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2012/12/25 (Tue) 私たちの物語 ~コイバナ~ 八

ライトが、まぶしい。聞こえてくる、みんなの声。熱の篭った会場。期待と、希望と、非日常を渇望する感情の流れ。
なんてね、こんなの私らしくない。せっかくの晴れ舞台なのに自分らしくないなんてもったいないね。
私は左側の袖の一番後ろにいた。息もそこそこに体全体で会場から伝わってくるみんなの感情を感じていたんだ。
私を離してくれない、離そうとしない、子供のような気持ちたち。弟たちや妹を思い出して、笑ってしまう。
それに、前にいた響さんが聞いていて私のほうに振り返る。響さんの顔はいつも通り整っていて素敵だったけど、少しだけ緊張しているみたい。
「こんな大舞台でよく笑っていられるなぁ、さっすがトップアイドル。頂点の貫禄ってやつ?」
「そ、そんなことないですよ! ちょっと弟たちと妹のことを思い出して、つい……」
「普通はこの目の前の舞台で手一杯になるぞ? まったく、あの頃のやよいはばっつぐんに可愛かったのに、今じゃ敵わないなんて悔しいぞっ」
そう言って握りこぶしを作って震わせている。でも震えているのは、そこだけじゃない。響さんの体は、全部揺れていた。ううん、前にいるあずささんや雪歩さん。
真さんも、震えている。確かに、こんな無茶も無茶なライブをこれからやろうっていうんだから。
心が震えないわけがないよね。

「…本気かね?」
「貴方の部下はこんな冗談は言いませんよ」
「…だろうね。だからこそ、私は戸惑っている」
「…でしょうね」
「はっきり言おう。君がやろうとしている行為は、私にアイドルや社員の皆、無論君たちプロデューサーが一緒になって作り上げてきたこの765プロを潰すと同義だ」
私と亜美はプロデューサーの右と左でじっと二人の会話を聞いていた。
これまで聞いたことのないような声で話す社長が怖かった。
「そうかもしれません」
「かも、ではなく確実と言っていいだろう。君たち三人が共にいること、それは喜ばしいことだ。だからこそ私は悲しい」
「どうしてこんな無茶をやろうとするのか、にですか?」
「その通りだ。この事案は社長の私だけでなく、765プロにおける全社員、アイドル、プロデューサーの明日を決める大掛かりなものだ。だがあまりにも、ハイリスクローリターンだ」
社長の声を冷たくしている原因、それはプロデューサーが企画したある事案だった。とてもシンプルだ。

現在765プロで活動中の全アイドルを集め、ドームにて合同ライブをする。

「……全てのアイドル集めてのライブはいい。これには私も賛成だ」
「なら」
「だから、君がこの条件を削ってくれるのなら喜んでこの事案を進めよう。この『ライブ風景を生で全国放送する』というのを」
「それは外せません」
「ならこの話は終わりだ」
「こちらが提供するものの価値が消費者の満足と釣り合えば、それは必ず成功する。…教えてくれたのは社長です」
「覚えていてくれて嬉しいよ。ならわかるはずだ、ライブを全国で放送するそのリスク。売れるはずのチケットが売れなくなる可能性」
プロデューサーは言っていた。言い方は変になるけど、お前たちのライブを見に来てる人たちは、日常にはない非日常を求めてきているんだ。
それをお金というもので買っている。理由はそれぞれだと思うが結局はそこに行き着くだろう、って。
お金は、すごく大切だ。だけど、みんなは大切なお金を払ってまで私たちのライブに来てくれている。それがお金を払わなくても見れてしまうのなら、誰だって払わないで見てしまうだろう。
「社長こそおわかりのはずです。うちのアイドルは全国放送程度では霞すらしないということ」
「信じてはいる。だが社長として許すわけにはいかん。私には、この会社で働いてくれている全ての者の人生の一端という、重く大切なものが乗っかっているのだ」
「絶対の確証がなければ許可はできない、ということですか?」
「……あまり無茶を言わんでくれ。昨今のテレビ離れからくる視聴率の低下、全国放送となれば何時間と経たずネットにライブ映像も載せられるだろう。これでは映像メディアを売るのも困難だ。あくまで成功したとして、確実な収益は何もない。あるのはアイドルたちの知名度が上がるくらいしか」
「他にもあります」
「ほう、聞かせてもらえるかね?」
プロデューサーの体が震えている。きっと、怖いんだ。それでも間をおいて、静かに口を動かした。
「…亜美とやよい、そして俺。この三人がもう一度、改めてスタートできるきっかけになるんです」
「…ほう」
「社長もご存知だとは思いますが、俺たち三人は今までずっとぎくしゃくしていました。アイドルの頂点を見続けたために、三人が三人、他の二人のことを見てやることができなかった。やよいと亜美はまだしも、プロデューサーたる俺がそうだった」
社長は難しい顔をして黙って聞いている。
「俺は、浮かれていたんです。どんどん成長してアイドルの頂点に向かう二人を見て、熱に当てられていた。俺が育てたアイドルが頂点に、昔からの自分の夢。その夢の熱が俺自身を焦がし始めていることに気づかず、こんなところまで来てしまいました」
辛そうに、苦しそうに、悔しそうに喋るプロデューサー。言葉が止まらないのは、きっと誰かに聞いてほしいから。
「その様が、これです。亜美を傷つけ、やよいにもこっぴどく叱られた。我が侭な子供なんです。それだけじゃない、『アイドル双海亜美』を失い、『アイドル高槻やよい』すら失おう寸前。会社にも多大な迷惑をかけています」
私は社長の口が少しだけ動いていたのを見逃さなかった。そんなこと気にするなって言っていた気がした。
「本人を前にして言うのは最低ですが、俺は今でも亜美が怖い」
ぴくっと亜美の体が反応する。亜美はまた傷ついた、でもこれなら亜美も納得できる。この傷なら治すこともできる。だから亜美はうつむかなかった。
「正直、やよいも少しだけ怖いです」
…と思ったけどやっぱり痛いものだ。理屈じゃないって、こういうことかな?
「それでも二人は俺をプロデューサーと呼んでくれる。こんな最低な俺でもまだプロデューサーと呼んでくれた。だからこそ、俺は、今度こそ俺と亜美とやよいの三人で頂点を目指したいんです」
「…そのきっかけは、もっと別なものではいけないのかね?」
「はい。自慢ではないですが、二人も俺ももう並大抵のアイドル活動はこなしてしまいました。ふんぎりをつけるには、これでなくてはいけないんです」
「その理由は?」
「ドームという閉鎖的な空間だけでは足りないんです。もっと多くの人に同時に見てほしい。一緒になって楽しんでほしい。亜美もやよいも、誰より俺がそれを望んでいる。そしてこれを成功させたとき、吹っ切れるんです。過去、足掻き苦しみ間違いを犯した俺たち三人から。我が侭すぎるのはわかっています、それでも」
―――お願いします、静かに言ってプロデューサーが頭を下げる。習って私と亜美も頭を社長に向けた。
音がなくなる。少しの間、広々とした社長室は世界から切り離されたかのように静かになる。
ふぅ、と短いため息が聞こえた。
「理由も、思いも十二分に伝わったよ。だがそれでも、社長として許可を出すことはできない」
「……っ」
はっきりとした拒絶が伝わってくる。私は初めて社長のことを社長として認識した。
「さあ、帰りたまえ」
「……失礼、しました」
プロデューサーから、諦めないという感情が伝わってくる。また三人で後日社長室に乗り込むんだな、と思っていたときだ。
「……仮に765プロに関わる者たちの四分の三以上の署名があれば、"社長"はともかく"高木順一朗"は折れるかも知れんな」
「えっ?」
「おや? まだいたのかね、さあ帰った帰った。ちなみに、今の私の独り言、聞いてはいないだろうね?」
「いや、その」
「聞いては、いないだろうね?」
「は、はいっ。何も」
「ならいい、それでは君も仕事に戻るように。他の二人も、だ。君たちには、君たちにしかできないことがあるだろうしね。この休日を有意義に使うといい」
「……ありがとう、ございます」
「いきなり礼を言われてもな」
「それじゃ、用事を思い出しのでこれで! 失礼しました! 二人とも行くぞっ」
「う、うん!」
「は、はい!」
それだけ言って私たち三人は社長室を飛び出した。視界の恥で社長が笑っていた気がする。私たちが大好きな、いつもの笑顔で。

それから私たちは署名活動を始めた。しかし、この企画に賛同してくれる人たちは少なかった。
「署名、お願いします!」
「いやでもなぁ、これってかなりの規模で、失敗したら相当やばいんでしょ? せっかく安定して働けてるのに、冒険するのはちょっと……だから、ごめんな」
ほとんどの人はこう言って署名をしてくれなかった。中には面白そうだ、と署名してくれる人もいるが四分の三以上の署名には程遠い。
「くそっ、こんなところでぐずぐずしてられないってのに。社長だってそう長くは待ってくれないだろうし、どうにかしないとっ」
プロデューサーはここのところ寝ていないようで、目の下はクマに遊ばせ放題だった。仕事の終わりに署名活動をしているらしく、ロクに寝ていないようだ。
「プロデューサー、少し寝たほうがいいですよ」
「そうだよ、兄ちゃん。このままじゃカロウシしちゃうよ」
「そんな悠長なこと言ってる場合じゃ―――!」
あまりの剣幕に私と亜美の体は反射的にびくんとなる。プロデューサーが怖いのだ。…プロデューサーはこれ以上の恐怖とずっと戦っていたのかな。だとしたらすごいなぁ。
「す、すまんっつい焦っちまって…二人の言うとおり、今日は一旦休もう。ここで倒れても意味がないしな」
そう言って私たちはプロデューサーの机まで戻った。プロデューサーはすぐに仮眠する、と言って寝てしまった。
亜美は署名活動の続きをしにいった。私も、と言ったらどっちかが兄ちゃんを見張ってないと、と強引にここに残らされた。
765プロ内でも亜美を怖がっている人はいる。その亜美が一人で署名活動なんてどれだけ辛いことか。胸が痛くなるけど、それは亜美が望んだことだ。
亜美がしたいと思っているのなら私には止められない。穏やかな心じゃないまま、私はずっとプロデューサーの寝顔を見続けた。
「……わっ」
「―――っ!」
いきなり後ろから聞こえた声に、声にならない悲鳴を上げてしまう。
「ご、ごめんっ。そんなに驚くとは思ってなくってさ」
息を荒くしながら落ち着いた私が後ろを振り返ると、真さんがいた。みんなにはぼーいっしゅアイドルと呼ばれてかっこいいーと言われているけど、私にはとってもかわいい人にしか見えない。
もちろんかっこいいというのもわかるけれど。
「にしてもやよいたちのプロデューサー、爆睡だね。こりゃ何しても起きないよ」
「うふふ、そうかもしれないですね」
「それもこれも署名活動のせいなの?」
「はい。私と亜美は今お仕事が少ないので署名活動だけですけど、プロデューサーはお仕事もありますから」
「そっか…ちなみに、署名活動のほうはどう? 順調?」
「う、うぅ。正直、全然です…」
「そう、だよね。生半可なことじゃないもんね、そりゃとんとん拍子に行くわけないか」
真さんはがっくりとうなだれる。私たちと同じか、それ以上にがっくりしてくれる真さん。とっても優しい。
「でも水臭いよね、やよいも亜美も」
「えっ?」
「プロデューサーはともかくとして、僕たちは同じアイドルで同じ会社にいて仲間なのに、一言もないなんてさ。みーんな不満そうだったよ?」
「そ、それってどういう」
…あれ? そう言えば私、大切なことを忘れてる気がする。響さんに教えてもらったはずの大切なこと。
あっ。
―――やよいが自分たちを呼んでくれれば自分たちは駆けつけることができる。
「…すっかり忘れてた」
「みたいだね、話は響から聞いているよ。おかげで響すっごい膨れてるよ? 響だけじゃない、春香も伊織も、千早だって」
「千早さんも?」
「『勝ち負けではないけれど、このまま高槻さんや亜美に勝ち越されたままでは面白くないわ』なんて言ってたよ。『スターレス』聞いてからずっとこんな調子だよ」
あれだけみんな亜美を怖がっていたのに?
「……確かにね、亜美のことはまだ怖い。みんなそうだと思う。でも前ほどじゃないんだよ。それはきっとやよいとプロデューサーが亜美を少しだけ照らしてくれたからだと思う」
「私とプロデューサーが、ですか?」
「うん。僕たちは得体の知れないものは怖いけど、それが知っているものなら怖くなんてないんだ。今まで亜美の周りを覆っていた得体の知れない不気味な気配は薄れた。だから僕たちも、亜美の側にいることができそうなんだよ」
みんなが亜美の側に、昔はそうだったように、亜美の周りが笑顔で溢れる。
「だから、頼ってよ。僕のことも、他のアイドルのみんなも、頼ってよ。やよい」
優しく微笑みかけて手を差し伸べてくれる真さん。私はその手を取って、走り出した。
「ちょちょちょちょっと!? やよい!? いきなり走り出してどこに行くのさー!」
「決まってます! 私以上にこの手を、助けを求めている子のところにです!」
「そ、それって!? ぼぼぼくまだ心の準備ができてないよー!」
「やよい列車はただいま超特急です! 途中下車はできません!」
「そ、そんなー!」
大急ぎで亜美のところへと走る私。後ろの真さんはあわわわわだとかどうしようどうしようとずっと呟いている。でも私は知ってるんだ。最初さえ乗り越えちゃえば、あとは何とかなるって。
亜美がいた。一人で署名活動をしているけれど、誰も近づこうとはしていない。ひそひそ話しながら亜美を見ている人もいる。大丈夫だよ亜美。暖かくなれる最高のお薬、持ってきたからね!
「あみー!」
「あ、やよいっちに、まこちん?」
明らかに顔が引きつってる。ちなみに真さんの顔をも引きつってる。
「あ、ああ、えーっと! その、なんだろうね、あははっ……」
「……」
亜美にジト目でにらまれるけど知らんぷり。強引なのは亜美だって同じだったんだからおあいこだ。真さんはずっとあーとかえーとかしか言わず、亜美も喋らない。
お互い何を話したらいいかわかんないんだろう。でも大丈夫、私たちに言葉は要らない。
「はいっ、二人とも! 握手ですっ!」
「えっ?」
「真さんの右手と、亜美の右手で、はいっ握手」
私は二人の手を取って強引に握手させる。言葉はなくともこうやって触れ合うことで、伝えたいことを伝えたくなるんだ。人間はそれくらい温かいんだから。
「…あっは、はははー、ごめんねーまこちん。やよいっち強引でさ。ああ、もう離してもいいよ! って私から離すべきだよね、ごめんごめ」
「…そんなこと、言うなよ」
「へっ?」
「そんなこと言うなよ!」
「ちょ、ちょちょまこちん!? ぐる、ぐるじいよぉ!?」
真さんが亜美を抱きしめる。強く強く抱きしめてるせいか亜美が苦しそうだそっちのほうがいいよね。抱きしめられてるってより感じられるもん。
「僕たち仲間だろ! そりゃ僕だって亜美が怖くて助けることができなかった弱虫だけどさ! 亜美だって大概だよ! ずっと一人で誰にも相談しないで突っ走って! 少しくらい僕たちのこと頼ってくれてもよかったじゃないか!」
「……」
「もう離さないから! ぜーったい離さないからね! そこでひそひそ見てる人たちもいつまでもくだらないことしてないでよ! 亜美が傷ついてるのくらいわかるでしょ! それがわかるんだったら署名の一つや二つばーんと書いてよ!」
おお、怒りの矛先が亜美からぎゃらりーになった。真さんも大暴走だ。
「ちょっと亜美聞いてるの! 今僕真剣に怒ってるんだから返事くら、い?」
亜美の口の端から小さな泡たちが顔を出している。顔も真っ青でまさに、がんめんそうはく? という感じだ。
「うわあ!? ご、ごめん! 力いれすぎてた~! 亜美、こっちに戻ってきてー!」
「…はっ! ちょ、ちょっと綺麗な川を見てきたよ。まこちん、相変わらず力強いね」
「…うう、ううう」
「まこ、ちん?」
「あみ、あみぃ。ごめんよ、今まで何もしてあげられなくて、本当にごめんよ…」
真さんは亜美を抱きしめたままひっそりと泣き始めた。それでも腕の中にいる亜美をもう二度と離さない。亜美は、複雑そうな顔をしていたけど、最後は笑っていた。
私も笑っていて、真さんも笑っていた。
それから、すぐに私たち三人は他のアイドルのみんなに署名活動を手伝ってほしいと連絡をした。急な電話にも関わらず、みんな待ってましたと言わんばかりに承諾してくれた。
みんなの協力の影響はすぐに出始める。きっといつでも声をかけられてもいいように準備をしていたに違いない。
この765プロに入ってくる人たちの多くが特定のアイドルに憧れて入ってきた人だったのが幸いし、署名はみるみるうちに集まっていく。
春香さんが集めてきた署名だけ何故か赤いサインだったのが気になるけれど、半分の署名を集め、残りの四分の一もみんなを必死に説得することでなんとか集まった。
一度だけ、署名活動中にプロデューサーが倒れてその姿を見た人たちが、それだけの覚悟があるのならと署名してくれたのもあった。が、今後は二度としないでくださいと亜美と二人で懇願した。

「…これは、何かね?」
たまりにたまった署名の束を持って私たち三人は社長室に乗り込み、それを叩きつけた。
「署名があればあるいは、と思いまして」
「ふむ、なかなかいい判断だが並みの数では焼け石に水だぞ?」
「765プロ全社員の四分の三以上はあります」
「それは私の目で全て確認させてもらおう。それよりもそのクマ、どうにかしたまえ。それでは営業もままならんだろう」
「す、すいませんっ」
「……こらこら、君たち」
三人ともびくんとなる。まさか署名が足りなかったのだろうか?
「自分たちの署名がないではないか、君たちがやり始めたことなのだから君たちの署名もあってしかるべきだろう」
「す、すっかり忘れてました……」
「まったく。それと、もう一枚署名の紙をくれたまえ。私の知り合いも署名したいと言っているのでね」
「は、はあ。これです」
「うむ」
手渡された紙を机においてさらさらとサインする社長。
―高木順一朗― 
きっちりと署名欄のところにそう書いた。
「よし、と。それでは確認するから君たちは休みなさい」
「はい、失礼します」
「ああ」
ああの後に、本当にお疲れ様と聞こえた。

そして署名は見事形になった。プロデューサーの考えた企画は社長からの許可をもらったのだ。
プロデューサーの睡眠は更になくなったりしたが、前に倒れたことを私たちに注意されているため無理はしなくなっていた。
私たちもライブに向けて練習をする。二人で練習するなんて、本当に久々だったから、全然テンポが合わなくて喧嘩ばっかりだった。
「ちょっとやよいっち! そこ早いってば!」
「亜美が遅いんだよ!」
「なにおー!」
こんな喧嘩をしながらだけど、いっつも最後は笑ってよしやるか! って顔をして練習に戻るんだ。
亜美はまだ暗闇の中にいる。ながらも必死に這い出そうとしている。もがき続けている。だから私はずっと隣にいる。大好きな亜美の隣からもう離れない。
絶望なんかかかってくればいい。もう、怖くなんてないから。

瞬く間にライブ前日になって、私と亜美は最高の状態で明日に臨むために休暇を言い渡された。
そのときにした少しだけの会話は、いつまでも忘れることができないだろう。
それはあの公園でのできごと。私たち三人が出会って、再開した公園でのこと。
「ねえやよいっち」
「なに?」
「…やっぱやめた」
「そっか」
「明日」
「うん」
「明日が終わって、亜美の明日がまた始まったら、聞いてね」
「うん、聞くよ。ずっと隣で」
「うん」
私はきっと、亜美が何を言おうとしたのかわかってる。私は亜美のお姉ちゃんだから、亜美は私の親友だから。だから聞くよ。
絶対に聞くから。私たちがどんなけつまつになっても、ずっと隣にいるから。

―――とっても、長くて短かった。亜美やプロデューサーと出会ってから何ヶ月経ったのかな。いろいろあった。
一度はおかしなことになってしまった私たち三人だったけど。このライブが終わったら。
また笑える。そう信じて。…違う。そうなるために。
行こう。
私は、
「私らしく……ね」
ステージが、始まる。

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Author:流ぬこ
自個偽無、候。
書いたり書いたりしている流ぬこです。
ピクシブなんかでも同じく流ぬこで書いています。
はじめの一歩を見るとオズマ戦でも小橋戦でもどの戦いでも泣けます。はい。

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