!?」

「……風邪引いちゃうんデスけどー」

「待ってろ、いま持ってくるからな」

風の如く登場し突風の如く洋服を取りに行く、つむじ風の変態。私のプロデューサ

ーです。
まあ悪い人ではないんですよ。
こんな石ころの私を必死に磨き上げて売り出そうとしてるんですからね。

「ほい、とりあえずTシャツとGパンパンだ」

「どうもデス」

「ところで、パンツは?」

「それは、仕方ないのでさっき履いていたのを」

「いいやそれはまずい見たところびしょぬれになったからシャワーを浴びたんだろ

うつまりそれは
パンツもぐしょぐしょということでそのパンツは今も濡れているのであれば気持ち

悪いということであり」

「本音は?」

「パンツが欲しい!」

「言ったところであげませんけどね」

「さすが彩音だお堅い美少女だぜ!」

「はいはい、それで? 今日は何かお仕事あるんデスか?」

「我輩はプロデューサーである。仕事はまだない」

「そうデスか……ざんね」

グーギュるぎゅるぎゅうううううううううううううううう!!!

「……腹に何飼ってるんデスか?」

「……妖精?」

「……何でも食物にしそうな恐ろしい妖精deathね。というか、何も食べてないんデ

ス?」

「いやまあ、いろいろ営業してたりするとなかなかな。臭いのあるもの食べて印象

悪くなるのもあれだし」

こんな風に仕事には大真面目という、変態さんです。

「……それじゃ今日はオフなんだし、私がごちそうしマスよ」

「だが、事務所の冷蔵庫(フリーザー様)には何も入ってないぞ?」

「男手があるなら買い物に行けるじゃないデスか」

「つまりそれは告白と受け取ってもいいわけか?」

「さあ出かけマスよー」

「おいおい! 今シャワー浴びたばっかなんだから、湯冷めするとまずいだろ。そ

れに外は雨だし」

「私が風邪引くのもあれデスけど、プロデューサーが栄養失調で倒れるのだって同

じくらいダメでしょう」

「うっ……」

「わかったなら、ほら早く準備してください?」

「……こうなったら、彩音とデートということで思う存分楽しむとするか! オラ

ワクワクしてきたぞ!」

「はいはい」

適当にあしらいつつも、私も少しだけニヤニヤ。
いやまあ、私だって女の子なので。頼れる男性がそばにいたらそれは、ね?


「スーパーか。久々にきたなぁ」

「その感じだと、コンビニ弁当出前コンビニ弁当出前牛丼牛丼みたいな感じデスね



「だ、大正解だ。もしかして彩音ってエスパーか?」

「男性の社会人はそんなもんかな、という偏見からくる簡単な予想デスよ」

「これがまた上手いんだよ。牛丼が赤くなるまで七味ぶっかけて食べるとか、弁当

が赤くなるまで七味ぶっかけるとか、一味に七味ぶっかけるとか」

「アーアーキコエナーイ。そんな食生活認めません。せめて今日は美味しい栄養の

あるもの食べてもらいマス」

「おう、楽しみだな!」

「本当に栄養があるかどうかはわかりませんけどね」

「彩音の手料理なら全部栄養になるさ」

「ならゴキブリのから揚げ出しマスねー」

「【ご馳走様は許可出来ない】オレの嫁のマシがまずいpart3【繰り返す。ご馳走様

は許可出来ない】」

「嘘デス。適当に、簡単に作れる素朴な料理を作りマスよ」

「下手に手の込んでるのよりそっちのほうが好きだな。彩音はもっと好きだけどな



「はーい、それじゃ最初は野菜からー」

「野菜きらーい」

「あーんしてあげマスよ?」

「野菜超好き! 一番愛してる!」

こうしてお買い物中は終始ふざけていたプロデューサーですが、会計のときだけは

まじめに何も言わずお金を出してくれました。
あとで倍返しでな! なんて言う気遣いまでして、変態ですよね。
雨はまだ降っています。そこに、私がびしょ濡れになった原因だった子が登場する

んです。嫌味で言ってるんじゃないですよ?

「あっ、ふかふかのお姉ちゃん! さっきはありがとう!」

「どこがふかふかなのか【興味があります】」

「? 全部だよ! お姉ちゃんは全部スベスベふかふかでいい匂いがするの!」

「まっ、まぶしい……浄化されていくようだ……」

「穢れすぎデスよ。それよりどうしたんデスか? もしかして、傘がないとか?」

「うん、そうなの。お家までまだ距離があるから、濡れちゃうかなって……」

「それなら、これ。使っていいよ」

プロデューサーが女の子に傘を渡します。

「……いいの?」

「うん」

「わぁ、ありがとう! きっと返すからね!」

「いいや、返さなくてもいいよ。ただ」

「ただ?」

「君じゃない誰かが雨の日に、同じように困ってるかもしれない。その時は、その

傘を貸してあげてな」

「この傘を?」

「ああ! その傘は困っている人を雨から守るすっごい傘だからな!」

「そうなんだ! じゃあ、困ってる人がいたら私もこの傘を貸してあげるね!」

「おう! それじゃ気をつけて帰るんだぞー」

「ありがとうー! おじちゃん! お姉ちゃん!」

そう言って女の子は嬉しそうに、笑顔で走っていきました。

「いいんデスか? 傘なくなっちゃいましたけど」

「こっちの傘があるじゃないか」

「ああ、すいません。この傘一人用なんデスよ」

「がーんだな……出鼻を挫かれた」

「ですが一人だけ特別に入れる人がいるんデスね、これが」

「マジで?」

「マジデス」

「俺か」

「そうデス」

「……照れるな」

「変なとこで照れないでください、こっちも恥ずかしい」

「いやまあ、帰るか」

「……はい」

とか、言いつつ肩半分はずぶ濡れなんですよ?
ずるいですよね?


『いいーゆーだーなーはっはぁ!』

プロデューサーはシャワーを浴びてます。
その間に愛情込めて料理を進めておく私、ちょっと人妻っぽい?

「……バカなこと考えてないで、進めちゃいましょう」

『しっぷー! ねっぷー! サイネリーアー!』

「元気デスねぇ、あの人は」

それから数十分。

「いやーいいシャワーだった~」

「随分長かったデスね、あなた様?」

「ワンモアプリーズ」

「リピート機能はついておりません」

「くそ、何故オレの耳には録音機能がついていないのか……だがそれよりもまず!

 彩音の手料理だ!」

「手料理、と言っても焼いたり切ったりしただけデスよ」

「これは……とろとろかつ固まっている部分がある最高の状態、半熟の目玉焼き!

 その横にはカリッカリで少し焦げ目がある薄切りベーコン!」

「何の料理番組デスか?」

「その良い香りから温もりさえ感じる味噌汁に、×印が入った歴戦のおかず戦士、

焼き魚! その横に添えられた山盛り千切りキャベツ!」

「無理に言わなくてもいいデスよ」

「彩音、ありがとう。俺は今猛烈に感動している!」

「なら、冷めないうちに召し上がってください。ほっくほくのふわふわ白いごはん

と一緒に」

「ああ、では! 頂きます!」

手を合わせて、ご飯を左手に持ち、焼き魚に手を伸ばすプロデューサー。

「おお、魚汁が! 塩を絶妙に吸った魚汁のいい香りがー!」

「食べるときは静かにですよー」

「―――――――」

「わかりやすいですねぇ」

「―――ッ!」

親指を立てるプロデューサー。うまいってことかな?
焼き魚を堪能したプロデューサーは、目玉焼きをご飯の上に乗せて、黄身を割る。
白いご飯が黄身と合わさって、また美味しそうに食べる。
味噌汁も。
カリカリのベーコンも。
山盛り千切りキャベツも。
幸せそうな顔で食べるプロデューサー。

「プロデューサー?」

「?」

しゃべれないプロデューサーを見て、ちょっとだけイタズラ心。

「今度は私にも作ってくださいね、手料理。じゃなきゃアイドル、辞めちゃいマス



「!! っごほごほっ!」

「ああ、ごめんなさい! 冗談デス冗談!」

……むせるくらい、心配してくれたんですね。
こんなに嬉しくていいんでしょうか。
こんなに幸せでいいんでしょうか。

「プロデューサー?」

「……?」

「ごはん、また作ります。だから残り半年もよろしくお願いしマスね」

「……ああ!」

私は一つだけ言葉を飲み込みました。
"ずっと"
その言葉だけ、今はまだ、私の心の中に――――――。
2012.07.28 Sat l アイドルマスター l COM(0) l top ▲

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